第436話 冥王ゾークⅡ
「来るが良い」
俺はゾークにそう言われたので躊躇なく突っ込んだ。勿論、俺の腕には
「なに!?」
と、声を上げていたゾーク。思ったより俺のスピードが速いと感じたのだろう。俺はそのまま
黄色で極大の光がゾークに襲い掛かった。しかし不思議と手ごたえは無い。絶対にガードされているな。
「――いっ!?」
俺は自分が撃った
「ナリユキ殿! 剣で攻撃を吸い込まれているぞ!」
そう忠告をしてくれたのは
「まさか
「我にそのような攻撃は効かぬ!」
そう言ってゾークは高笑いをしていた。色々と試すしか無さそうだな。
俺は一旦
「攻撃がワンパターンだな!」
そう言ってゾークは大剣を振り下ろしてきた。そう来ると思ったよ。
俺は再び
ガキイン――。
金属音がそう響いた。俺の目に映っているのは体勢を崩したゾークだ。
「何!?」
ゾークがそう驚いた表情を浮かべている間に、AA-12をぶっ放した。相変わらず凄い重低音だなと思いつつも、パッシブスキルで強化されている威力は絶大だった。体勢を崩して後ろにのけ反ったゾークに、合計6発の散弾が命中。直撃した箇所からは紫色の血が噴き出していた。
「ぐぬううう……貴様分かっていたのか」
とか言いつつも、俺が負わせたダメージはみるみると治っていった。
「別に分かってやった訳じゃないよ」
「なかなかイカれた人間だな」
冥王にイカれてるなんて言われるのなかなかヤバいな。
「あれ? どういう事ですか?」
「妾も意味がよく解らんかったのじゃ。
「そうだな。結論から言うと、ナリユキ殿は攻撃をしようとしているときであれば、
「確かに攻撃時も吸収する能力って珍しいですもんね。それにナリユキ君は最悪攻撃を受けることがあっても、死にはしないから失敗覚悟で試したんですね。斬撃無効はあるけど、同じZ級なので
「そういう事だな」
「でも不思議じゃ。それならばわざわざ
「恐らくだが、一度収める事によって
「ほう――流石ナリユキ閣下じゃの。それを理解できている
「当り前だ。余は龍だぞ。ナリユキ殿と言えど、まだこっちに来て間もない。百戦錬磨の余が負けるわけにはいかんだろう」
「それもそうじゃな。しかし、たった1年経たないうちであそこまで考えて戦えるのは凄いのう」
「それはそうだな。地頭の良さとカルベリアツリーのダンジョン攻略での戦闘経験と、
「魔物の討伐数はナリユキ殿もミク殿も世界トップクラスじゃからのう」
「討伐数だけは私も自信ありますよ! 何度も潜っているので!」
「そうでなければ、その有り得ないくらいのスキル数は無いからな。2人共恐れ多い」
流石、
「次は我から攻撃を行うぞ?」
「おう。いつでも来い」
俺がそう言うとゾークは大剣を縦にして構えた。大剣がバチバチと漆黒の稲妻を走らせている。また、信じられないくらいのパワーを感じ取ることができる。その影響もあり、地震のような強い揺れが起きていた。
「いきなりMPを消費するのかよ」
「そうだ。覚悟はよいな?」
「来いよ」
俺とゾークの間合いは10m。S級以上の実力者であれば一気に距離を縮める事ができる距離だ。常人であれば目で追うのは一苦労だろう。しかし今の俺には天眼がある。どんなスキルが発動しようが見極めてやる――。
「疾っ!」
ゾークが繰り出して来た技は、黒い稲妻を身体全身に帯びながらの光速移動での突き攻撃だ。大剣を両手で持ちながら、まるで闘牛のように突進して来た。攻撃そのものはシンプルだが、こんなの当たったらS級の人は確実に致命傷だ。何なら前の俺なら龍騎士にやられたときのように、反応すらできずに一撃で殺されているだろう。
面白いスキルだっ――!
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