第十二話

                第十二話  遊ぶこともよし

 キャンプは確かに月月火水木金金であり野球ばかりであった、だがそれでは次第に息が詰まりストレスが溜まる。

 ストレスは大敵だ、だから拙者はこのことにも気を使った。

 風呂に酒だけではない、遊ぶことも大いに認めた。よく学びよく修行しよく遊ぶ。このこともまた拙者は戦国から守ってきたことだ。

 ゲームや卓球は大いによかった、漫画も小説も望むところだ。そして。

 レジャーとしてピクニックや公園でのレクレーションそれにゴルフやテニスもした。ゴルフは拙者は興味がなかったが。

 これもよしとした、身体を動かすことが中心でも息抜きも大いにさせた、朝早くから汗をかいているのでそうしたことも必要だと思ってのことだ。調べてみると月月火水木金金の本家本元である大日本帝国海軍の将兵も遊ぶべき時は大いに遊んでいた、練習ばかり野球ばかりでもやはりよくはない。そう思って余暇も入れた。

 拙者は余暇の時はゲームをし書を読み学問に励んだ、それも野球のものだ。様々な野球の書を読み野球への理解を進めていくつもりだった。そして夜は飲んだ、選手達の中でも特に前世からの絆がある十勇士達とそうした。

 皆よく飲む、その中でも特に清海がよく飲みよく食べるのは前世のままだ、清海は盛大に飲んで食べつつ拙者に言ってきた。

「殿、今の世は楽しきことが実に多いですな」

「全くじゃ、拙者にしても色々と趣味が出来た」

 拙者は前世からの好物である焼酎を飲みつつ清海に応えた、焼酎の味も随分よくなっている。

「読書だけでなくゲームもするしな」

「殿もゲームをされますか」

「漫画もライトノベルも読むぞ」 

 やはり読書に時間を割くことが多い、実は野球のもの以外にも様々な分野の書を読んでいる。異世界ものも格闘ものもギャグも好きである。実は少女漫画も読むし好きである。そのことを隠すつもりもない。

 それで今十勇士達に話すと皆これはという顔になって笑った。

「いや、殿はこの世でも殿ですな」

「流石殿、実に多くの書を読み学問に励まれておられる」

「しかも楽しみつつとはこれもまた前世と同じ」

「殿はやはり殿ですな」

「そうであるか、確かに拙者はこの世でも拙者だ」

 このことは飲みつつだがはっきりと言えた、だからこそ十勇士達にも言った。

「何か目指すもの、果たすものの為に生きている」

「それも義に徹してですな」

「義に生き義に死す」

「そのお心は常にありますな」

「左様、今拙者の義は阪神にある」

 阪神タイガース、このチームにだ。思えば拙者が今このチームに所属しているのも運命であろう。

 その阪神にいるのなら阪神への義に生きて義に死す、そうあるべきだと考えるからこそだ。

 拙者は今十勇士達、かつて苦楽も生死も共にしてきた者達に答えた。

「それ故に阪神の為に学ぶこともしておる」

「野球をですな」

「そうしておられますか」

「野球の書も読まれて」

「他の書も読んでおるが」

 漫画にしてもライトノベルにしてもだ、今では古典とされている拙者の時代の書も読んでいる。その中には孫子や呉子といった兵法書もあれば平家物語や太平記等軍記ものもある。様々な書を読んでいる。

「やはり阪神の為にな」

「読まれそして阪神に生かす」

「そうされますか」

「左様、それで打線は決まった」 

 拙者は野手である十勇士達に話した、これまでどういった打線にするか朧気に考えていたがここ数日で決まった。 

 十勇士達は十人共打つ、左右に打ち分ける技巧を持ち三振も少ない。尚且つ先の者が打てば続く連打の特性がありしかも機動力もある。 

 連続安打と巧みな盗塁と走塁で得点を狙える、勝負強い者ばかりなのも頼もしい。しかし弱点がある。

 決定的な長打力を持つ者は清海と伊佐だけである、二人共キャッチャーであるので同時には試合に出せない。若し二人を同時に出すと替えのキャッチャーは岩崎弥太郎殿しかいなくなる。これでは非常に辛い。

 清海の次にパワーのある甚八を四番に据える、しかしそれだけではなく拙者は打線全体を考えてそうしてだった。

 打線を考えていた、それでだ。

 今十勇士達にその打線のことを考えた、それを今彼等に話した。



第十二話   完



                 2021・6・6

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