第39話 謎の人脈と面白い企画

 時刻は朝の7時半。

俺は出勤の準備を済ませていた。


「行ってきます」

「土曜なのに大変だねー。行ってらしゃい」


 瑠奈に見送られて俺は自宅を出る。

妹は土日休みの仕事をしているので、今日は休みらしい。


 まだパジャマ姿のままだった。

ちょっと着崩れているパジャマ姿ってなんかエロいなって思うのは俺だけだろうか。


「ああ、ありがと。じゃあ、行ってくるー」

「はーい」


 玄関を開けるといつものように職場へ向かう電車に乗る。

職場の最寄り駅から徒歩で事務所のあるビルへと向う。


「おはようございます」


 土曜なので若干人は少ないが、事務所には数人の従業員が既にいた。


 俺は自分のデスクで資料をまとめる。

そして、まとまった資料を望月さんに確認してもらう。


「社長、今大丈夫ですか?」

「ああ、かまわん。ちょうど仕事が一段落したところだ」

「実は、社長にご相談したいことがありまして」


 俺は資料を社長の前に置いた。


「これにWhiteの出演依頼がありました」


 例の向井さんが持ってきた音楽番組出演の資料を見せた。


「笑うしかないっていうのはこういうことをいうのかもな」


 望月さんは資料に目を通し終わると言った。


「君が訳の分からない人脈があることは知っていたが、まさかここまでとはな」

「事務所として、受けていいでしょうか?」

「無論だ。むしろ、受けない理由があるまい」


 望月さんは力強く頷いた。


「分かりました。受ける方向で話を進めます」

「ああ、頼むぞ。それにしても、順調そうだな」

「今のところはって感じですね」


 この業界、どこで躓くか分からないのが恐ろしいところだ。

調子に乗って油断すると、その油断が命取りになる。

まあ、これはどの業界でも似たようなものなのかもしれないが。


「そういえば、君にも参加して欲しい企画があるんだが。これだ」


 望月さんは冊子になった資料を引き出しの中から取り出すと、俺に渡してきた。


「大型アイドルオーディション開催ですか」

「ああ、うちの主催で開催するアイドルオーディションだ」


 俺はパラパラと資料をめくっていく。


「結構な企業が協賛しているんですね」


 協賛企業の欄には有名な企業が並んでいた。


「頑張ったからな。まあ、お前ならその企業全部にコネがありそうだがな」

「はい、そうですね」


 俺が見た感じ全部の企業に知り合いがいた。


「どうやら、お前には冗談が通じないってことがわかった」

「はい?」


 望月さんは驚きを通り越して呆れていた。


「どうしたら個人がそんな大手と繋がれるのかはこの際どうでもいいとして、この企画興味あるか?」


 いや、そこはどうでもいいんだ。


「ありますね。面白そうですし、今の業務に支障が出ない範囲でなら」

「じゃあ、決まりだな。まだ時間はあるからよろしく頼む」

「これ、貰っても?」


 俺は冊子を持って言った。


「もちろんだ」

「ありがとうございます。では、私はこれで失礼します」


 そう言うと俺は社長室を後にした。

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