第2話 思考誘導



 たった今、私は婚約破棄されて、そのついでに王家も追放されてきた。


 きっと、高貴で聡明で人格的にとても素晴らしい王族の方達は、私のような異物が紛れ込んでいる事が許せなかったのだろう。


 没落寸前の貴族の家の人間であった私は、貧乏生活を送っていたため、ほぼ平民のような扱いだった。


 だからきっと高貴な方達は、貧しい血筋アレルギーでも引き起こしたのだろう。くだらない。


 一方的に惚れて、私を王宮に拉致した王子ドラインは、珍しいおもちゃで遊ぶだけ遊んで放置。


 コネも縁もなかった私は、王宮ですぐに孤立していった。


 貴族のご令嬢だけでなく、使用人からも下に見られる始末で、日々嫌がらせを受けていた。


 もともと、豪華な生活には縁のない日々を送っていたから、追い出されるならそれに越したことはない。


 いっそ平民になって、贅沢の気配がない場所で自由に生活した方が、落ち着けるものだ。


 けれど、あまり彼らを怒らせすぎると、犯罪者として牢屋に入れられてしまう可能性があったため、匙加減が難しかった。


 そこで私は、王宮内でも私の味方でいてくれた騎士、ザックスやその他の者達と共謀して、印象操作に乗り出した。


 一思いに殺してやりたいほどの憎悪を抱かせるのではなく、みじめったらしく過ごしているのを見て愉悦にひたるように、高貴な方々の思考を誘導していったのだ。


 その時に親身に相談にのってくれたのが、ザックスだ。

 ザックスも一応貴族であるが、彼等とはまるで違う。


 人間のすばらしさは、権力や名誉などではなく、やはり内に秘める性格が決めるのだろう。


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