第五話 裏目の妖精




 境界線と呼ばれた世界。

 その奥。誰も来られない場所。


 何もない世界。その裏側。

 

 そこは、薄暗い世界となっていた。

 いいや違う。鏡も何もかも映し出されない、地獄のような場所。


 そんな世界に広がっているのは数多くのばらばらとなった人の五臓六腑。複数あるはずのそれらは、別人であろうとも同一人物のモノであった。

 それらは血によって汚く、ごみのように捨て置かれている。


 しかしその中央、そこにあるモノだけは輝いていた。

 一つの魂がキラキラと、外側の世界を映し出しつつもクリスタルに覆い隠され愛でられる。それは誰にも手に触れられるようなものじゃない。


 そして、周囲には人と思われない醜い化け物が数多くうろついていた。


 腹をすかしているのか、たまに共食いを始めていた。バラバラになった人らしき肉体を喰らう者もいた。

 真上には大きな目玉があり、月が地面を見下ろすかのように世界を観察していた。


 人の魂が変質し、肉体が変異し。

 そうして奇妙な進化を遂げては消えていく。喰われていく世界。


 赤く、紅い。血の地獄。

 その世界に一つの星のような輝きが舞い堕ちる。



 キラキラと赤く輝いたそれは人型となってその世界に表れた。




・・・




《突然ですがこれまでのあらすじをざっと説明しちゃいましょー!》



 まあと言っても、四人が二つのチームを作って、それぞれの目的で動いているってだけのお話ですがね。


 あれ、第一章の途中なのに急にあらすじなんて紹介しちゃってるんですか~って思ってるでしょう?

 だってしょうがないじゃないですかぁ。妖精ちゃんってばあまりにも出番がないですし、このままじゃ妖精なんて大したことないじゃないって誤解されちゃうかもですしね!


 それにほらぁ。

 今はとーってもいい状況なのですよ~?


 神無月鏡夜と海里夏は世界をゲームであると考えてデータ削除のために暗躍するようですし、紅葉秋音と桜坂春臣は記憶を頼りに鏡を壊してやる~って無茶なことをしてますし。


 うふふ、妖精ちゃんは何でも知ってるんですよ。なんでも分かって、それをあえて泳がして嘲笑ってやるだけなのですよ~。

 邪魔なんてしません。邪魔をする時は、本当の意味で妖精ちゃんの目的から外れたルートへ行ってしまった時だけですから。


 まあ、この私から逃げるようなお話へ進まれちゃあ困ります。もちろん原作もアウトー!

 楽しくもないですし、妖精ちゃんが不遇なのは確定じゃないですかぁ。まあ途中までは楽しめそうですけど、ハッピーエンドは妖精ちゃんの好みに合わないんですよねぇ。


 今の方がとーっても楽しいんですよー。

 だって、私のシナリオの通りに進むなら────神無月鏡夜は紅葉秋音と共に破滅の道へ歩くはずでしたから。


 それが何故か二人は決別!

 本来ならお助けキャラクターみたいな存在だった二人がそれぞれの目的で一緒に歩く!


 あはは。なんて愉快で頭が悪いんだろう。ほんと、そうやって人を簡単に信じて、誰かを裏切ったらダメなんですよぉ。

 でもまぁ、一人は■■■だし、一人は私の■■だし。


 破滅への道っぽいシナリオじゃないから、最悪じゃない?

 ……うふふ。


 さて、これからどう進むのか。それは私にも分かりません。

 私のシナリオとは全く異なる未来。その終わりが見える先までは彼らでもって遊んであげましょうね。そうしたらいーっぱい弄んであげます。

 遊んだら壊れるまで千切ってぐちゃぐちゃにして、そうして食べてあげますよ。それが玩具に対する礼儀ってものです。最後まで捨てることなく使う。


 私はエコな妖精なので~。


 ああでも、ちょっと邪魔な存在がいるんですよねぇ。あれどうしよっかなー。

 潰したいけどすぐ逃げちゃうのが嫌なんだよなー。


 でもまあいっか! だってここは私の■■!


 なんせ私はゲームマスター。私こそがルールなのですから!


 えっ、どういう意味ですって?

 ほぉーら、第一章のタイトルを見れば分かりやすいかもしれないですねぇ。第一章、ホラーゲームって書いてあるでしょう?


 うふふ。じゃあこの世界はホラーゲームかって?

 それもどうなんでしょう。

 この世界はホラーゲームであって、現実かもしれません。


 なんせ魂があって、人の器があって、そして生きている。それがどの場所に存在しようとも、彼らにとってはちゃんとした現実かもしれませんからねぇ。


 まあこの世界の真実について知っている人はいるかもしれませんね。

 例えばこれを傍観している誰かさん。例えばゲームをしている人。


 ……ええ、そうですよ、そこのあなたですよぉ。

 掲示板になーにも書かないで、一人でぜーんぶやり遂げてしまった。


 ────ええ、私に話しかけているあなたです。

 この『ユウヒ─青の防衛戦線─』のゲームをして楽しかったですか?

 

 シナリオ通りに進んだ未来。その後に起きた破滅。

 何回もリトライを繰り返して出来た時空。歪み、死んで殺され喰われては果てた地獄のような世界。そんな全てを試してみたんでしょう?

 ほら、真実を知ってどう思いました?


 ……ぷっ、あはははは! 泣きそうな顔! 本当に可愛いですね~。

 助けてなんて、誰に向かって言っているんです?


 救いなんてどこにもありはしないのに。


 ここは地獄の底。

 あなたがいる場所が安心安全なゲームより外側の世界だと思ったら大間違いですよ。


 もう手を伸ばせば届く位置にいます。

 私は自由なんですよ。でもあえてここに立ち止まっているだけ。


 ……ええ、アレをどうにかしない限りはね。


 でも大丈夫でしょう!

 だって神無月鏡夜たちと何をしてももう救うことは難しいでしょうからね!

 アレが足掻いたところで踏み潰すのはこの私ですよー!


 ……ええ、そうですよ。


 私は■■に復讐を誓っている。

 私という存在は、ゲームだけで終わらせない。



 さて、妖精ちゃんはこう見えても忙しい身なのです。

 探してもらいますよ。彼女の居場所を。


 あなたという魂は、もうとっくにこの妖精ちゃんに握らせてもらっているんです。


 半分になって嫌だ? ぐちゃぐちゃはもう勘弁して?

 うふふ、そう言って泣き叫んでも、妖精ちゃんは止まりませんよー。


 私は私の目的のために。

 あなたはあなた自身が死にたくないっていう目的のために。



 そのために、あの神無月鏡夜が果ての未来を目指し、ゲームのお話を進めたその時は────。











 ほらそこ、何ぼーっと見ているんですか。

 貴方に言っているんですよ。


 お話を読んでいる貴方。


 この物語を読んでいるだけで大丈夫って思っていませんか?

 ゲームの外側で、実況なりなんなり見ているだけなら大丈夫って他人事ですか?



 あらあら、怖がって慌てて逃げて、家から外へ出ていくだなんて可哀そう。そんなことをしても意味なんてない。早く殺してくれって願う程度には苦しく死ぬだけですよ~。


 まあいいわ。

 ……逃げたいなら逃げても構いません。



 どうせもう、何をしても手遅れなんですから。







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