転生したら足利義教でした。『第六天魔王外典』俺は百まで生きる

ペルスネージュ

開幕 死んでたまるか!!嘉吉の変

「悪御所に天誅!!!」


 はっ、ふざけんな! お前が俺のことをどう見ていたかなんてのは最初からお見通しなんだよ、パグみたいな面しやがって。


――― 赤松満祐、播磨の守護。公方の狗。


 俺を生かそうが殺そうが、どの道お前は死ぬ。だからって俺を道連れにするんじゃない。


 俺がここで死んだら、そのまま俺が育てた奴らが中心になって、あの自分の都合しか考えていない次男坊と、実家の利益しか考えていない日野さん御一家のせいで、都も国も滅茶苦茶になっちまうじゃねえか!!


 何のために、伊勢新九郎や斎藤妙椿を手元に置いて育て、無駄に子沢山で奥さん何人も衰弱死させている糞坊主の手紙魔を若い頃に探し出して殺したと思ってるんだ。


 このまま、本能寺の変よろしく途中で死ぬなんてまっぴらなんだよ禿げ!!





 ちびで禿げの赤松君が、俺を暗殺しようと関東平定の打ち上げの飲み会を主催しようとしているのは、歴史的にみても間違いのないところだった。


『狡兎死して走狗烹らる』


 赤松満祐は、そう確信していたんだろう。何しろ、播磨の守護で幕府軍の実働部隊としてあちらこちらで我が物顔で振舞っていたわけで、俺の直轄軍が整備されてきた暁には、不要になるのは当然だったから。


 それに、みっちゃんは俺に内緒で色々都で不正なことをしていたんだよ。知らないと思ってた? 知っちょっても知らんふりすることが大将の仕事だってロシアに勝利した偉い将軍のセリフを俺は覚えている。そう、みっちゃんが、所司代の部下を使って幕府に収めるべき税金もピンハネしていたって証拠も押さえている。


 そもそも、赤松満祐に限らず、赤松宗家の奴らは所謂武闘派、鉄砲玉には向いているがコントロールできないことが少なくない。だから、殺処分される事になったわけだ。おじさん、聞き訳が無い子は容赦できないからね。





 史実同様、馬の嘶きが聞こえ、討ち手と思わしき完全武装の赤松の郎党が宴の席に乱入してくる。


「そこの、悪御所の首を挙げよ!!!」


 チンチクリンの禿げが俺を指さし大声で指示をする。


 こんな事もあろうかと、相伴した細川持之、畠山持永、山名持豊、一色教親、細川持常、大内持世、京極高数、山名熙貴、細川持春、赤松貞村には、俺と同様、下に鎖帷子を着こませている。その上、太刀を手放さず、長い短刀を腹のうちに仕舞い込んでおくように指示をしておいた。


 皆、この場で死なず多少の時間が稼げれば、屋敷を囲んだ俺の供回りが駆けつける手はずだ。やたら、屋敷に火をかけて本国に帰りたがる赤松のマダラ禿げどもだが、今回はそうはいかん。こっちが首を落してやる。ついでに、播磨も将軍直轄領にしてやるから覚悟しろ!!


「供周りが駆け付けるまでの辛抱だ!! 槍は受け流し、太刀は鍔元で受止めよ。我ら、着こみを着ておる。簡単にはやられはせん。赤松の一党を滅ぼし、皆で領国を山分けせん!!」

「「「「「はっ!!」」」」


 壁を背後にし、俺を中心に半円形に防御の姿勢を固める。下に着こみ、そして、罠を仕掛けたのはこっちであることを声高に伝えると、討ち手の動揺が伝わってくる。はっ、お前らもそこの禿げと一緒に獄門だ。三条の河原に一族郎党晒してやるから楽しみにしておけ。


 赤松の次は六角討伐だ。伊賀甲賀までこちらの領地にして、彼らは幕臣に取上げることにする。大名に仕えさせるなんて危うくて仕方がない。都に近い場所に屋敷を与え、守護同様、上忍の家系当主は側に仕えさせねば首の後ろが寒くてかなわん。


 応仁の乱で活躍する奴も、面倒を起す奴もこのあと、色々面倒だから纏めて討伐するのも悪くない。日野家は何らかの罪を着せて流刑にする方が良いな。性悪女どもは、尼寺にぶち込んでくれるわ!!


その後、謎の死が彼らを待ち構えているのは言うまでもない。



 やがて、切り結ぶ者の背後から「上様!!」「どけ! 斬り殺せ!!」「赤松左京太夫謀反也!!出会いませ!!」と供回りの者共の声が聞こえてくる。既に、ササラのような刃の愛刀をかざし、俺は目の前の陪臣どもに怒鳴りつける。


「さあ、満祐を突き出し慈悲を乞うか、一族郎党根切にされるか、好きな方を選ばせてやる。さっさと腹を決めろ!!」


 背後で「あと一息じゃ!!」「ええい、惑わされるな!!」等と叫ぶ禿げの声が取り囲む赤松の陪臣どもの叫び声にかき消されていく。


「赤松満祐を殺すな!! 後程、直々に吟味したうえ、生きたまま鋸引きの刑にしてくれる!!」


 俺の声を聴き、よく見知った油禿げの矮躯の男の顔、それが人垣の向こうで引き攣るのが見えた。

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