第170話 交流会Ⅰ
部屋の中に入ると、20人のメイドが「いらっしゃいませ」と心地良く迎えてくれた。結婚式場のようなパーティー会場に円卓のテーブルがいくつも並べられている。
俺達以外にも様々な人がいる――。とは言っても、煌びやかな衣装を着ていることから、どうやら貴族のようだ。マーズベルは魔物だらけで、貴族なんていないから新鮮だったりする。
彼等はこちらに気付き俺達の方へ歩み寄って来た。
「皆様いらっしゃいませ。
「本日は皆様のお顔を拝見できたこと、大変光栄でございます。ここにいる者達も、この貴重な場に同席させて頂きましたこと、喜ばしいことだと感じている事でしょう。さあこちらへ」
と、ありがちな礼をされた。周りを見渡してみると、皆S級やA級の実力者ばかりだ。勿論中には4,000越えもいるわけだが、貴族と言っても人間だけではなく、
拍手で迎えられながら席に着くのだが、その拍手をしている会場全員の表情は誰一人として濁っていなかった。
「ナリユキさん、あっちの席らしいのでまた後で」
「ああ」
どうやら付き人だけの席があるらしいので、俺はミクちゃんとしばらく離れることに。なので、ここの席は全員国主という席だ。他の人からするとものすごく入りづらい空気だろう。俺が部下なら極力近寄りたくない。
テーブルの上に置かれているのは、怪鳥の丸焼き。小型の土鍋に入っているテールスープ。鷹の爪のような物を添え、白ワインのソースをかけた白身魚やサラダなどの様々な料理だった。
席に着いたのは、俺を含めた
「ナリユキ。もう、いつもの呼び方でいいよ」
そう言ってきたのは、隣に座っているルミエールだった。
「そうか。カーネル王って慣れると呼びづらいんだよな」
「なんじゃ? 其方等はお互いに名前で呼び合っているのか?」
「はい。私はルミエールと呼んでいます」
俺がそう答えると「ほう」と何か納得したような表情を、アスモデウスさんが浮かべていた。
「ナリユキ殿もカーネル王も一気に距離を縮めたのだな」
「そうですね。ナリユキとは2人で飲んだので。日本酒というお酒を出されたのですが、爽やかな喉越しで美味しかったですよ」
「まあ、途中で爆睡していましたけどね」
俺がそう付け加えると「ナリユキ~」と袖を引っ張って来た。
「ほう。カーネル王が酔い潰れるとはとは珍しい。
レンファレンス王はそうルミエールに意地悪な表情を見せている。
「潰れたら。ワシが引っ叩くがな」
そう言った後に豪快に笑うヴェストロさん。そのような談笑を行っていると、
その呼吸音と共に静まる会場。
「本日は、
と、言っているが
「また、この機会に顔を出してくれた貴族達。そして準備をしてくれた余の部下達よ。諸君らにも感謝致す」
すると貴族達とメイドの皆が
「この場では我々の国が、他国と交流を深めるための食事会だ。各国から来てくれた皆は存分に楽しんでほしいということと、我が国の者達はくれぐれも粗相のないようにしてほしい。いつもならこのような形で終わるのだが、今回は皆に紹介しておきたい人物がいる。ナリユキ・タテワキ閣下、ミク・アサギ殿。前へ」
「私も?」
と戸惑っているミクちゃんは、ドレス姿でもなく、いつもの戦闘服なので、「これでいいのかな~」と不安を吐露していた。
「他の付き人も戦闘服だから気にするな」
「そうかな。別にいいならいんだけど」
小声で話しながら
「ここに立つ青年と少女は新国マーズベル共和国の主と国民だ。ここに出た時点で試しただろうが、
すると、貴族達はどよめいていた。やっぱりそうなのか! や女性の憧れね。などの声が上がっていたのだ。
「軽く自己紹介をしてくれ。まずはミク殿から」
そう言われて緊張気味なミクちゃん。動画配信者といえど、貴族達の前って緊張感が違うからな。
「私はマーズベル共和国の主、ナリユキ・タテワキ閣下の御側を務めさせて頂いておりますミク・アサギと申します。名前でお気づきかもしれませんが、転生者ということもあり、まだまだこの国について知らないことばかりなので、ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます」
ミクちゃんがそう述べて頭を下げると会場が拍手の音で包まれた。しばらくして止み、次は俺の番だと意気込んだ。
「私はマーズベル共和国の主、ナリユキ・タテワキと申します。いきなりぽっと出の若造が生意気な! と思われる方もいるかと思いますが、私は一人でも多くの人によりよい人生を歩んで頂きたいと思い、ここにいるミク・アサギと
俺がそうやって頭を下げるとミクちゃんと同じく拍手で祝ってくれた。しかし、
「遜りすぎだ」
と、一言貰った。いや、マジで俺もこういうの慣れていないんだって。別に丁寧語でいいじゃんって思った。
「挨拶は以上だ! 皆の者楽しんでくれ!」
その合図で皆はグラスを天に掲げていた。そう考えると思う。
「乾杯って便利だな」
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