カップアンドソーサー
@watakasann
第一章 最初の最初
第1話 思い出のカップ
四月、私は四年生になった。
「四年生おめでとう、とう子ちゃん」
「ありがとう、おばあちゃん、おじいちゃんも」
「ハハハ、三人っていうのは
「だって、今日は
そう私が言うと、スマホの中のおばあちゃんは、ちょっと目をぱちぱちさせた。おばあちゃんは今、
「ほら、おばあちゃん、
「そうなの? それでいいの? とう子ちゃん」
「うん、
私の前にはコーヒーカップ、その下にはカップのためのくぼみがある小さなお
この組み合わせを、カップアンドソーサーというそうだ。そして喫茶店のカウンターにいるおじいちゃんの後ろには、
「小学校四年生」にならないと、このカップで飲むことは出来ない。
でも私はみんなの中でも特別、なぜなら目の前にあるカップとソーサーは、私が
それは二年生になったばかりのころ、おばあちゃんと二人で行ったリサイクルショップでのことだった。
「おばあちゃん、リサイクルショップでもカップを
「あるわよ、
とても小さなリサイクルショップで、いろいろな食器が百円で売られていた。その中のカップに、私は
コーヒーというより
「おばあちゃん、これかわいい! 」
「まあ、とう子ちゃん、これは良いものだわ、よく見つけたわね」
「いいものなの? 」
「ええ、そうよ、持ちやすいし、絵もとても
「え? ユニコーン? 」
「これが百円なんて、すごくうれしいわ。きっとソーサーがないからでしょうね」
「そうなんだ、あ、おばあちゃん、ここにソーサーがいっぱいある! 」
十枚以上、ソーサーが重ねてあった。
「これはカップが
二人で楽しく
このカップアンドソーサーをおじいちゃんのお店に持って帰ると
「良いものを見つけたな。とう子が一番見る目があるかもしれないな、これだったら、店に
「
「とう子ちゃんは小さいときから良いものを見ているからよね」
「ソーサーの色の
そのときに来ていたお客さん達も、このカップアンドソーサーと私のことをほめてくれた。だから、四年生になった時はこれで飲もうと思っていた。
でも、飲むのはコーヒーじゃなかった。
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