第68話 新たな道

 俺たちはライブハウスを後にすると、近くのファミレスに入った。


「好きなもの頼んでくれ」

「いいんですか?」

「ああ、みんな頑張っているからこのくらいはな」


 俺の対面に美穂と友梨が座る。

そして、隣には若干ご機嫌斜めの莉奈が居る。


 ご飯でも食べて機嫌を直してくれたらいいのだが。


「じゃあ、私は甘いもの食べちゃお」

「私も、パンケーキ食べたい。莉奈は?」


 友梨が莉奈に話しを振った。


「私もパンケーキ食べる!」

「うん、わかった。四宮さんは?」

「俺はドリンクバーだけでいいや」


 今はそこまでお腹が空いているわけではない。


「本当にいいんですか?」

「ああ、皆んなみたいに若くはないから油断すると太るからな」


 冗談抜きで最近は、お腹周りが気になってきたのだ。

このまま進行すると瑠奈からは小言を言われそうだ。


「四宮さん、羨ましいくらいスタイルいいですけどね」


 友梨はフォローを入れてくれる。


「スーツで誤魔化してるだけだから」

「そんなことないと思いますけど、四宮さんはドリンクバーだけにしますね」


 そう言って、友梨はタブレットから注文を済ませてくれる。


「ありがとうな。適当に飲み物でも持ってくるか」


 皆んなドリンクバーは注文していたので、飲み物を取りに行く。

俺はアイスコーヒーをグラスに注いだ。


「じゃあ、早速始めよっか」


 テーブルに戻ると俺は本題へと切り出した。


「まずは新曲についてだね。これが来月の頭に出す予定の新曲ね」


 カバンの中から新曲の資料を取り出すと3人に渡した。

その時、注文していたパンケーキが到着した。


「食べながらでいいから聞いてくれ。レッスンは来週から始まるからよろしく頼む。頑張って覚えてくれ」

「「「はい!」」」

「じゃあ、とりあえずパンケーキを召し上がって下さい」


 俺はアイスコーヒーをチビチビと飲みながら、パンケーキを頬張る3人を見ていた。


 まぁ、普通に可愛いんだよな。

これはモテない方がおかしいくらいなのだが、皆んな彼氏は居ないらしい。


 数十分後、3人ともパンケーキを食べ終えていた。

皆んな幸せそうな表情を浮かべている。


「ごちそうさまです」

「では、次の話に移ります」


 俺はもう一つの議題を持ち出した。


「Whiteのワンマンライブが決定しました!」

「「「えぇ!?」」」


 3人の声が重なった。


「マジですか……?」

「嘘ついても仕方ないからな」


 ワンマンライブが出来るのはそのアイドルグループの知名度が認められたということになる。


 なので、アイドルたちにとってはいい知らせなのだ。


「日程はまだ調整中だけど、3ヶ月居ないにはやりたいと思ってる。だから、気合い入れてくれ」


 これは久しぶりプロデューサーとしての腕が試される案件である。


「「「はい!!」」」


 Whiteに新たな道が開かれようとしていた。

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