ここはあの世ですか?
「もう、目覚めることはない」
「これが最後の夜だ」
そう思っていた。
俺は覚悟も決めていた。
最期の夜だから、俺は後悔のないように終わりを迎えたはずだった。
大好きなゲームをして、笑ったり、感動して泣いたりして。
そこまでは覚えているのだが、俺はそこから記憶がない。
朝、目が覚めた。
何気なく起きて、俺はいつも通り自分の机に向かった。
昨日、毒を机の上に置いたということは憶えている。俺はその瓶の中身をチラッと見て確認した。
「え?」
瓶の中身は空になっていた。
飲んだ覚えはないし、仮に飲んでいるとしたら俺は死んでいなければおかしい。
しかし、毒の瓶の中身はなくなっていたから飲んだほかにはない。
ゴミ箱やベランダに捨てた形跡もなかった。
だが、俺は次の日の朝に何事もなく目が覚めた。
俺は、死に損なったんだ。
死に損なったという感覚だけがあった。
くるはずのない今日を俺は生きていた。
俺が知るはずのなかった明日だ。
本当は死んでいるんじゃないかという感覚にがあり、本当はベッドに自分が寝ているのではないかとベッドを何度も振り返って見たりした。
不確実な方法だっただろうか。
俺はこれで楽になれると思っていた。
なにもかもを終わらせられると思っていた。
物語の中の登場人物は簡単に死んでいくのに、自分が死ぬというのはなかなかすんなりいかない。
毎日、毎分、毎秒、どこかで人は死んでいるのに。
俺もついにその1人になれると思ったのに、俺はその1人になれなかった。
俺は夜、母といつも通り母と話した。
本当なら、俺は今日母と話すことはなかったはずだ。
母は俺の死体を発見し、救急車や警察を呼んで、泣いて食事もできない状態になっていたはずだ。
だが、俺は生きていて普通に母と会話をした。
何事もなかったかのようで、何も知らない母は笑っていた。
友達とも話をした。
本当なら今日、俺は友達とも話すことは出来なかったはずだ。
突然連絡が取れなくなり、失踪していただけだ。
自分のいないはずの未来を生きているというのは変な感じだった。
庭に出ると、俺が育てている庭の植物の成長を見れた。
俺の気持ちがどうとか植物にとっては関係ないし、心配してくれるわけでもないし、話を聞いてもらえるわけでもないが、懸命に空に向かって伸びていっているその姿は眩しく見えたし「お前もしっかりしろ」と言われているような気がした。
来るはずのない今日を生きて、何もかもが奇妙に感じる。
長い夢を見ているような気がする。
***
「もう、目覚めることはない」
「これが最後の夜だ」
そう思っていた。
俺は覚悟も決めていた。
最期の夜だから、俺は後悔のないように終わりを迎えたはずだった。
大好きなゲームをして、笑ったり、感動して泣いたりして。
そこまでは覚えているのだが、俺はそこから記憶がない。
朝、目が覚めた。
何気なく起きて、俺はいつも通り自分の机に向かった。
昨日、毒を机の上に置いたということは憶えている。俺はその瓶の中身をチラッと見て確認した。
「え?」
瓶の中身は空になっていた。
飲んだ覚えはないし、仮に飲んでいるとしたら俺は死んでいなければおかしい。
しかし、毒の瓶の中身はなくなっていたから飲んだほかにはない。
ゴミ箱やベランダに捨てた形跡もなかった。
だが、俺は次の日の朝に何事もなく目が覚めた。
俺は、死に損なったんだ。
死に損なったという感覚だけがあった。
くるはずのない今日を俺は生きていた。
俺が知るはずのなかった明日だ。
本当は死んでいるんじゃないかという感覚にがあり、本当はベッドに自分が寝ているのではないかとベッドを何度も振り返って見たりした。
不確実な方法だっただろうか。
俺はこれで楽になれると思っていた。
なにもかもを終わらせられると思っていた。
物語の中の登場人物は簡単に死んでいくのに、自分が死ぬというのはなかなかすんなりいかない。
毎日、毎分、毎秒、どこかで人は死んでいるのに。
俺もついにその1人になれると思ったのに、俺はその1人になれなかった。
俺は夜、母といつも通り母と話した。
本当なら、俺は今日母と話すことはなかったはずだ。
母は俺の死体を発見し、救急車や警察を呼んで、泣いて食事もできない状態になっていたはずだ。
だが、俺は生きていて普通に母と会話をした。
何事もなかったかのようで、何も知らない母は笑っていた。
友達とも話をした。
本当なら今日、俺は友達とも話すことは出来なかったはずだ。
突然連絡が取れなくなり、失踪していただけだ。
自分のいないはずの未来を生きているというのは変な感じだった。
庭に出ると、俺が育てている庭の植物の成長を見れた。
俺の気持ちがどうとか植物にとっては関係ないし、心配してくれるわけでもないし、話を聞いてもらえるわけでもないが、懸命に空に向かって伸びていっているその姿は眩しく見えたし「お前もしっかりしろ」と言われているような気がした。
来るはずのない今日を生きて、何もかもが奇妙に感じる。
長い夢を見ているような気がする。
あれ……?
