第17話 尋問と言う拷問
子供たちも落ち着き、シアも普段の状態に戻ったようで安心する。
私がシアを
「この服、アタル兄ちゃんの匂いがする!」
シアのくだらない話を聞いて、他の子たちも服の臭いを嗅ぎ始める。
クレアさん、アンタまで止めて下さーーーい!
ハロルド様が子供たちを送るように、カルアさんと私の護衛に指示する。
シアは採取したいと言ったが、さすがに今日は戻るようにクレアさんにも言われて諦めてくれた。
シャルとミュウも一緒に孤児院に行って待つように説得する。
アランさんが冒険者風の男達を一列に座らせて、尋問を始めるようだ。
シア達に聞いた話では、採取した薬草を渡すように言われ、これからは冒険者ギルドに薬草を納品するように言ってきたらしい。
それをタウロが断り、シアが領主様からの依頼だからできないと説明したが、そんなことは関係無いと言って薬草を出すように要求され、それをシアが断ると、切りつけられたらしい。
「なんで薬草を奪おうとした。それも冒険者ギルドに納品するように言うのは変じゃねえのか。盗賊なら自分達の儲けにならないような事をいうのは不自然だがなんでだ?」
アランさんが質問すると、シアを切りつけた男が文句を言う。
「そんなこと言ってねえよ。あの餓鬼が生意気だから剣で脅そうとしたら、自分からぶつかって、」
バキィィィ! ボゴゥ、バキィ、ボゴゥ、バキィ、ボゴゥ、バキィ!
ハロルド様がアッパーカットを決めて、倒れた男を連続で殴り始めた。これを見ると、騎士にした暴行はあれでも手加減していたのがわかる。
「閣下、お止め下さい!」
「なんじゃ、お前は儂を止めるのか!」
アランさんが止めに入ると、ハロルド様は血走った目でアランさんを睨みつける。
「それでは死んでしまいます。死ぬ手前で止めないと尋問になりません!」
え~と、アランさんの説得の仕方も変なんですけど……。
「おっ、確かにそうじゃな。アタル、すまんがポーションを譲ってくれ」
そりゃ、譲るのは構いませんが、治したら尋問と言う拷問を続けるんでしょ。
そんなことを考えてたが、断る事もできずにポーションを渡す。
ハロルド様はポーションを掛けて、表面的に治ったのを見て「起こすかのぅ」と言って殴り始める。
目を覚ました男が殴られている状況に混乱するのを見て、もう一度ポーションを掛けて治療する。
「ふざけたこと言うと、今度は手を切り落とすぞ!」
ハロルド様はドスの利いた声で、その男に話すと男は怯えながらも反論する。
「俺にこんなことしたら、冒険者ギルドは黙っていな、」
ズシャッ!
「ギャァーーー!」
ハロルド様は剣を抜くと、その男の腕を切り落としてしまった。男は腕を切られて転げまわっている。
それを見てすぐに吐き気がしてきてしまい。後ろを向いて吐きそうにしていると、クレアさんが背中を擦ってくれる。
なんとか吐かずに振り向くと、ハロルド様がポーションを切った腕に振り掛けて治療していた。アランさんがハロルド様に近づくと文句を言う。
「閣下、それでは尋問になりません。最初は指から切り落とさないとダメじゃないですか!?」
アンタもアンタだよ!
この世界の常識なのか分からないが、私には非常識としか見えない。
腕を切られた男は、切り落とされた腕を見ながら、怯えたような表情をする。
「領主の目の前で起こった犯罪について、冒険者ギルドが儂に何と言ってくるんじゃ?」
「りょ、領主…様」
男は目を丸くして驚いている。相手が領主だと気が付いていなかったみたいだ。
バキィィィ! ボゴゥ、バキィ!
「儂が質問したら答えぬかぁ!!」
殴るだけ殴ると、また治療しようとポーションを掛けようとしたが、水筒にはもうポーションは無いみたいで何も出てこなかった。
「アタル、すまんがもう1本頼めるかのぅ」
諦めてストレージからもう1本出してはハロルド様に渡す。
「しかし、これがあれば何度でも尋問できて、便利じゃのぅ」
尋問じゃなくて拷問だと思います!
予想通りの展開に眩暈がするのだった。
それ以降、男達は素直になってすべてを話し出した。少しでも言い淀むだけで、指を切り落とされては、嘘を考える余裕も無いだろう。
言い訳しようとした者もいたが、目にナイフを刺されては、言い訳すら言えなくなるのは当然だと思う。
さすがに目にナイフを刺され、目玉が出て来たのを見て吐いてしまった。
彼らの説明では、薬草の納品が減ったことにより、教会から冒険者ギルドに苦情が入ったらしい。
冒険者ギルドのギルドマスターとサブマスターが困って、彼らに依頼してきたらしい。
彼らは脅しなどを頼まれることが多く、冒険者によりトラブルになったお店などにも、冒険者ギルドの依頼で、領に訴えないように脅迫などをしていたということだ。
今回は見せしめの意味もあり、手荒い事をしても良いと言われていたけど、子供相手なので簡単だと思っていたのだが、予想外に断られてしまい感情的になってやり過ぎたらしい。
「アラン、他の犯罪行為についても騎士団で尋問しろ。必要ならポーションの使用も認める」
「了解しました」
「それより、片足の無い奴は移動が面倒臭いし、ここで首を刎ねる方が良いじゃろう」
男は真っ青な顔をして、首を激しく左右に振りながら、涙目になっている。
「他の者に運ばせれば良いでしょう。後々冒険者ギルドに文句を言われた時の証人にもなりますから、殺してはダメですよぉ」
男は嬉しそうに首を縦に振り、涙を流している。
「そ、そうか、そうじゃな。儂は戦争の時のクセで、すぐに首を刎ねたくなるからのぅ。反省しないとダメじゃわい。ワッハハハ!」
他の拘束された男達もホッとしているようだ。
「閣下の悪い所です。これから騎士団の方で尋問しますのでお任せ下さい。まあ、協力的じゃなければ、指から切り落とし、腕や足も切り落としても良いですし、お任せ下さい。
いやぁ、このポーションがあれば、両手両足を切り落としても死なせる心配がなくて安心ですよ。フッハハハ!」
男達は全員が絶望したような表情になっていた。
ハロルド様の指示で、ハロルド様の護衛の一人が走って行く。
このあと冒険者ギルドに騎士団で乗り込むらしい。
話を聞く限り、戦争でも始める勢いで指示しているので、私としては、できるだけ話を聞かないようにして、少し後ろの方からついて行く。
しかし、この世界に来てから、教会に続いて冒険者ギルドも腐っているような感じだ。地球で読んだ小説や漫画では、冒険者ギルドは中立、公正だと思っていたが、全く違う話で戸惑ってしまう。
この町だけの事なんだろうか?
それに確定はしていないが、商業ギルドも孤児たちを食い物にしている可能性もある。
東門に着くと、すでに連絡が入っているようで、数名の兵士が男達を兵舎に連れて行くために同行してくれた。
私はすぐに孤児院に向かおうとすると、ハロルド様にお願いをされる。
「アタルよ、もう少しポーションを譲ってくれ、冒険者ギルドで話を聞くときに使うかもしれんからのぅ」
話を聞くのに、ポーションは要らないでしょうがぁ!
心の中で反論するが、ストレージからポーション入りの水筒を5本ほど出して渡すのであった。
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