第37話 王子様はツッコミ担当

「お前、サテュロスの魅了も凌駕するほどに女が嫌いか」

「女が嫌いなわけじゃない。媚びを売ってくる輩が嫌いだ。男女関係ない」


 ほほう、魅了持ち。

 ミルフェ先輩は見た目だけじゃなく、何らかの魅力を発揮する特殊能力をお持ちだと。


「なぁに?」


 じーっとお顔を見ていたら首を傾げられた。


「みろうとか、いる?」


 おっと、舌が回り切らなかった。

 ラ行とサ行は難しいよね。


「んー?」

「こんなびじんさんなら、そのまましょうぶできそう」

「んまぁ!」


 ミルフェ先輩は嬉しそうに私の頭頂部に頬を押し付けてすりすりしてきた。


「で、こんなに素直で可愛い幼い子に、そこの変態王子は何をしたわけ?」


 おっとそうだった、痴漢野郎を糾弾しなくては。


「へんたい!」


 びしっと指さして責めると、アレンは情けない顔で両手を上げた。


「ステータスカードを見ようとしただけで、別にチーロになにかしようとしたわけじゃない」

「はぁ……無断でステータスを覗き見ようっていうのも充分不埒だろうが」

「だって、こんなチビだぞ!?」


 指を指し返された。


「ひとのこと、ゆびさしちゃいけないんだよ!」

「お前もさんざんやったろうが!」


 間髪いれぬツッコミ。

 この王子やりおるわ。


「何でステータスカードを見ようとしたわけ?」


 アレンが変態さんじゃないとわかったからか、ミルフェが私を下ろしてくれた。


「おう。パム磨り潰すのに、上手く魔法が使えないみたいだから、使い方を教えてやろうとしたらやけに魔力が少ないみたいだから確認しようかと思って」

「あぁ、なるほど」


 アレンの説明に納得した様子でロイが頷いた。


「あら、コレでも毎朝の魔獣討伐でいくつかレベルは上がっているはずよ? それでもまだ少ないの?」


 おぉう、朝のスライム、イタチなんかのもぐらたたきもどきは、私のレベル上げだったんだね。

 言葉が通じなかったとはいえ、ミルフェ先輩が先輩風吹かせたくてやらされてるんだと思っててごめんよ。

 でも、本当にレベル上がってるのかな?

 レベルアップのジングルなんて聞いたことないけどな。


「れべる、あがってる?」

「多分ね。今度また町に行った時に確認しよう」


 そういうシステムなのか。

 レベルが上がってもその場で確認とかはできないんだね。

 そういや、ステータスカードも常時更新なのは年齢と状態だけなんだっけ。


「とりあえず、最後に測った時はいくつだったんだ?」

「んー? いくつだったっけ?」


 今度は自分で胸元に手を突っ込んで、ステータスカードを引き出す。

 自分の体温であったまってるだろうカードを渡すのは嫌だったから自分で見たけど、みんなが顔を突っ込んできた。


「わふ」


 って、なんでペスまで覗きこんでるの?

 ひょっとして字が読めるの?


「ペス。いい子だから邪魔しないで」

「わふ」


 あ、そういうわけじゃなかったの……?


---------------


【名前】チヒロ=サカキ

【日付】00004/03/12

【年齢】4歳

【レベル】1【体力】42【魔力】8【膂力】386【知力】32【運】22

【加護】--

【状態】健康


---------------


「あらあら、4歳でレベル1? 魔力は8……? って、膂力! 386って、ちょっとした戦士並じゃないの」

「ちょっとした戦士どころじゃないぞ、騎士でもこれだけ膂力がある奴がどれだけいるか……」


 ミルフェ先輩とアレンがびっくりした声を上げた。

 あ、そうなの?

 そんなにびっくりするほどの力持ちだったんだ。

 へー。

 うっかりリンゴ握りつぶしてぶっしゃーとかやんなくてよかった。

 力加減ができるタイプの怪力だったみたいでよかったなぁ。

 いや、りんご握れるほど手は大きくないけどさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る