『ドジっ娘女神を救え!固有スキル 勇者の影??』 天下を取った転生勝頼が今度は異世界へ

Kくぼ

第1話 再び転生

 あれ、俺は死んだんじゃ?馬場美濃流は、天寿??を全うして病院で愛する妻に看取られて死んだはずだった。


「ここは、何処だ?やけに白い空間だけど天国か?」


 いや、俺が天国に行ける訳がない。沢山の人を殺した。武田が天下を取る為とはいえ、歴史を変え、本当は生き残るはずの人を滅した。なぜか死後に現代に戻り、平和な生活を送る事ができた。


 視線を感じ振り返ると、美女がこちらを見ていた。なんだろう、俗にいう女神のような白いゴージャスなのに清楚な、胸の谷間を強調した服を着ているスタイル抜群の美女だった。


「お目覚めですね。美濃流様、お待ちしておりました」


「ええと、これでも経験豊富でして物分かりはいい方だと思ってたのですが、全くわかりません。ここは何処でしょうか?そして貴女は一体?」


「申し遅れました。エリアルと申します。この世界の女神です」


 エリアルはこの世界について説明を始めた。この世界を作ったのはエリアルだ。神と呼ばれる存在はエリアル一人だけ。この世界は惑星の形をしていて気候は美濃流がいた地球に似ている。海があり山があり季節もある。


「地球そっくりですね。実は未来の地球とか」


「それは違います。生命を育てると必要な物は似てくるのですよ。地球と違うところもたくさんありますよ」


 月は2つある。1日は20時間、1年は300日だそうだ。動物もいるが魔物もいる。地球では人種といったがここでは種族という区分がある。人間以外に獣人、巨人、エルフ、ドワーフがいるそうだ。他にもいるらしい、てことは鬼とか龍とかいるのかしん?


 科学は発達していない。そのかわり、魔法がある。武術と魔法の世界だそうだ。なんかよくあるやつだね、で、何で俺?また転生なの?


「美濃流様はあまり驚かれていないようですね。さすが転生経験が豊富なだけの事はありますね」


「エリアル様が地球と呼んでいる世界では異世界転生を題材にした小説が流行ってましてね、違和感がないのはそのせいかと。あと、俺は一回転生してるんで」


「今回、貴方は選ばれました」


 それアカンやつや。


「ええと、その表現は地球では怪しいやつなんですけど。ちなみにですが、異世界転生はスライムになったり、ゴブリン、魔王、勇者、賢者になったりもう出尽くしてるので流行らないかと思いますよ。出来ればご遠慮したいのですが」


 エリアルが困った顔をした。


「そういう問題ではないのです。実はこの世界は今破滅へ向かって進んでいます。魔物が生まれそれを食し人が栄え、その人を魔物が殺す事により人が減りという何といいますか、生命力循環システムが上手く回っていたのですが、バランスが崩れてしまいました。原因はわかりません」


「唯一の神であるエリアル様でもわからないのですか?」


「実は神といってもそう、何といいましょうか。貴方のわかる言葉で言いますとこの世界ではMPのような物がありまして。下界に影響を与えるにはMPを使うのです。そしてこのMPが無限にあるわけではなく、使えば減りますし、回復するには時間がかかります。500年程前に突然私のMPが無くなりまして、そのショックで200年程寝ていたようです。目覚めると世界が変わっていました。その原因もわからず、その後神殿を通じて下界を見る事は出来たのですが、原因を探るにはほど遠く。このままではMPが溜まる前に世界が滅亡してしまいそうなのです。それでこの500年で溜まったMPを使って貴方様を転生させました」


 何でそこまでして俺なの?


「500年分使ってわざわざ俺を?ただの俗物ですよ俺は」


「実はMPを使って予知眼という魔法を使いました。そこで貴方を見つけたのです。転生に適合し世界を変える力を持つものとして」


 おいおい、なんだそりゃ。確かに俺は武田勝頼として天下人になった。武田幕府を作り東照権現かつよりんZという神として神社にも祀られた。それができたのは現代の知識と歴史を知っていたからだ。戦国ではあり得ない空からの攻撃や早い段階で徳川家康を葬った方がいいとか知識があったからこそできた。そう、知ってなきゃできなかったのよ。でもその前世の経験ってこの異世界では何の役にも立たねーんじゃね?エリアルは俺の顔を見て心を読んだように、


「私の予知眼は間違えません。全てを貴方に託します。貴方の記憶、今までのスキルはそのまま残ります。魔法は覚えていただけねばなりませんが、美濃流様ならすぐにコツをつかめると思います」


「今までのスキルですか?俺のスキルって?それと魔法について教えてください」


「スキルとはその人の固有の能力です。色々なスキルがありますのでそれは徐々にわかってくると思います。中にはその人にしかないユニークスキルというのもあります。美濃流様はユニークスキルの最上位であるアルティメットスキル『剣神』をお持ちです。魔法ですが、火、水、木、風、土、闇、光の属性があり、人により習得しやすい属性が異なります。訓練、経験やレベルが上がると上位の魔法を覚える事ができます。それ以外にも天や爆といった魔法もありますが使える人はほとんどいません」


「俺の属性は何ですか?」


「美濃流様は魔法の経験がございません。それ故に未知数です。ですが転生者の恩恵として何かがあるはずです。貴方にはこの世界で三度めの人生を送りつつ私のこの世界を修復していただきたいのです。貴方をある村に送りますのでそこからは自分の力で進んでください。貴方の年齢は16歳です。王になってもいいですしハーレムを作っても構いません。世界を救ってさえいただければ。私との連絡は色々な国に神殿がありますのでそこに行けば出来ると思います。一応貴方には私の加護が付いています。ではいってらっしゃい」


「え、それだけ?お金とか…………」


 俺は意識を失った。女神エリアルはドジっ娘、いやドジ女神だった。ステータスの見方や持ち物の説明など最低必要限の事を伝えないまま美濃流を送り出してしまった。その為に美濃流はしなくてもいい苦労をすることになる。





 どこか遠くで声がする。


「………………」


 気のせいか、いや違うな。


「おにい……」


 ん?


「起きて、お兄ちゃん」


 お兄ちゃんって誰?俺?どういう設定?

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