第三十九話 伝説品質化


 貨物用の荷馬車に移動した僕たちは、武具屋さんがまとめてくれた納品書に書かれた内容を見ていく。



 『鎧』


 ・鉄の鎧×7

 ・革の鎧×7

 ・鉄の部分鎧×3

 ・革の部分鎧×2

 ・鉄の胸当て×2

 ・革の胸当て×4


 『盾』


 ・鉄の円盾×1

 ・革の円盾×1

 ・鉄の盾×1

 ・革の盾×2


 『武器』


 ・鉄の剣×15

 ・鉄の両手剣×3

 ・鉄の刀×3

 ・鉄の短剣×10

 ・鉄の槍×2

 ・鉄の弓×3

 ・狩猟弓×5

 ・鉄の棍棒×2

 ・樫の杖×3

 ・鉄の手斧×3

 ・鉄の槍斧×1


 『その他』


 ・鉄の矢筒×1

 ・革の矢筒×1

 ・布のローブ×1

 ・布のケープ×1

 ・布のクローク×2

 ・布の外套×2

 ・革の外套×2

 ・革の兜×1

 ・鉄の兜×1

 ・鎖かたびら×1

 ・布鎧×2

 ・革の手袋×1

 ・鉄の手甲×1

 ・革の靴×2

 ・鉄の靴×1



「基本的にさきほど外で作った高品質な鉄の剣だけで、利益は十分に出ているから、ここにある物は全て伝説品質を狙ってみてもいいが。基本的に品質のよいものほど元の物よりも軽くなるとも言われている」



 ああ、なるほど。


 鉄の剣も普通品質の剣より、伝説品質の剣が使いやすいのは重さが軽減されている部分もあるかもしれない。


 成功率は補正込みで半分を少しだけ下回るけど、成功したら大きく防御力などが上がりそう。



「だと、僕は伝説品質になったもので、防御力を重視した装備を選んでいくという形がいいですかね。体格的にあまり重い物は装備できないんで」



 成長期ではあるけど、まだ同じ年の男性の中では細身で身長も低い。


 身体は鍛えてきてたけど、筋力に自信はない。



「うむ、伝説品質化成功した物から選ぶというのがいいだろう。エルサ君のも含めてな」



 エルサさんの装備の中で、新調した鋼鉄の胸当てだけは高品質化だけで済ませたい。


 中古品だとたぶんエルサさんの体型には合わないだろうし。



「方針が決まったようだし、多いやつから破壊いくね」



 エルサさんが貨物用の荷馬車に積まれた中古の武具から、品数の多い物を選んで破壊スキルを発動させていった。


 そして、破壊された物を次々に数量指定し、伝説品質で一気に再生スキルを発動させていく。


 荷馬車の中は眩しい光に溢れ、次々に再生に成功した物のと、失敗して黒い煙になって消えていく物に分かれていった。


 伝説品質として再構成できた物を確認していく。



 ・鉄の鎧×2

 ・革の鎧×2

 ・革の部分鎧×1

 ・革の円盾×1

 ・鉄の盾×1

 ・鉄の剣×3

 ・鉄の刀×1

 ・鉄の短剣×4

 ・鉄の弓×1

 ・狩猟弓×2

 ・鉄の手斧×1

 ・鉄の矢筒×1

 ・布のクローク×1

 ・革の外套×1

 ・鉄の兜×1

 ・布鎧×1

 ・鉄の靴×1



 全て☆一つの武具だったため、意外と伝説品質の物が残っていた。


 再生が成功し再構築された武具を手に取ったベルンハルトさんが鑑定していく。



「こうも簡単に伝説品質の武具が手に入るとはな。技能系スキルの最上級レアスキルである『技能神の恩寵』や持つ、経験豊富な鍛冶師や鎧師が、万全の体調で作って何百個に一つできるかどうかの品なのだが」


「だから、基本的に伝説品質のは資産価値が高いんですね。これって大量に流通すると、値段が下がるんでしょうか?」


「鑑定スキルの表示する資産価値は下がらないが、伝説品質が大量に出回れば市場価値は暴落するはずだ。欲しい人がいてこそ、市場で売買ができるのであって、欲しい人がいなくなれば値段が付かず落ちていくしかない。売り時と売る数を間違えると大きく損をしかねないということだ」


「なるほど。一時的な利益を確保するため、やたらと高品質の物を大量に市場に流すのは、自分たちの首を絞めかねないということですか」


「まぁ、そういうことだな。と言っても、武具は常に求める者が多い品物であるし、そう簡単には値段が暴落するということはないがね。特に今回のものは伝説品質としては、手を出しやすい価格だろうし、市場に出せば買い手は殺到するかもしれない。同じ価格帯になる希少金属を使った普通品質の武具よりも性能的に優れてるというのが利点となる」


