壮大なままごと

この世界には、実際には存在しないモノが溢れている。

例えばお金だ。お金なんてものは今では世界的に価値がある。時に人の命を凌ぐ程の価値が。だが人間社会を抜きに考えればそれは何てことないただの紙切れだ。もしくは銅の合金。そこら辺の学生が雑に切り取ったノートの切れ端と変わらない。でもお札にはそれ以上の価値がある。



名称なんてものも本当は存在しない。ただ勝手に木を「き」と呼んでいるだけだ。しかそれは世界では違ってくる。ウッド、バオム、アルベロ、アルボル、デンドロン。たったひとつの木でさえ膨大な呼び方がある(これが更に種類で詳細化されるのだ途方も無い)。

しかもそれも自然界からすればどれでもないのだから驚きだ。自然界からすれば木は木であり呼び方などない。木という存在であるだけ。



この良く分からない世の中に首を傾げていると、俺はある事を思い出した。幼少期に幼馴染とやっていた『おままごと』だ。

彼女はよく言っていた。



「それじゃあこの葉っぱがお金ね」



そう言われれば俺らの世界ではそれはお金だ。物を買い、サービスの対価として支払う物。



「フッ」



思わず笑ってしまった。

結局、この人間社会は公園の片隅やどこかの部屋でしている子どものままごとと根本は何も変わらない。ただより巨大で複雑になっただけ。


この世界は所詮、壮大なままごとでしかないのだ。

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