死を知る

 城の研究室。

 隣の寝室からイーヴォの寝息が聞こえる。

 暗い部屋の中、僕はトワが映し出す立体的なホログラムの映像に魅入っていた。


 ————今日のことで私が眠れないでいるんじゃないかって考えてくれて、トワをここに来させてくれた龍人は、やっぱり優しい人だと思う。


 どうなるか心配していたけど、トワの横でぐっすり眠るシエラちゃんを見てホッとした。


「……本当に、天使みたいだな」


 とりあえず落ち着いたようだし、僕も安心して眠れそうだ。

 シエラちゃんが寝たところでトワが映像を消し、僕の意識が現実に戻る。


「あれ?」


 太ももが濡れて染みになっている。

 そっと自分の頬に触れ、自分の目から落ちたものだと気が付くまでにはしばらくかかった。


「はは……500年ぶりだな」


 古い友と優しい天使に想いを馳せ、静かに目を閉じる。

 さらに数滴、大粒の涙がこぼれた。

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