第141話 激突Ⅱ
「ランベリオン。面倒くさいことになったね」
「そうだな。だがしかし、予測できていたから問題はない」
「いや問題あるでしょ。ボクのMPめちゃ削られるんだけど。それに癒えているとはいえ、このお兄さん守らないといけないし」
「だな」
「ランベリオン様、どうされますか?」
「こっちの兵力が5,000に対して、あっちの兵力は50,000ですよ?」
そう。我等が越えようとしている丘に、立ちはだかるのは帝国軍と反乱軍の軍勢だ。
そして、マカロフ卿のスパイは1人や2人の話ではなかったらしい。代表格で言うと、反乱軍の第3兵長のクラッツという男性と、第4兵長のイーナという女性だ。当然、兵長がスパイなのだから、部下も大量にいるから反乱軍に紛れ込んでいた兵力はおおよそ1/5程だったらしい。
「まさかこれほどとはね」
ラングドールはそう言って馬車から降りようとしていた。
「ラングドール様は下がっていて下さい。私達が何とかします」
そうラングドールを止めに入ったのは、アジト兼酒場を経営していたティラトというナリユキ殿くらいの年齢の男性だった。彼は重症だったが、ネオンの
「聞け! 帝都から出ることは大罪だ! 貴様等が反乱軍という罪があり、そのうえにこの帝都から抜け出すということを目論んでいる! これは即ち、我々アードルハイム帝国軍第4騎士団が、貴様等の首をこの場で刎ねるということになる! 無論、貴様等を従えるアードルハイム帝国軍第5騎士団団長、ヴェルナー・リベリア・ラングドールも同様だ。貴様は逆賊として、このアードルハイム帝国軍第4騎士団団長、ノリーブ・ラドクルスが処す!」
その号令を両脇でニヤニヤと、得意気に笑みを浮かべるクラッツとイーナ。そして、他の兵は「オー!」という声をあげて士気が高まっている。一方、こっちの兵は圧倒的な戦力差に気圧されている。
「腰抜けなかりだねこっちは」
ノアの意見は最もだが、そもそも得体の知れない我等の指示を黙って聞け。そして言った事をやれ! と言ったところで何故信じる? 人間の心は一度崩れたら脆いもので、その一瞬の不安に、彼等はぬるっと入って来たのだ。そうなれば、無理だ勝てない。寝返ったほうがいい! という不安に陥る。
「皆が不安になっている。しかし今の私の状態では――」
ラングドールも少し不安に陥っているようだ。それもこの兵力差なら無理もない。
「案ずるなラングドール。我に任せておけ。
我がそう言うとラングドールは我の顔をジッと眺めて来た。
「ノアよ。こういうときは我等が先陣を切れば士気は上がるものなのだ」
「格好いいこと言っているけど、ボクはランベリオンの事ギャグ要員として思ってないからな」
「ぬ。ならば示してやろうではないか。少し高みの見物をしているといい」
「OK」
「私の存在を忘れるなランベリオン。暗殺が得意だが、派手に暴れるのはもっと得意でな」
そう言った転生者のクリンコフは体がみるみる巨大化していった。どこまで伸びるのだろうか。そう考えていたら、身長は20mほどになっていた。これが彼のユニークスキル、
「俺も最近、
そう言ったノーディルスは
我も
この変身によって味方の兵士達の士気は徐々に高ぶっていた。
「聞け! 我等同胞達よ! うