第436話 冥王ゾークⅡ

「来るが良い」


 俺はゾークにそう言われたので躊躇なく突っ込んだ。勿論、俺の腕には殺戮の腕ジェノサイド・アームが装着されているので縮地を使って一気に距離を詰める。


「なに!?」


 と、声を上げていたゾーク。思ったより俺のスピードが速いと感じたのだろう。俺はそのまま天を穿つ者エンデュアーのトリガーを引いた。


 黄色で極大の光がゾークに襲い掛かった。しかし不思議と手ごたえは無い。絶対にガードされているな。


「――いっ!?」


 俺は自分が撃った光弾こうだんがどうなったのか理解できた。攻撃が無力化されている。俺は一旦縮地を使って後退することにした。


「ナリユキ殿! 剣で攻撃を吸い込まれているぞ!」


 そう忠告をしてくれたのは青龍リオさんだ。確かにみるみる吸い込まれている。魔法みたいな大剣だな。


「まさか天を穿つ者エンデュアーが吸い込まれているとはな」


「我にそのような攻撃は効かぬ!」


 そう言ってゾークは高笑いをしていた。色々と試すしか無さそうだな。


 俺は一旦天を穿つ者エンデュアーをホルスターに収めた。そして創造主ザ・クリエイターでフルオートショットガンAA-12を取り出し、再びゾークの懐へと入った。


「攻撃がワンパターンだな!」


 そう言ってゾークは大剣を振り下ろしてきた。そう来ると思ったよ。


 俺は再び天を穿つ者エンデュアーをホルスターから取り出した。そして弾を発射した。これで俺が仮に間違っていても、格上という訳ではない筈なので、致命傷を負う事はないだろう。


 ガキイン――。


 金属音がそう響いた。俺の目に映っているのは体勢を崩したゾークだ。


「何!?」


 ゾークがそう驚いた表情を浮かべている間に、AA-12をぶっ放した。相変わらず凄い重低音だなと思いつつも、パッシブスキルで強化されている威力は絶大だった。体勢を崩して後ろにのけ反ったゾークに、合計6発の散弾が命中。直撃した箇所からは紫色の血が噴き出していた。


「ぐぬううう……貴様分かっていたのか」


 とか言いつつも、俺が負わせたダメージはみるみると治っていった。


「別に分かってやった訳じゃないよ」


「なかなかイカれた人間だな」


 冥王にイカれてるなんて言われるのなかなかヤバいな。


「あれ? どういう事ですか?」


「妾も意味がよく解らんかったのじゃ。青龍リオは理解できたのかのう?」


「そうだな。結論から言うと、ナリユキ殿は攻撃をしようとしているときであれば、天を穿つ者エンデュアー光弾こうだんを吸収されずに済むのでは? という仮説を立てたのだ」


「確かに攻撃時も吸収する能力って珍しいですもんね。それにナリユキ君は最悪攻撃を受けることがあっても、死にはしないから失敗覚悟で試したんですね。斬撃無効はあるけど、同じZ級なので超越者トランセンデンスを持っている可能性もあるし」


「そういう事だな」


「でも不思議じゃ。それならばわざわざ天を穿つ者エンデュアーを仕舞う必要は無かったじゃろう?」


「恐らくだが、一度収める事によって天を穿つ者エンデュアーでの攻撃を諦めたというアピールだったのだろう。あのフルオートショットガンを持つ事によって、今からあのショットガンで攻撃を仕掛けるように見せて、天を穿つ者エンデュアーを放ったのだ。当然、天を穿つ者エンデュアーの方が威力は上なので、意外性を突かれたゾークは、攻撃に耐えきる事ができずに、ガードが出来たものの体勢を崩した。そして、ナリユキ殿のショットガンでダメージを負わせることができたのだ。当然ながら同じ自動回復を持つ者同士で、実力が同じくらいなら、傷をたくさん負わせた方が勝つからな。自動回復とは言え、何度も修復していると回復速度が遅くなり、体力消耗が激しくなる」


「ほう――流石ナリユキ閣下じゃの。それを理解できている青龍リオの洞察力も素晴らしいがのう」


「当り前だ。余は龍だぞ。ナリユキ殿と言えど、まだこっちに来て間もない。百戦錬磨の余が負けるわけにはいかんだろう」


「それもそうじゃな。しかし、たった1年経たないうちであそこまで考えて戦えるのは凄いのう」


「それはそうだな。地頭の良さとカルベリアツリーのダンジョン攻略での戦闘経験と、知性・記憶の略奪と献上メーティスで奪った戦闘経験が生かされているのだろう」


「魔物の討伐数はナリユキ殿もミク殿も世界トップクラスじゃからのう」


「討伐数だけは私も自信ありますよ! 何度も潜っているので!」


「そうでなければ、その有り得ないくらいのスキル数は無いからな。2人共恐れ多い」


 流石、青龍リオさん凄い洞察力だ。全部当たっている。


「次は我から攻撃を行うぞ?」


「おう。いつでも来い」


 俺がそう言うとゾークは大剣を縦にして構えた。大剣がバチバチと漆黒の稲妻を走らせている。また、信じられないくらいのパワーを感じ取ることができる。その影響もあり、地震のような強い揺れが起きていた。


「いきなりMPを消費するのかよ」


「そうだ。覚悟はよいな?」


「来いよ」


 俺とゾークの間合いは10m。S級以上の実力者であれば一気に距離を縮める事ができる距離だ。常人であれば目で追うのは一苦労だろう。しかし今の俺には天眼がある。どんなスキルが発動しようが見極めてやる――。


「疾っ!」


 ゾークが繰り出して来た技は、黒い稲妻を身体全身に帯びながらの光速移動での突き攻撃だ。大剣を両手で持ちながら、まるで闘牛のように突進して来た。攻撃そのものはシンプルだが、こんなの当たったらS級の人は確実に致命傷だ。何なら前の俺なら龍騎士にやられたときのように、反応すらできずに一撃で殺されているだろう。


 面白いスキルだっ――!


 

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