第120話 コンプレックスの闇は深く
倒れた由良を寝室に運び入れ、部屋から出てきたルアと東雲。
「ひとまずこれで一安心だろう。まったく、ルアの容姿が少し変わる度に鼻血を吹き出しおって、騒々しいやつだ。」
ルアの頭の上で大きなため息を吐く東雲。そんな彼女にルアは苦笑いを返すことしかできなかった。
「あはは……なんかすみません。」
「まぁいい、今日はロレットにはクロロとエナの二人に相手になってもらうとしよう。」
「ボクたちは、真琴さんとミリアさんと一緒にやるんですよね?」
「あぁ、妾達の力を更に上回る力をお前が身に付けれるようになったからな。要は妾達のパワーアップに付き合ってもらう形になる。」
ルアが自由自在に神の力を身に付けられることをバカンスで知った東雲は、自分達のパワーアップにルアを使おうと企てたのだ。
「ボク自身は修行しなくていいんですか?」
「別に構わんだろう?それだけの力をあっさりと身に付けられるのだ。もはやお前自身の力を鍛える意味などあるまい。」
「そ、そうですかねぇ……。」
「そういうものだ。それにより強い力を持つものが、力の弱いものを育てるのは当たり前のこと……お前が疑問を持つ必要はない。」
そして中庭の外へとルア達が出ようとしたその時だった。
カシャッ…………。
「「!?!?」」
突然どこからか、カメラのシャッター音のようなものが聞こえ、城の中に響き渡った。
そしてそれを聞いた東雲は顔をしかめながら、ポツリと言った。
「……あの変態女神め。あやつもルアの容姿の変化に釣られてやってきたか。」
「えっ?そ、それって…………。」
「ふん、まぁいい。こちらもあやつの力を存分に使わせてもらうのだ。それぐらいの対価にルアの姿ぐらい覗かせてやっても良いだろう。」
「何も良くないですよ!?」
「なんだ?別に減るものでもないだろう?まぁ、今のお前の姿は確かに期間限定のものかもしれんが……。」
そんな会話をしながらルア達が中庭へと出てくると、そこには既に真琴とミリアが待っていた。
「あ、遅いよ~ルア君に東雲ちゃん。遅刻~!!」
「仕方なかろう、こちらにも色々と事情があったのだ。」
「ふ~ん?そんなこと言って、東雲ちゃんが寝坊しただけなんじゃないの~?」
にやにやと笑みを浮かべながら、ミリアは東雲を問い詰める。そんな彼女に不快そうに眉を曲げる東雲。
「貴様、その言いぐさ……まるで妾がいつも寝坊しているような言いぐさだな。」
「え~?違った?だっていっつも起きてくるの一番遅いの東雲ちゃんじゃん?」
「それは妾は貴様らよりも魔力力が多いからな。回復するのにも時間がかかるのだ。」
「あははっ♪その姿でかい?それは無理があるよ東雲ちゃ~ん。」
煽りのギアを全開で飛ばしているミリアに、ついに東雲の堪忍袋の緒が切れたらしく、ブチッ……と生々しいおとがルアの頭上から聞こえてきた。
「貴様……上等だぞ。」
ピョンとルアの頭の上から飛び降りると、東雲は人の姿へと変化した。そしてギロリとミリアのことを睨み付ける。
「そんなに妾の魔力の底が見たいのなら見せてやる。代償は貴様の命で構わんぞ。」
「あははははっ♪やる気かい?」
「こちらの台詞だクソ蝙蝠が。」
「あわわわわっ…………。」
今にも東雲とミリアは殺し合いを始めてしまいそうなほど険悪な雰囲気になってしまっている。
「あいにく妾の機嫌は悪い。どこかで見ている変態女神のせいでな。手加減できずにうっかり殺してしまうやもしれん。」
「ん~っ、それって負けたときの言い訳かい?手加減してたから~とかやめてよね。」
更に煽るミリアにブチブチと東雲のなかで何かが切れていく。そして二人の殺気が最大まで増幅しようとしたその時……。
「はいはい、ミリアはんも、東雲はんもその辺にしとくれやす?」
一触即発だった二人の間に真琴が割って入った。
「なんだ真琴、貴様もミリアの味方か?やはり巨乳どもは悪だな。」
「いやちゃうよ!?それにあてかて、好きでこないな乳になった訳やないし……。」
「言い訳無用だ!!この無駄乳狸めっ!!」
パチンと軽快な音を立てて東雲が真琴の巨乳を忌々しそうに軽く平手うちする。
「あんっ……♥️東雲はん乱暴やわぁ~、優しゅうしてくれんと~。」
「くっ…………興醒めだ。ルア、こんな無駄乳どもは放っておいて妾達だけで修練を始めるぞ。」
「わわわっ!?ちょ、ちょっと東雲さん!?」
ズルズルと東雲はルアを引きずってどこかへと歩き出してしまう。
そしてその場に取り残された真琴とミリア。真琴はクルリとミリアの方を振り返ると笑いながら言った。
「ミリアはんも、あんまり東雲はんを煽ったらあかんよ?」
「あははっ♪あんなにムキになるのは予想外だったよ。これからはほどほどにするさ。それにしても…………。」
チラリとミリアは東雲の方に視線を向ける。
「まさか東雲ちゃんが胸にコンプレックスがあるとはねぇ~。まぁ、真琴ちゃん凄いおっきいし……小さく見えちゃうのかな~。」
「あ、それ東雲はんの前で言ったらあかんよ?あてそれで一回尻尾以外消し飛ばされとるからねぇ~。」
「わぁ……えぐいことされてるね。気を付けるよ。」
「ほな、あてらも行きまひょ。」
満足そうに真琴はうなずくと、ミリアと共に東雲の後を追うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます