第310話 裏ルートⅠ
「メルム・ヴィジャという名前か。いいだろう。余の
「ありがたき幸せ」
メルム・ヴィジャはそう言って
「いいだろう。認めてやる」
「流石別次元の魔物だな」
「あのメルム・ヴィジャもこうもあっさり」
ランベリオンとフーちゃんはそう感心していた。
「ほう。
アヌビスはそう言って呑気に高笑いをしていた。もはや私達の事なんて置いてけぼりだ。
「で、サウスよ。100年程姿を見なくなったと思えばここで何をしているのだ?」
「実はここで守護者の任を受けておりまして。ノース、イースト、ウエストも各方角の守護者として、この島の安全を守っているのです」
「別に戦う必要ないだろう――な?」
私とランベリオンにそう同意を求めて来た。「ま――まあ」と微妙な反応しかできない。
「まあ元気ならいいが――それよりこの島に国があると聞いてな――」
「それ我等も探しているのだ。しかしまあ
「助けに来たつもりはないぞ。ただまあ目的地が同じなら問題無い……」
アヌビスはそう言うなりサウスの事を睨んだ。
「どうやらその裏道があるらしいな。余の魔眼は誤魔化せんぞ?」
そう言ってサウスにじりじりと詰め寄る。
「それはいくらアヌビス様であろうとお伝えすることはできません」
「何でだ? まさか余に歯向かって殺されたいのか?」
アヌビスはそう言ってサウスに並々ならぬ
「つまらん」
アヌビスはそう言ってサウスに
「アヌビスよ。息が詰まる」
「それは悪かった
「まあ――アヌビス殿が協力してくれるのであれば百人力だ。実は少々事態が変わっていてな」
するとアヌビスが目を光らせた。
「話せ」
「すまない。実はナリユキ殿に依頼されていた任務なのだが、
「そうなのか?」
「はい。この
「それは気の毒だったな。余のいないところで喧嘩するがよい」
あ――そこは自由でいいんだ。案の定メルム・ヴィジャの目光っているし。本当にそういうの止めてほしい。
「そこは多分余が探している所と同じだな」
「どこを探しているのだ?」
「ペルソナという国だ」
「全く同じだ。この国ではその場所は
ランベリオンがそう言うと、アヌビスはもう一度サウスの方を見た。サウスは黙ったままで目が泳いでいる。次はメルム・ヴィジャを見た。すると、メルム・ヴィジャはコホンと咳払いを行った。
「我でよければ案内致しましょう。この島の地面のなかを移動する我はこの島の場所ならどこでも分かります。勿論裏道も――」
「それは頼もしい。是非案内してくれ」
「待てメルム・ヴィジャ! それだけはならん!」
と、言ってサウスがメルム・ヴィジャを止めた。この慌てっぷりからすると
「ほほう――」
アヌビスが意地悪な笑みを浮かべながらサウスの事を睨めつけていた。目を細めているけど、眼光は物凄く鋭い。
「もしやサウスは
「怪しいな」
「怪しいわね」
ランベリオン、フーちゃん、私の順番でそう言うとサウスは冷や汗を流し始めた。まあ勿論焦ってしまう大半の理由はアヌビスだろうけど。
「メルム・ヴィジャ。貴様が
サウスがそう言った瞬間だった。サウスはお腹を押さえながら倒れてしまった。
当然、私もランベリオンもフーちゃんも絶句だ。
「コイツを縄か何かで縛っておけ。話が進まん」
サウスの鳩尾にアヌビスの金色の杖が入ったのだ。これもまた一発KOだ。確か、タテワキさんが言うには
アヌビスの指示通り、その辺にあるツタなどを使ってサウスの体をグルグル巻きにして拘束した。でも、こんなんじゃ直ぐにほどかれると思うんだけどな。
「我に任せよ」
そう言って前に出て来たのはメルム・ヴィジャだ。何をするのだろう? と思って眺めてみると――。
「我は自然を操る力を持っている」
メルム・ヴィジャはそう言って、サウスがもたれかかっている樹に手で触れた。
「ご主人様。ご指示を下さい」
何と樹に目と口が付いて話を始めた!
「す――凄い」
「樹が喋った!」
これにはランベリオンもフーちゃんも驚いている。一方アヌビスは満足気な表情を浮かべていた。
「その前にいる守護者を縛っておけ」
その指示は意外だったのだろうか。樹は少し驚いている様子だった。
「か――かしこまりました」
そう言って樹は自分の枝を使って器用にサウスを縛り上げた。
「何でランベリオン達をそれで捕えなかったのだ?」
私も思っていた疑問だ。それならばすぐに殺せただろうに。
「
「成程」
「我が教えてやるぞ!」
フーちゃんが頷いた後、ランベリオンがガハハと豪快に笑っていた。しかし、陽気なランベリオンに対してメルム・ヴィジャが向けているのは殺意だ。何ともまあ凄いギャップ。
「さあ。もういいだろう。メルム・ヴィジャ案内しろ」
「かしこまりました。こちらへ」
こうしてアヌビスの指示でメルム・ヴィジャの後についていく事なった私達。冷静に考えたら凄いパーティーだ。人間の私、
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