ID交換!
何とか自然に千春と仲良くなる方法はないものだろうか。
俺は、独りこっそり考えていた。
千春は千春で、ものすごく動揺していた。挙動不審だ!
千春はきっと、金持ち特有のお友達がいない境遇に置かれているのだろう。
メイドはいても友達はいないなんて、寂しい人生だ。ふと真壁の顔が浮かぶ。
よかった。俺には大親友と呼べる人がいて。
俺は千春の境遇を勝手に想像して、多少の挙動不審は気にしなかった。
千春が挙動不審のまま言った。
「……ま、まさか! あ、あんなことや、こ、こんなことまで……」
なんてエロい言いまわしだ! キスとかハグとか、そっち方面の想像なのか?
お友達相手にしてはたしかにハードルが高い。
俺としてはーっ、いずれはーっ、そういうのもありーって、思うけどーっ!
「……毎朝毎晩のキスやハグでは飽き足らず……」
え? 千春、何を言っているんだ?
キスやハグの先まで想像しているとは、手強い。
「……私を水浴びに誘い、森の泉で全てを脱がしたあとで……」
えっ、えーっ! そんな大胆なこと、俺は望んでいないって!
それに、妙に想像が具体的だ。昔話っぽさもある。
「……衣服を奪い、高いところの木の枝にかけて……」
こいつ、何言ってんだ? 筋が全く読めない。
しばらくは黙って聞くことにするか。
「……それを取ろうと飛び跳ねると、私の胸が……」
胸が? 確実にDはありそうな胸が?
飛び跳ねると、どうなるの?
「……私のちゃんとGある胸が弾むのを見てエロい妄想をするのですね……」
Gだって! 3階級も大きいじゃないか! すご過ぎる! これは魅力的だ。
百花繚乱の片高生、その相場は知らないが、世間的にはかなりの大きさだ!
千春のエレガントと挙動不審のギャップにカノジョまであると思った俺。
類稀なる容姿に恵まれていて、その恵みをちゃんとお胸に蓄えている。
千春は、どこからどう見てもG級。いや、S級の美少女だ!
こんな子がカノジョになってくれるなんて、想像しただけでも興奮する!
なりたい。絶対にカレシになりたい!
そう思う気持ちの他に、俺の中に何かがある。何かが引っかかる。
俺の持つ危機管理能力が『やめておけ』と言っている。
千春は「いくら何でも性急過ぎます」と言いながら俺に近付いてくる。
言葉と行動が一致していない。挙動不審だ。
そして俺の身体に手を触れると、顔を真っ赤にして服を脱ぎはじめた。
白くてやわらかそうな二の腕が露わとなる。
そのときになって、俺はようやく気付いたんだ。
俺の危機管理能力が知らせてくれたことに。
宮小路院千春。こいつは、とんでもない妄想露出狂女郎だ!
「……け、けれど、おと、お友達からなら、そそ、それでよろしいが……」
断るーっ! 絶対にお断りだーっ! って今直ぐ言いたい。
妄想癖のある露出狂の女なんかと、友達になんかなりたくなーい!
けどよく考えたら俺が言い出したんだった。それを断るなんてできない。
「……で、では。ま、まずはIDの交換をしましょう……」
ま、まずい。断んなきゃ、断んなきゃ、断んなきゃーっ!
変な妄想露出狂女郎とお友達になるわけにはいかない。どうしよーっ!
ただ呆然としていると、全裸になってしまいそうだ。
そうなったら目のやり場に困るし、いろいろと責任を取らされそうだ!
止めなきゃ! まずは服を脱ぐのを止めなきゃーっ!
「わ、分かったよ。IDの交換だけはしておこう」
こうして俺は、カノジョ候補でもない千春とID交換をすることとなった。
俺は下着姿の千春に服を着るように促した。
こんなところを他の人に見られたら、変な噂が立つ! それは避けたい。
俺と千春は金輪際、何もない。たとえID交換したとても、だ。
それでも、変な噂は立たないほうがいい。
千春は「ID交換が先」と言って譲らない。
だからしかたなく、下着姿の千春とID交換をすることになった。
その直後。
「あら、意外です!」と、1度聞いたことのある人の声がした。
「千秋様も合格なさったのですね」
声の主は、千春と千秋を勘違いしているようだ。
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IDゲット! 純くん、さすがです。そして、声の主は?
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