なんだか……既視感があるような……?
***
「もう、目覚めることはない」
「これが最後の夜だ」
そう思っていた。
俺は覚悟も決めていた。
最期の夜だから、俺は後悔のないように終わりを迎えたはずだった。
大好きなゲームをして、笑ったり、感動して泣いたりして。
そこまでは覚えているのだが、俺はそこから記憶がない。
朝、目が覚めた。
何気なく起きて、俺はいつも通り自分の机に向かった。
昨日、毒を机の上に置いたということは憶えている。俺はその瓶の中身をチラッと見て確認した。
「え?」
瓶の中身は空になっていた。
飲んだ覚えはないし、仮に飲んでいるとしたら俺は死んでいなければおかしい。
しかし、毒の瓶の中身はなくなっていたから飲んだほかにはない。
ゴミ箱やベランダに捨てた形跡もなかった。
だが、俺は次の日の朝に何事もなく目が覚めた。
俺は、死に損なったんだ。
死に損なったという感覚だけがあった。
くるはずのない今日を俺は生きていた。
俺が知るはずのなかった明日だ。
本当は死んでいるんじゃないかという感覚にがあり、本当はベッドに自分が寝ているのではないかとベッドを何度も振り返って見たりした。
不確実な方法だっただろうか。
俺はこれで楽になれると思っていた。
なにもかもを終わらせられると思っていた。
物語の中の登場人物は簡単に死んでいくのに、自分が死ぬというのはなかなかすんなりいかない。
毎日、毎分、毎秒、どこかで人は死んでいるのに。
俺もついにその1人になれると思ったのに、俺はその1人になれなかった。
俺は夜、母といつも通り母と話した。
本当なら、俺は今日母と話すことはなかったはずだ。
母は俺の死体を発見し、救急車や警察を呼んで、泣いて食事もできない状態になっていたはずだ。
だが、俺は生きていて普通に母と会話をした。
何事もなかったかのようで、何も知らない母は笑っていた。
友達とも話をした。
本当なら今日、俺は友達とも話すことは出来なかったはずだ。
突然連絡が取れなくなり、失踪していただけだ。
自分のいないはずの未来を生きているというのは変な感じだった。
庭に出ると、俺が育てている庭の植物の成長を見れた。
俺の気持ちがどうとか植物にとっては関係ないし、心配してくれるわけでもないし、話を聞いてもらえるわけでもないが、懸命に空に向かって伸びていっているその姿は眩しく見えたし「お前もしっかりしろ」と言われているような気がした。
来るはずのない今日を生きて、何もかもが奇妙に感じる。
「本当は俺は死ぬことのない身体なのではないだろうか」とか
「実は1回死んだのではないか」とか
「ここはただの地獄なのではないか」とか
そんな非現実的なことを考える。
長い夢を見ているような気がする。
何かがおかしい。
何か、それは分からないが……何かが変だ。
それだけは分かる。
でも、俺は「生きていてよかった」と思うことはある。
だが、俺は今日も死ぬ方法をずっと探す旅をしている……。
***
ここは地獄だ。
命の尊さを侮辱した俺への罰だ。
永遠に俺はここで自分の命の尊さについて考えさせられ続ける。
俺はそれに気づかない。
永遠に「今日」を生きる。
本当の俺はもういない。
俺という概念だけが残った。
天国とか、地獄とか、そういう言い方をするなら
ここは地獄だ。
何度も何度も俺は目を覚まし続ける。
「もう目覚めたくない」と、切実に願っても、願っても……
叶うことはない。
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