実は……1

家のリビング。私と課長は向かい合って座っている。

あの後、ちゃんと説明してくれと課長に言われ、帰宅後何があったのかを全て話した。


最近変な事が起こっていた事、課長との写真をネタに脅されていた事。全部。


携帯に送られて来た写真と、さっき和矢が会社でバラ撒いた写真を見ながら課長がため息を吐いた。


「しかし、よく撮れてるな。全く気が付かなかったよ」


「はい……」


よくよく見ると、和矢がばら撒いた写真の方に、千歳の誕生日プレゼントを買いに行ったあの日の写真も含まれていた。


「このカフェで撮られたのなんて、すごく良く撮れてる」


課長がちょっと関心した様に呟いた。

この写真から察するに、あの日、あのカフェで偶然居合わせた新井麗子は偶然なんかじゃなかった。


彼氏とデートしていたワケでも、お忍びで不倫デートしていたワケでもなく、おそらく私達の後を付けて写真を撮っていたんだと思われる。写真の角度からして、私が新井麗子を見付けたテーブル席辺りから撮られた物だった。


あの時、男性と一緒だったにも関わらずこんな写真を撮れたって事は、あの人もグルだったのかもしれない。


(もしかしたらプロの探偵とかだったのかも……)


まあ、もうどうでも良い事だ。


「で?」


「はい?」


「なんで俺に相談しなかったんだ?」


課長がその写真を、トントン――と指さして私に言った。


「それは……」


ちょっと、と言うか、かなり怒った表情の課長が怖くて、私は目を背ける。


「恋人が困っているんだ。助けない彼氏がいない訳ないだろう?違うか?」


「それはそう、なんですけど…………え?」


課長の言葉に、私は背けた顔を課長に向き直す。


「課長?今、なんて言いました……?」


あれ?私の聞き間違いか空耳だったかな?


「ん?なんで相談しなかった」


「その後です」


「その後?恋人が困ってるんだから助けない彼氏がいない訳ないだろう、か?」


「はい、それです……」


あ、やぱり聞き間違いじゃなかった。確かに課長はそう言ったみたいだった。


……ん?あれ?


「あの……誰と誰の話をしてます?」


恋人?彼氏?私と和矢の事??


なんかよく分からなくなって、再度課長に尋ねた。


「今、俺と中条以外に誰の話をしていたんだ?俺たち2人の話に決まってるだろう」


「あ、私達の…………うえぇぇぇぇっ!?」


私はガバッ!と勢いよく椅子から立ち上がり、驚きの声を上げた。椅子が勢い余って倒れかける。


「なんだそんな大声を出して」


「いや、あの、だってっ!!」


私は完璧にパニックを起こし、あたふたと頭を抱えた。


「何か変な話だったか?」


「変ですよ!私達って恋人同士だったんですか!?」


「えっ……恋人同士じゃないのか?」


「えっ!?」


「えっ?」


双方驚いて、見つめ合う。


でも、驚いている内容が違い過ぎて、私は目を白黒させた。


「……すみません。状況を一旦整理してもいいですか?」


「ああ、分かった」


私は、ふぅ、と呼吸を落ち着かせ、一個一個尋ねる。


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