第396話 掘り出されたアイテムⅠ

「これで全部だね」


 ミクちゃんがそう満面の笑みを浮かべていた。眩しい――眩しすぎる。


「結局3日かかったな。しかし有力な情報を手に入れることができた」


「拙僧達がやろうと言い出したのに手伝ってもらってすまない。感謝致す」


「いいって。それにしても凄い瓦礫の量だな。これ誰が片付けるんだ?」


 カリブデウスがその台詞に確かに――と思った俺。誰かアクティブスキルを使って、このアルボス城の瓦礫を消し飛ばしてくれないかな?


「まあ、後片付けは任せた」


「放っておいてもいいだろ。俺はやらん。あくまで俺はナリユキ閣下に助力したいと思って動いているからな」


「拙僧としては知らないフリをするのは気が引けるが――」


「まあいずれにしても後で考えよう。今は情報を整理するのが優先だ」


「俺もそう思う」


「そうだね」


 カリブデウスの意見に俺とミクちゃんが賛成すると、カルディアとスカーも「ああ」と頷いた。情報源となる書物と物を洋館に持ち帰り机の上に広げた。


 置かれたものは以前と同じく本、巻物、日記。それに殺戮の腕ジェノサイド・アーム、カード、指輪、首飾りネックレス、杖、魔石などのアイテムだった。何でこれらを選んだかと言うと、殺戮の腕ジェノサイド・アームと魔石は選んで当然だが、それら以外のアイテムには、何やらものすごいエネルギーを感じる。特に、結界などを解くことができるミクちゃんは、これらのアイテムにものすごい違和感を覚えたらしい。


「おさらいだ。まずはこのカードだ」


 俺はそう言ってカードを広げた。言ってしまば、タロットカードみたいなもんだが、このカードの枚数は合計で 

26枚。そしてこのカードに描かれている絵のほとんどが貴族のようだ。


「で、これを見つけたときにも言ったように、この9枚のカードはバーナム大聖堂にいた9人だな。Qキューことストーク・ディアン公爵と戦闘を行った場所だ」


「そうだ。間違いない」


「それに、他の3つの大聖堂の人間も組み合わせると――」


 スカーがそう言ってカードをさらに俺の所へ差し出して来た。合計で20枚だ。


「まあ、数が合わないんだよな。この20人が3人が訪れた大聖堂を建造した創世ジェスの幹部という事は間違いない。それに有名な貴族もいるから、その血縁関係を洗い出すこともできる」


「カードの右下に名前が書いているもんね。これは凄く大きな手掛かりだよ。でも、何でわざわざLエルは自分が所属している組織の手掛かりを残すようなことをしたんだろ?」


「ミク・アサギの言う通りだな。理由は分からないが、アルボス城にあったこのカード26枚で、幹部の正体に一気に近付くことができる」


 そうカードの右下には名前が書かれている。しかも全てのカードに書かれているファーストネームが、A~Zのアルファベットで表すことができる。さらに言うのであれば、Rアールこと、レベリオン・アルヴァーナ・ノイザーのノイザーや、Iアイこと、イグニス・フランベールのフランベール――つまり、ラストネームが既に名前を認知している幹部の人名と同姓なのだ。このカードを見ると、ファーストネームのイニシャルで、アルファベットのコードネームを授けれられているのは間違いない。しかしQキューことストーク・ディアン公爵だけがどうしても謎だ。やっぱり普通に考えるとSなんだよな。


「まあ、ところどころ人間じゃない人もいるようだけけど、とりあえず人間のラストネームは全員控えたね」


「シルファ、スペンサー、メイソン、ベルベットジョー――この辺りの貴族は拙僧も認知している」


「まあ、俺は全然知らないけどな」


 本当に興味無いんだなカルディアって――何で魔物のスカーの方が物知りなんだ。まあ今更だな。


「これは大きな前進だけど、この指輪、首飾りネックレス、杖とかは本当に何だろうね? 何かに使われていたのかな?」


「もしかしたら武器じゃないのか? カードの中にいる貴族が持っているくらいだしな」


 カルディアの言う通り、ミクちゃんが言った3点のアイテムはカードの中の貴族が所有している物と酷似していた。ただ錆とかはあまり目立たない。貴重に保管されていて手入れがされているようだった。状態が綺麗なので、カードの中の貴族が持っていた物と同じ物では無いとは思うが――。


「ねえナリユキ君――この人よく見たらストーク・ディアン公爵に似ていない?」


 ミクちゃんがそう声を漏らした。


「似ている? ちょっと見せてもらってもいい?」


 ミクちゃんが渡してくれたカードはシレークス・ヴァレンタインという名前の貴族だった。当然、この人のイニシャルは恐らくSエスだったのだろう。少し面長ではあるけど、目元や口などの顔のパーツはディアン公爵とそっくりだ。


「スカー。ヴァレンタインという貴族は知っているか?」


「いや――? 聞いたことはないな。名前の雰囲気からすると、東の国の名前の気がするから、青龍リオ・シェンラン殿に訊けば何か分かるかもしれないぞ?」


「そうか――これだけ似ていたら、ストーク・ディアン公爵は、このシレークス・ヴァレンタインって人の家系だと思うけど」


「単純に親戚とかだろうね。深い意味は無いと思うけどな~」


「親戚とかでこんだけ似るか? 直系だと思うぞ?」


「確かに――そうか。実際にいとことか親戚とかだと別に似てるとも思わないもんね」


「そうそう。とりあえずこのヴァレンタイン家については青龍リオさんに訊いてみるか」


「そうだね!」


 と、どこか嬉しそうなミクちゃん。もしかして俺と旅行できると思っているんじゃ――?

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