第236話 脱出作戦Ⅳ
そう思っている時だった。突如、上空でピカッと太陽より眩しい光が私達の部屋に降り注いだと同時に、レイとスーの姿が無くなった。
「ま――眩しい。しかしどういうことでしょうか?」
クロノスさんがそう目を瞑り私に問いかけてきている。うわあ眩しそう――。かくいう私も目が茶色だから
お日様は基本的に眩しいんだけどね――。
そう思っていると、ドーンという激しい衝撃音が外で鳴った。
「――一体何が起きているの?」
「恐らく
「
「と、言うと?」
「あのワイズって人、驚くことに火、水、土、雷、風、闇、光の基本属性全て扱えるんですよ。それに加えて死属性まで――」
「思った以上の化物ですね――」
クロノスさんはそう冷や汗をタラっと流していた。
「とりあえず外に行って様子を見ましょう!」
「そうですね!」
そうなると話は早い。クロノスさんが吐いた
壁は溶けているけれどまだ熱いと思うんだけどな。炎まだ残っているし。
「クロノスさん、
「大丈夫ですよ」
クロノスさんは躊躇なく人が1人分程通れるようなサイズの穴の中を潜った。何か壁の開通ってFPSゲームみたいだなとか思いつつも潜ると――。
「あれは?」
「レイとスーですね」
寒空の下で降りしきる雪は地面を白に塗り替えていくロマンある結晶体だ。そんな結晶体が作り上げたフカフカの白の地面にレイとスーが埋もれていた。目を瞑っているから気絶しているのかな?
「一体何が起きたのでしょうか?」
クロノスさんは怪訝な表情で仰向けで、体の所々に火傷を負って埋もれている2人を眺めていた。
「空――」
「どうかされましたか?」
私が顎に手をついてそう考えていると、クロノスさんがそう問いかけてきた。
「分かったかも――」
「何がですか?」
「この2人が気絶している理由」
「それは何故なのでしょうか?」
半ばワクワクしながら前のめりになっているクロノスさんちょっと可愛いんだけど。
「落ちて2人が気絶している理由は
「成程。空にいても呼べるんですね」
「
「もしかして2人が火傷を負っているのはワイズの攻撃を代わりに受けさせたのでしょうか?」
「あ……可能性あり得ますね……」
ヤバいな
「この際なのでこの2人も
「お願いします」
私がそう言うとクロノスさんはまずレイに触れた。一分程すると次はスーにも触れた。
「ふう――」
クロノスさんは一息ついた後、お城の上の方を眺めていた。
「どうでしたか?」
「ナリユキ様は最上階にいます」
「どの辺りですか?」
「ちょうどここの塔の最上階の部屋のようですね」
クロノスさんが指を指したところは私達の目の前にある塔の最上階とのことだ。
「分かりました行きましょう」
私がそう言って言って
「何気に初めて見ますね。魔族で翼を生やしているところはベリトさんしか見たこと無いので」
「確かにミク様の前で展開するのは初めてですね」
「ちゃんと黒い」
「魔族ですから。さあ行きましょう」
クロノスさんはそう言って目標の場所を指す。
「はい!」
私達はナリユキ君がいる部屋の前の来た。勿論、窓が無いので本当にこの場所にナリユキ君がいるかどうかなんて分からない。
だから、私は結界が張られているかどうかを確かめてみた。すると案の定結界は張られていたので私はその結界を解除した後、光り輝くオーラを指に宿しながら――。
「
私が外壁に向かって十字を刻み込むと壁が十字の大穴を開けた。中を覗くと人影のようなものがあった。壁にもたれ掛かっているのは――。
ナリユキ君だ――。
でもそこにはいつものナリユキ君の姿は無かった。あるのは圧倒的な悲壮感。顔面蒼白になっていて少し痩せている。そして一番変わってしまったのは笑顔も余裕も無い事。クロノスさんと別れてからまだ数日しか経っていないのにも何があったんだろう――。
ナリユキ君は身体をブルっと震わせて、ゆっくりこっちを向いた。
「ミクちゃん……?」
私がナリユキ君がこっちに気付いてくれたことに感動すら覚えた。
「今から助けに行くからね」
ナリユキ君は嬉しいような悲しいようなそんな複雑な表情をしていた。そして次に放たれた言葉は――。
「来ちゃ駄目だ! マカロフ卿が来るぞ!」
ナリユキ君の決死の訴え――けど私はその訴えを無視した。
「私はなりゆき君が傍にいてくれないと駄目なんだ。だからごめんね」
私がそう言うととても悲しそうな表情をして――。
「クロノスが殺されたんだ! 皆も俺のせいで……」
目に涙を浮かべながら歯を食いしばって床を何度も殴るナリユキ君。一体何があったんだろう――。クロノスさんはここにいるのに――。
「ナリユキ様! 私は生きています!」
私の後ろに隠れていたクロノスさんは、ナリユキ君にそう訴えた。
「へ?」
そう呆然とナリユキ君がしているなか、革靴の音が鳴り響いた。
「まさか壁を破って来るとはな――そうか。空を飛べたのだったな」
煙を散らしながら現れたのは冷たい眼光を放つマカロフ卿だった――。
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