第507話 地上に降臨する魔王ルシファーⅡ
「なりゆき君感じた!?」
そう言って俺の仕事部屋に勢いよく扉を開けて入って来たのはミクちゃんだ。
「勿論だよ。凄いパワーだな。敷地内だろ?」
「そう! 大きいパワーが二つとS級が二つだね」
「とりあえず様子を見てみよう」
俺とミクちゃんは早速屋敷の外の庭まで出た。勿論、ランベリオン、アリシア、ベリトも気になるみたいで様子を見に来ていた。
「ナリユキ様――これは魔王と同等の邪気です」
「一体どこから出てくるんだ?」
「あそこです」
ベリトが指したのは池がある隣の場所だった。今のところ何も確認できないが――。
そう思っていると、何やら紫色の螺旋状の物体が出現した。
「凄い邪気――もしかして
ミクちゃんが恐る恐る俺にそう問いかけてきた。
「いや、違うな」
「これは完全に魔族ですね」
そう思っていると早速一人の男が現れた。
「――もしかして?」
ミクちゃんがそう呟きながら俺を見てきた。
「この感じ。あの鎧。間違いない」
「龍騎士――という事はこの人が――」
ミクちゃんがそう言おうとした時だった。
「ナリユキ閣下!」
そう言って満面の笑みを浮かべながら螺旋状の物体から出現したのはアスモデウスさんとエリゴス。そしてもう一人いる。深紅の短い髪をした少女だ。あれは一体――。
「成功したようだな。アンタが魔王ルシファーか」
「貴様がアスモデウスが言っていた人間か。成程――人間とは思えない強さだ。それにそこにいる小娘も相当な手練れだな」
ルシファーはそう言ってミクちゃんの方を向いた。ミクちゃんは焦りもず「はじめまして。ミク・アサギです!」と一礼をした。
「面白い娘だ。この私を前にして怖気づかないとは」
実際。ランベリオン、アリシア、ベリトは冷や汗を垂らしながらルシファーを見つめていた。警戒心を切らさずルシファーの出方を見ているようだった。
「もう一人。強い者がいるとは聞いていたがどこにいる?」
「デアさんの事かな?」
「そうじゃ。妾も話しか聞いておらぬから見ておきたいものなのじゃが」
アスモデウスがそう呟くと、「呼んだ?」と言いながら現れた。MPを消費する
「へえ。魔王ルシファーじゃない。初めて見るわ」
「凄いパワーだな。それに邪気も感じる――一体どうなっているのだ? ただの人間では無さそうだな」
「おかしいよ! ボクより邪気が多いなんて!」
すると、深紅髪の少女がデアに突っかかった。
「私は魔族の血も引いているし、
するとその少女は、ハンカチを噛みながらキイーと怒っている。何だろう。ランベリオンとポジションが似ている気がする。
「魔王ルシファーと、この少女がルシファーの右腕パイモンじゃ」
「慣れ合う気はないからな!」
「でも其方。美味しいものを食べたいのじゃなかったのか? ほれ、食べさせて下さいとナリユキ閣下に頭を下げるのじゃ」
アスモデウスさんはそう悪戯な笑みを浮かべながらパイモンに囁いた。
「ぐぬぬぬ……光栄に思うがいい! ボクが人間の料理を食べてやると言っているのだ! 用意をしろ!」
「偉そうだから嫌だ」
俺がそう言うと「何だとおおお!」と怒り始めるパイモン。
「いいだろう。それならこの庭を炎で燃やしてしまってもいいんだぞ?」
そう言って右手に浮いている小さい炎の球を見せびらかすパイモン。
「やれるものならやってみろよ」
「しょ――正気か!? よし!」
そう言ってパイモンは出現させた炎の球を膨張させた。しかし――。
シューと音を立てながら炎は消えてしまい、しどろもどろになるパイモン。
「ど――どうして発動しないんだ」
「残念。私のスキルで貴方のスキルは消えてしまったのよ」
ミクちゃんがそう言うとパイモンは「どういう事だ!?」と言い寄った。
「聞いた事がある。確か闇の力を寄せ付けない不思議な力があると――確か闇払いというスキル名だったな。しかし巫女の力だったはずだが――」
ルシファーとパイモンには俺達のステータスは視えていない。またミクちゃんもルシファーとパイモンのステータスは視えていない。俺は
「ルシファーさん正解! 闇払いです! 貴方達のような強大な邪気を持った方々がスキルを発動すると、私が近くにいる限りスキルは発動しません」
「な……それではお前に魔族は勝てないじゃないか!」
「例外はあるかもしれないけどそういう事だよ。ほらもう一回ちゃんとお願いしたらどうかな? 何なら私もとっておきの美味しい料理を作ってあげるよ」
ミクちゃんがそう言うとパイモンは何かを諦めたようだった。そして小さな体をプルプルと震わせながら――。
「お腹減ったから美味しいもの食べさせて」
それを聞いたミクちゃんは満足気な表情を浮かべていた。まるで宿題を嫌がる子供に、宿題をやると言わしめたような達成感だ。何その清々しい笑顔。
そして思ったより魔王ルシファーとその右腕パイモン。案外緩いな。特にパイモンは俺からするとゆるキャラにしか見えない。
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