獣蟲
なお、この辺りに集落を作る獣人達は、かつては敵対関係にあった時期もあったものの、現在では、種族によっては友好的とまでは行かなくても基本的には対立しないようにしているそうです。
これは、私達が現れる以前からのことで、彼ら自身が得た結論です。無駄に争い合うことがお互いの利にならないことを悟ったのでしょう。その結論に至れるという時点で、彼らが単なる<野蛮人>でないことも分かるのではないでしょうか。
もっとも、それは、彼らにとって共通の<外敵>の存在があってのことかもしれませんが。
そう。この世界も、ただ穏やかで平和なだけではないのです。
彼ら獣人、いえ、私達も含めての共通の<外敵>。
「……!」
もうすぐ<よろずや>に戻るという時、私は異様な気配を感じ取っていました。
臭いです。独特の臭い。
「
私がそれに気付いた時、
「キャーッッ!!」
という悲鳴。聞き覚えのある声。
「メイミィ!!」
私は叫びながら走り出していました。
メイミィが
空にはまだ明るさも残っているものの、森の中はほぼ闇。ですが私も軍人の端くれ。この程度の暗闇であれば対処可能です。自身の安全は確保しつつ先を急ぐと、闇の中で何かがぶつかり合う気配。
私にはそれが何かすぐに分かってしまいました。
「伍長!!」
そう、
「ビアンカ! メイミィの保護を!」
闇の中から届く少佐の声。かすかに見える人影は、メイミィを抱えた少佐でした。
「了解!」
軍人である私達の重要な役目の一つは、非戦闘員の保護。であればメイミィの救助が優先されます。
「メイミィ! こっちへ!」
私が声を掛けると、
「ビアンカ…っ!」
怯えた声で彼女が応えながら私の方に走ってきてくれました。
「大丈夫!? 怪我はない?」
私の問い掛けに、
「ダイジョウブ…!」
声は震えているもののしっかりした力のあるそれに私も安心します。
<
<獣のような蟲>
です。
昆虫のそれを思わせるキチン質の外皮を持ちつつ、しかしその大きさはまさに<獣>。小さいものでも中型犬並みの大きさがあるのですから。
<昆虫>は、地球以外の、ある程度以上の生物がいる惑星であればそれほど珍しくない存在でした。なので、今では地球にいる昆虫の由来も、小惑星などに付着していた卵等が隕石として降り注いだ時に燃え尽きることなく地表に達したことで地球に根付いたという説が有力視されています。
ですが一般的には、外骨格を持つ昆虫はここまでの大きさになると自身の体を維持できずに自壊するとも言われています。
しかし
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