あまりにも想定外

こうして私達は、<見知らぬ世界>に飛ばされたのですが、実はまだ、それはここにいたるまでの前段階に過ぎませんでした。


何しろ、この時点での私達の体は、一糸まとわぬ全裸だったとはいえ、普通の人間のそれでしたし。


私は別にヌーディストというわけではありませんが、一応は軍人ですのでどのような状況であろうとも冷静に対応できるようには心掛けています。なので全裸で見知らぬ場所に放り出されてくらいではうろたえたりしません。


……うろたえたりはしません。


うろたえたりはしないですけど、やっぱり恥ずかしいのは恥ずかしいです。


ただ、他のメンバーのほとんどもさすがに惑星探査チームに選別されるような方々ですので、男性でも女性でも、まったく平然としている人は平然としているので、私もその分は辛うじて平静さを保てていたでしょう。


変に恥ずかしがると余計に恥ずかしくなるやつですね。


そんな中、


久利生くりう、この状況、君はどう捉える?」


少佐に淡々とした様子で話しかけていたのは、チームリーダーの<十枚とおまいアレクセイ>でした。


十枚とおまいアレクセイは、<環境生物学>の権威で、私達人間に適した環境を持つ惑星の判定を行う役目でもありました。


その十枚とおまいが冷静に振舞っているということは、この場の環境が人間の生存に問題があるものではないという何よりの証拠なので、皆、そういう意味では落ち着いていられるのでしょう。


とは言え、あまりに異常な状況に、十枚とおまいでさえ理解が追いついていないというのも窺えます。


そして十枚とおまいの問い掛けに、少佐は、


「私は軍人だ。目の前の状況に対してどう対処するかは考えるが、全体像や背景について考察する権限は持たない」


軍人としてお手本のような答えを返します。少佐のおっしゃるとおりです。全体像や背景について考察するのは十枚とおまいの役目であり、私達軍人はこのチームを脅威から守るのが役目ですから。


そうやって、優秀で有能で責任ある立場の二人が冷静に対処しようとしているその一方で、メンバーの一部には、


「これからどうすりゃいいんだ……?」


と、頭を抱え込む者。


「……」


ただ呆然とする者。


「どうして…どうしてこんなことに……」


などと泣きじゃくっている者がいたのも事実です。


さすがにあまりにも想定外の事態であるのも確かですからね。無理もないのかもしれません。


けれど、


「とにかく、こうしていても始まらない。まずは手分けして拠点作りと周辺の捜索を行おう」


「ああ、彼の言うとおりだ。悲観していても状況は好転しない。まずはできることをするべきだと私も思う」


十枚とおまいと少佐の二人は毅然としていたのでした。


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