第78話 新たな戦略へ

 俺は自室に入って、Whiteの今後の課題である女性ファン問題について考えていた。


 女性ファンが増えれば活動の幅が広がる。

例えば、アパレル系やコスメ等の案件も受けれるようになるのだ。

これは、かなり大きな収益にもつながるので、Whiteにとっても悪い話ではない。


「こういう時はアイツに聞くのがいいか。まあ、今回は仕方ないだろ」


 俺の人脈の中でもできれば関わりたくない人間に連絡を取ることにした。

元NO1キャバクラ嬢の女の子だ。

陰の者出身としては、華々しい世界の前線に居た彼女とは少し合わないところがある。

俺は職業柄、誰とでも合わせることはできるのだが、彼女に対しては苦手意識があった。


『少し相談に乗って欲しい。近いうち空いてるか?』


 俺はメッセージアプリの友達一覧から『芹沢葵』という名前を選択してメッセージを送信した。


 葵はキャバクラ嬢という職業でありながら、SNSでは多くの女性ファンを獲得しており、フォロワーの7割近くが女性だと言われている。


『四宮さんからお誘いとは珍しいですね。私に会いたくなっちゃいました?』


 1分もしないうちに返信があった。

キャバ嬢というのはレスが早いもんだと思う。


『相談があるんだよ。近々会えないか?』


 こういうのは直接会って話した方が早いだろう。


『いいですよ。明日の夕方なら空いてますよ。というか、四宮さんのためならいくらでも時間を作りますって』

『ありがとう。じゃあ、明日の16時に新宿でどうだ?』


 確か、葵の職場が新宿で、住んでる場所も新宿だったと思った。


『新宿なのは助かります。やっぱ、できる男ですね』

『それはありがとう。じゃあ、明日はよろしく頼むよ』


 そう、俺はなぜか葵に気に入られてしまっているのだ。

だからこそ、会いづらい側面もある。


 俺はスケジュール帳の明日の日付に16時新宿と書き込んでおいた。

明日は午前中の予定は特に入っていない。


 来月のWhiteのスケジュール調整はしないといけないので、その時間になるだろう。


「もう、今日は寝るか」


 気づけば、日付は回っていた。

俺は、風呂に入って寝る準備を整えると、ベッドに入った。



 ♢


 

 翌日、俺はいつも通りの時間に目が覚めた。

そこから、朝食を済ませて歯を磨く。


「お兄ちゃん、今日仕事は?」

「午前中は在宅で、夕方から新宿で打ち合わせ」

「そっか、気をつけてね」

「瑠奈も気をつけて」


 出勤する妹を見送ると、自分の部屋でノートパソコンを開いた。

未開封のメールをチェックしながら、受ける仕事を厳選していく。


 最近になって、Whiteへの依頼が一気に増えている。

そのため、この作業だけで結構な時間が取られてしまうのだった。

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