第11話 弟子入り
それから少しすると、ミノタウロスとなったルアの体が光に包まれ、もとの姿へと戻った。
「あ、もう戻っちゃった。」
「ふむ、どうやら時間経過でもとの姿に戻るようじゃな。なかなか興味深い技じゃ。それにしても……くんくん…………。」
もとの姿に戻ったルアの頭に顔を埋めて、由良はくんくんと匂いを確かめた。
「うむ、やはりオスの匂いが濃くなっておるの。その技の反動か。」
由良は腰に提げたバッグからメモ帳を取り出すと、すらすらとメモを取っていく。
「して、ルアや?先はミノタウロスに変身したが……他には何に変身できる?」
「う~ん、わかんない。まだ試してないから……。」
「ふむふむ……ではまだまだ試す余地あり……と。」
由良がルアに質問しながらメモを取っている最中、クロロとエナはこんなことを話していた。
「エナちゃん、もし由良さんが止めに入んなかったらどうしてた~?」
ふと、疑問に思ったことをクロロはエナに問いかけた。
「ん~……100%襲っちゃってましたねぇ~♪」
「やっぱり~?(ほっ……由良さん連れてきてよかったぁ~。)」
にっこりと笑顔でそう答えたエナに、クロロは心の底から由良がここにいてくれて良かったと思うのだった。
というのも、仮にもし……今この場に由良がいなかった場合、クロロではエナのことを無傷で止めることができないからだ。
二人がそんなことを話している傍らで、ルアへの質問を終えた由良はパタンとメモ帳を閉じて言った。
「ふむ、ひとまずその……メタモルフォーゼとやらは人前で迂闊に使わないようにするのじゃぞ?今、ルアがオスじゃと世間に知れ渡るのはマズイのじゃ。」
「天使が来るから?」
ルアが口にした天使……というのは、この世界にオスが存在しなくなった理由を作った者達のことだ。
「半分正解じゃ。もう半分は、欲を抑えられぬ者がお主を狙って来るからじゃ。」
口角を吊り上げながら由良はエナの方に、じろりとした視線を向ける。
すると、視線を向けられたエナは思わず苦笑いを浮かべた。
「……この町に住んでおる者は皆、オスに飢えておる。故に危険なのじゃ。わかったかの?」
由良の言葉にルアは大きく頷いた。その反応に満足した由良は、ルアの頭を優しく撫でる。
「よしよし、物分かりが良いの~……。」
ひとしきりルアの頭を撫でた由良は、ふと手を止めると少し恥ずかしそうにしながら、彼の耳元でボソボソと呟いた。
「そ、それで……じゃルアや。わしのような妖狐のオスに変身できるか、試してくれぬか?」
内密にルアにそうお願いした由良だったが……。
「あっ!!ずるいですよ由良さん、次はケットシーのオスに変身してもらいたいのにっ!!」
「くぅ~っ!!無駄に耳の良いやつめ……。迂闊に内緒話もできぬか。」
二人の意見が対立しぶつかり合うが……。
「あ、えっと……さっき変身したばっかりだから、今はまだ変身できないかも。」
「なんとな!?連続使用はできぬのか……。せっかくのチャンスじゃったが、残念じゃ。」
「こればっかりは私たちにどうこうできる問題じゃないですもんね……諦めます。」
ルアの言葉に二人は残念そうにしながらも、もくろみを諦めた様子だ。
そして空気を変えるために、クロロが由良にあることを話し始めた。
「あ、そういえば……由良さんにお願いがあるんですけど~?」
「なんじゃ藪から棒に……お願いとな?」
「はいっ!!私とルアちゃんに魔法を教えてほしいんです。」
「魔法を教えてほしいとな?いったいどんな心変わりなんじゃ?」
「いや~、私の素の力だけじゃルアちゃんを守りきれないって、今日思い知っちゃったんですよ。」
「ふむ、なるほどのぉ~。」
クロロの説明を聞いて、由良はうんうんと頷く。そして由良はルアの方へと視線を向けた。
「ルアも魔法に興味があるのかの?」
「うん!!」
「ふむ……。」
深く考えるような素振りを見せると、由良は今度はエナの方を向いた。
「エナや、クロロにわしが教えた基礎を叩き込んでやってくれ。明日までに使い物になるようにするのじゃぞ?」
「はぁ~い、わかりましたぁ~。」
ビシッとエナが敬礼した姿を見て由良は、今度はルアの方を向いた。
「ルアはまず魔法とは何か……を学ぶところから始めようかの。早速帰ってわしと一緒に勉強じゃ。」
「う、うん…………。」
そしてクロロをエナの家に取り残し、由良はルアと二人で帰路についたのだった。
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