第4話 なんといっても情報だ
ゲンゾーは戻っていった。シルバーウルフを解体するらしい。リリィに聞いたところどうやらシルバーウルフはDクラスの魔物だそうだ。レベル20はないと単独では勝てないらしく、村の者は数人がかりで何とかたまに倒せる位強いそうだ。村人ではゲンゾーがレベル15と一番強く、ゲンゾーを中心に狩をしている。普段はウルフやデリシャスラビットという兎を狩っているが、最近現れたシルバーウルフが獲物を食べてしまい困っていて討伐を試みたらしい。
「ねえ、カツヨリ。本当に一人でシルバーウルフを倒したの?」
「はい。身体が勝手に動いて首をスパッと」
リコが会話に割り込んだ。なんか機嫌が悪い。
「お兄ちゃんは今までも狩をして沢山稼いでました。強いんです」
「ふーん、で首をスパッとねえ。そのナイフでよね。ちょっと見せてくれない?」
カツヨリはナイフをリリィに手渡した。
「見た目はふつうのナイフよね、あ、凄い切れ味」
リリィはキュウリに似た野菜をナイフを使って切れ味実験をしていた。
「これは良いものね」
「リリィさんは武器の良し悪しがわかるのですか?」
「何となくよ。こんなただの村娘にわかるわけないでしょ」
カツヨリは心の中で『おい!』と叫び呆れながら、
「明日町へ行く馬車があるそうなのですが、リリィさんも行かれるのですか?」
「もちろんよ。一番近い町がアキール町で馬車で3時間くらいの所にあるわ。そこに週一回買い物に行くの。村の野菜や狩で取った魔石や毛皮なんかを売って生活に必要な物を買ってくるの」
「魔石が売れるのですか?」
「色々な魔道具に使われるからね。って、それも覚えてないの?リコ、ヤンギュー国にも魔石はあるよね?」
「はい、明かりや火を起こしたり魚を冷やしたりに使ってました」
「そうよねえ、わかったカツヨリ?」
「わかりました。ありがとうございます」
「ねえ、もういい加減に敬語やめない?同い年なんだから」
同い年なのか。結構巨乳だし年上かと思ってた。
「わかったよ、リリイ。この家に1人暮らしなのかい?」
カツヨリは気になっていた事を聞いてみた。聞くタイミングが難しかったけど聞かないとね。
「兄貴がいたんだけど、シルバーウルフに殺された。狩に行っててね。前はそんなに危険な魔物が近くにはいなくて狩は自由だったんだ。ところがたまにシルバーウルフが出るようになって、兄貴は私に美味しいものを食べて欲しいって返り討ちにあっちゃった。でももう死んじゃったものは仕方ないよ。村にはそんな人は沢山いる。生き残った者で頑張らないと」
と言いながら目からは涙が溢れていた。
「カツヨリ、ありがとう。仇をとってくれて。今晩ご奉仕しますね」
えっ、今なんて言った?ついに来たかこういう展開。リコが冷めたい目で見てる、怖!
その後別にお色気モードはなく、町の事や魔法の事を聞いているうちに日が暮れてゲンゾーが迎えに来た。
「宴の準備ができた。今晩はカツヨリが主役だ。盛り上げてくれよ!」
うーん、いまいち展開が読めん。そういえば、こいつら魔法は使ってたけど剣みたいなのは持ってなかったな?入門的な銅の剣とかないのかしん?お金に銅貨があるって事は金属はあるよね。おいらのナイフも金属だし。まあそのうちにわかるからいいか。
能天気なカツヨリであった。
宴会になった。シルバーウルフの肉は美味かった。海の近くだからなのか塩が効いている。あと胡椒も。調味料は地球と同じなのかもしれない。宴会ではみんな酒を飲んでいた。さて、16歳は飲んでいいのだろうか?と思っていたら酔っ払ったリリイが絡んできた。
「何だカツヨリ、飲んでないじゃん。飲めないの?」
「いやそういうわけではないのだが、お酒は何歳から飲んでいいの?」
「15歳からだよ。それも忘れてるんだー、キャハッ」
何だこいつ。酒癖悪そう。リリイは放っておいて村長の元へ行ったらリコがすでに情報を入手していたようだ。なんて気の利く妹なんでしょう。妹じゃなきゃね、でへへへへ、ってそんな場合じゃない。聞きたい事が山ほどあるのだ。
「モーリさん。お忙しいところすいません。お伺いしたい事がありまして」
「おお、カツヨリ殿か。シルバーウルフを一撃で倒すとは本当に勇者の末裔かもしれんな」
「その勇者の事とか色々と聞きたい事が」
カツヨリはとにかく聞きまくった。やっぱ情報だよ、世の中を上手に生きるには。レベルはmax99まで上げることができる。魔法は通常1つの適性しか持たないが数種の適性を持つ者もいる。こういった優れた能力を持つ者は王国魔術師として優遇される事が多い。
スキルは戦う事で覚えられる。習熟度が10までいくとmaxだ。レベルが上がるとHPやMP、体力や魔力も上がっていく。鑑定というスキルは話には聞いた事はあるが持っているものは見た事がない。やっぱ鑑定はレアスキルなんだ。
HPやMPは休息する事で回復するが、ポーションなどの薬で回復する事も出来る。但し高価だそうだ。うん、なんか普通のゲームみたいだ。
武器は魔法の力を強くする杖が主流だ。まれに弓矢を持つ者もいる。ナイフや剣はこの辺では使う者はいない。剣が高価なのと魔法の方が威力があるからだそうだ。アキール町のギルドに行けば剣使いがいるかもしれない。
それとこの国では鉄が取れないそうだ。輸入に頼っていて高価なのも剣が流行らない理由かもしれない。
リコは主に地理について聞いていたようだ。だが村の誰もヤンギュー国を知らなかった。ただ言葉や文字が同じなので安心したようだ。
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