第27話 天使襲来
シーレーヌでの観光と買い物を終えてルア達が帰ろうとした時だった。
「さて、そろそろ一度戻るとしようかの。シーレーヌはどうじゃった?」
「うん!!楽しかったよ!!」
「そうかそうか、それはよかったのじゃ。では帰ろうか…………っ!!」
突然由良は表情を変えて、バッ……と上空を見上げた。
「…………??」
由良が突然表情を変えた理由がわからずに、ルアも彼女が睨み付けている空と同じ方向に視線を向けた。
すると……
「あれ……なに?」
空から降りた光の柱の中に、人の姿が見えた。白いワンピースのような服を身にまとい、背中には真っ白く大きな翼、そして極め付きなのは……頭の上に浮いている光り輝く輪っかだ。
そして一瞬……ルアは光り柱の中に佇む彼女と
目が合った瞬間、ルアの背筋にゾワゾワと悪寒が走り、膝がガクガクと不自然に震え始めてしまう。
「あ……あ……。」
「~~~っ移動魔法展開っ!!」
動けなくなってしまったルアを抱えて、由良は即座に移動魔法を使い何処かへと飛んだ。
その様子を上空で佇む彼女は微笑みながら眺めていた。
◇
明かりが灯っていない由良の家の居間に突如魔法陣が現れ、その上にルアと由良が姿を現した。
「……なんとか逃げ切れた……か?」
「お、お母さん……あれって、天使だよね?」
震える声でルアは由良に問いかけると、由良はゆっくりと頷いた。
「間違いない。気配も容姿も間違いなく天使じゃ。」
「ボクも……連れてかれちゃうのかな?」
「安心するのじゃ、お主はわしが守る。」
微かに体を震わせているルアの事をぎゅっと抱きしめ、優しく由良は言った。
「ルアや、今からわしらの女王に会いに行くぞ。」
「女王様に?」
「うむ、本当はお主がオスである事をもっと隠しておきたかったのじゃが……そうもいかなくなった。」
「……わかった。」
由良の言葉にルアは頷いた。そんな彼の頭を優しく由良は撫でる。そんな会話をしていた二人の元にある人物が飛び込んできた。
「たっ……大変ですよ由良さん!!」
「むっ?クロロか。家に押し入るときはせめてノック位……」
「それどころじゃないんですよ!!天使です、天使っ!!天使が出たんですよ!!」
「わかっておる。ちょうどわしらがその現場に居合わせた。」
「うえっ!?ま、マジですか……。」
由良の言葉にクロロは目を丸くした。
「あやつらが下界に姿を現すということは、ルアの存在が奴らにバレたからに他ならん。流石のわしと言えど天使には無力じゃ。じゃから今から女王にルアの事を話しに行こうと思っておった。」
「ってことはルアちゃんの存在を公にするってことですか?」
「まぁそういうことじゃな。」
由良とクロロが話を進めていると、ルアの頭の中に聞きなれた声が響いてきた。
「あ、あ~……ボクちゃん?聞こえるかな~?」
「レトさん?」
「ピンポーン!正解のご褒美になでなでしてあげたいところだけど~、今ちょっと立て込んでてね~ボクちゃんの前に姿を現せないの。それで本題なんだけど~そっちに下級の天使が一人すり抜けてっちゃったでしょ?」
「下級の天使……ってさっきボクのこと見てましたよっ!!」
「あ~、やっぱり?ごめんね~ちょっとこっちでトラブルがあってね~。一人だけ通しちゃった。」
「通しちゃった……ってど、どうすればいいんですかっ!?」
「大丈夫、大丈夫~そのためのメタモルフォーゼよ。ちょ~っとこっちの用事が忙しくなってきたから、そろそろ切るけど……頑張ってねボクちゃん☆」
「あ!!ちょっとレトさん!?」
その言葉を最後にレトとの会話が途切れてしまう。
「~~~っ!!ホント自分勝手なんだからも~っ!!」
「おぅ!?な、なんじゃルア?そんなに怒ってどうしたのじゃ?」
「あ、な、何でもない大丈夫。」
どうやらレトと会話をしている間は由良達にルアの声は聞こえていなかったらしい。会話が終わって初めて彼の声は由良達に聞こえたようだ。
「さて、時は一刻を争う。今すぐ女王の城に…………。」
と、由良がそう言いかけた時だった。
コンコン……。
「「「…………!!」」」
由良の家の扉がコンコン……と優しくノックされた。
・
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一方その頃レトはというと……
「さ~て?さっきの娘以外はここは通さないわよ~?」
なにもなく光だけが差し込む空間で、膨大な数の天使の前でレトは仁王立ちしていた。
「いくら女神とはいえ、この数の天使を相手に勝てるとでも?」
天使を指揮している背中に四対の羽根がある天使が、クスリと笑いながらレトに言った。
「そうねぇ~、ちょ~っと厳しいかも~?……だから、久しぶりに勝負服着ちゃおうかしら♪」
パチン……とレトが指を鳴らすとレトが纏っていた純白の衣がどんどん漆黒に染まっていく。そして、瞳の色が紅色に変わった。
「……っ!!これは……なんだ!?」
一気に容姿も気配も変わったことで、天使達の指揮官は驚きを隠せずにいる。その周りにいる天使達も動揺していた。
「あら?あなた達の産みの親は教えてくれなかったのかしら?それは……それは……可哀想ねぇ~。」
レトがにんまりと口角を歪めた瞬間、光が差していた空間から光が消え、闇だけが空間を支配した。
「さぁ……行くわよ~?」
怯んでいる天使達へ向かってレトは一歩ずつ歩みを進めるのだった。
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