本予告【―Cecilia―】

「ねぇ、セシリア。この湖の向こうに着いたら何したい?」


「え~とね~……分からない……」


「そっか、分からないよね。お母さんも実は分からないんだ。お城の魔法使いさんに捕まって、逃げて、湖を渡って……何をしたいか、まだ分からないんだ」


 ある魔法使いと小さな少女が、一隻の船に乗り、湖を渡っていた……。





「報告は以上となります」


「つまり捕まえた原始魔法の使い手には逃げられ、“無”の使い手が今も城のどこかで嗅ぎまわっていると?」


 青髪の男は膝を突き、玉座に座る老人にとある報告をしていた。


「……はい」


 玉座に座る老人は杖から靄を出現させ、青髪の男を縛り付ける。


「あ……! うぅ……!」


「分かっているな? お前にはチャンスを与えているのだ。まさか、この私を失望させるなんて事はあるまい」





「説明している暇はない。逃げて抗うのか、ここで己を捨てるのか……どちらかだ……!」


 セシリアを救う、謎の青年。二人はミスコット城を駆け巡る。


「……なにニヤニヤしてる」


「え? ふふ、何だか誘拐されてるお姫様みたいな気分だなって」


「……はぁ、呑気なもんだな。もっと緊張したり、怖がったりしないのか?」


「しないよ。だって、あなたがちゃんと私を守って逃がしてくれるでしょう?」





「これからショーが始まるのさ!」


「何のショーです?」


「我らが“ミスコット家”を描いたショーさ!」


 賑やかな首都ガーネストロに蔓延る違和感、そして――靄。





 世界には知られていない視点が、知られていない事実が存在する。


「私は、この世界に歓迎されて生まれた訳ではない存在」


「それじゃあ……」


 白髪で三つ編みの少女はセシリアに訴えかける。


「私だって、他の魔法使いを消滅させたい訳じゃない! 私だって、他の子供と一緒に遊んだり、魔法を使ったりしたい! でも、それは出来ない……」





 それぞれの想い、それぞれの物語が彼女の元へと集い、やがて隠された過去を暴いていく。


「セシリア……私は君に会いたかった。こうして完全な“適合者”となった君に会いたかった」




 

 彼女らは選ぶ。自らが歩むべき道を。


「私という存在を問い掛ける、それが私たちの存在意義です!」


 彼女らは抗う。定められた運命に。


「自分の居場所も、夢も、目標も全部自分で決める。それが、人生を楽しく生きる事そのものだから!」


 世界は彼女らによって変革し、世界は“靄”に包まれる。


「世界は、変わる。これは揺るがぬ事実だ。私が行わなくても、誰かが行う。これは定められた運命だ。これは、原始魔法を持つ我々の運命だ」


「私は自分の道を選んで進んでいくの!」


 人が存在しないこの魔法が溢れる世界で、物語は始まり、そして動き出す――。





 新作小説【―Cecilia―】9/17 (金) 21:00より公開


 そして――。


 Extra Storyとして公開済みの【―Me―】と“一分くらいでわかる【せしりあ】”を収録


 現実でも異世界でもない【夢】のような物語。


 その旅はここから始まる――。








 私は疲れる程に長い夢から目を覚ました。


 私はベッドから身体を起こし、鏡の前に立つ。


 腰まで伸びた長い黒髪に、ブラウンの瞳。陶器の様な肌に、人形の様な顔立ち。


 私の名前は――。

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