「性能重視の人が求めると。冒険者は見た目よりも実用を重んじる人が多いですからね。値段が同じなら性能の高い方を選ぶ人が多いのも納得です」


「話がそれてしまったが、伝説品質のものでまずはロルフ君の装備を選ぶとしよう。合成強化に関しては装備が決まった後に考えることにしておこうか」


「はい、そうしましょう」



 伝説品質として再構成された武具から、自分に必要な装備を重さも考えながら着込んでいく。


 選んだのは、布鎧、鉄の鎧、鉄の盾、鉄の兜、革の外套、鉄の靴の六つの防具と予備の武器として鉄の短剣を差してみた。



「ロルフ君、その恰好で重くない?」



 鉄の装備を着込んだ僕の様子を心配そうな眼でエルサさんが見てくる。


 筋力に自信がなかったが、伝説品質の装備は驚くほど軽くなっていて、先ほどまで着けていた革の部分鎧と変わらないくらいの重さしかなかった。



「大丈夫です。かなり装備が軽くなってるみたいです。きっと普通品質のなら、立ってることもできなかっただろうけど、これなら普通に動き回れます。ほら、飛んだり跳ねたりもできますし」



 貨物用の荷馬車の中で全部の装備を着込んだまま、素早く身体を動かしてみた。


「うむ、見た目はようやく装備が揃った駆け出し冒険者っぽいが、防御力、攻撃力ともにベテランの上級冒険者が着ている物に近いレベルになっている。ロルフ君の防御力を破るには相当に強力な魔物でもない限り傷もつけられないのではないだろうか」


「でも、装備を過信する気はないです。油断すれば、簡単に命を失うのが冒険者生活の鉄則ですし」


「良い心がけだ。その気持ちを常に持っていれば、簡単に死ぬことはないだろう。さて、次はエルサ君のを選ぶとするか」



 今度は、エルサさんの装備を選んでいく。


 弓を使うため、動きを阻害しない装備を選んでいく必要があった。


 選んだ装備は胸当てと共用できる、革の部分鎧、布のクローク、鉄の矢筒の三つの防具と、鉄の弓に加え、近接と投擲できる武器として鉄の手斧を選んで着込んでもらうことにした。



「どうです。弓は引けますか?」


「うん、問題ない。本当に防具も軽いわ。鉄の弓の弦も軽く引ける。これなら動き回っても疲れないだろうし、強い矢を放てそう」



 装備を着込んだエルサさんが弓を引いたりして、鎧の干渉がないかを確認していた。



「どうやらエルサ君も問題はなさそうだ。戦闘になれば、ヴァネッサとともに後ろから援護してもらうつもりだが、案外私たちの出番はなくなるかもしれんな。ヴァネッサも攻撃力過多な魔術師であるし、エルサ君も弓の腕は確かだと聞いている」



 猟師をして生計を立てていたエルサさんの弓の腕は、実際に見ているため、ベルンハルトさんの言葉がすぐに現実化するのではと思った。



「そうしてもらえると、僕たちは楽できそうです」


「数で押し寄せる雑魚を狩るのは任せてもらってもいいかも。早射ちもわりと得意だから。矢筒もけっこうな矢の数を収納できる物になったしね」



 たしかに、エルサさんなら押し寄せる魔物の眉間を正確に射抜いていきそう。



「さて、あとは合成強化できそうものだが……」


「最低でも三つ以上ある物にしておいた方がいいかなと」


「そうだな。鉄の剣、鉄の短剣くらいにしておこう。せっかくの伝説品質の装備を失敗してなくすのは忍びない」



 エルサさんに強化する伝説品質の鉄の剣と鉄の短剣を二つずつ破壊してもらい、装備合成スキルを発動させる。



 鉄の剣は成功して、鉄の剣+1となったが、鉄の短剣は外れを引いたようで黒い煙となってきえていた。



「短剣は失敗したようだ。だが、予備はあるんで問題はないだろう。強化された鉄の剣を鑑定させてもらえるかな」



 再構成されて現れた鉄の剣+1(伝説品質)をベルンハルトに渡す。


「性能的には元になった物の半分が加算されるようですね。さらに切れ味鋭くなったかもしれません」


「ああ、そのようだ。鉄の剣でこの性能は見たことがない。+1でこれだとすると、上限まで成長させたら本当に伝説クラスの武器になってしまうかもしれんな」



 鑑定を終えたベルンハルトさんが、強化された鉄の剣を返してくれた。



 どこまで成長させられるかは分からないけど、できるだけ性能を高めていきたい。


 装備を過信はしないけど、性能向上は生存率を高めるし、求めても損はないはず。



「そろそろ、終わった? お腹を空かして待ちきれないリズィーちゃんがつまみ食いしようとしてるから、そろそろ夕ご飯にしよう」



 居住用の荷馬車に通じる扉から顔を出したヴァネッサが、夕食の準備ができたことを伝えていた。



「はーい、すぐに行きます。エルサさん、ベルンハルトさん、ご飯にしますか」


「ああ、そうしよう。早く行かないとリズィーに全部食べられてしまいそうだ」


「ヴァネッサさん、すぐに配膳手伝いますから」



 それから、夕食をみんなで一緒に食べると、明日の探索再開に備えて、早めの就寝をすることにした。

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