吸血公爵様の屋敷で生活することに
一体、どういう事なのでしょうか。どうしてこうなっているのでしょう。
私は吸血公爵様に抱き着かれているのです。てっきり私は血を吸われるものだと思っていました。やはり吸血公爵様は吸血鬼なのです。
吸血鬼と言えば人間の血を吸う化け物(モンスター)なのですから。
血を吸うのが当然だと思われました。ですが、吸血公爵様――ヴラド様はそのような事をしてこないのです。
ただ優しく、私を抱きしめるだけでした。
「吸血公爵様……さ、先ほどなんとおっしゃいました?」
確か「妻になれ」とかなんか言っていたような気がしますが。私も気が動転していますので聞き間違いかもしれません。
「聞こえなかったのか? カレンよ。貴様、俺の妻になれと言っているのだ」
やはり聞き間違えではなかったようです。本当に吸血公爵であるヴラド様は私に妻になれとおっしゃっていたようです。
「妻ですか? 召使いではなく?」
「ああ。言った通りだ」
「い、一体なぜですか?」
私は令嬢ではありますが、そんなものは表面上の事です。実質的にはただの召使いのようなものです。
「お前のような反応をしてくる娘はいなかった。大抵は俺を見ると恐れ慄き震えあがっていたか、命乞いをしてきたか。そのどちらかしかいなかった。だが、お前はそのどちらでもない。まさか吸血鬼(ヴァンパイア)である俺を倒そうとするとはな。実に面白い存在だ。実に気に入った。お前と一緒に過ごせれば退屈しなさそうだ」
そうヴラド様は笑みを浮かべ私に語り掛ける。
「退屈しなさそうだって……そんな簡単に」
私もスペンサー家にいた頃、猫をこっそり飼っていました。そんな感じでしょうか。確かに吸血鬼というのは大変長生きする怪物(モンスター)だと聞いた事があります。あるいは死ぬ事はないのでしょうか。永遠に生きるのかもしれません。
それだけ長い年月を生きなければならないのかもしれません。ですから寂しくもなるのでしょう。それは私がペットとして猫を飼っていた時のようなものだと思います。
という事は私はヴラド様にとってのペットみたいなものかもしれません。そう思うと彼の言動もある程度腑に落ちるものではありました。
「どうだ? カレン。俺の妻となり、この屋敷で生活しないか?」
「そ、それは……」
どういたしましょうか。どうせ私は行く宛もないのです。今更スペンサー家に戻るつもりなど毛頭ありません。あんなところ、もう生き地獄以外の何物でもありませんでした。そんなところに住むくらいならヴラド様のところの方がずっとマシでしょう。
「少し……妻となるというお話は考えさせてください。だって、私とヴラド様は今お会いしたばかりです」
流石に会っていきなり妻になるわけにもいきません。ヴラド様は大変お美しい方ではありますが、そもそもが吸血鬼なのです。とても簡単にヴラド様の事を受け入れられそうにもありません。
「ふむ……そうか。それもそうだな。だったら、しばらくうちの屋敷で暮らすがいい」
「は、はい。そうさせてもらいます」
こうしてスペンサー家から吸血公爵様と言われるヴラド様のお屋敷で私は生活する事になったのです。
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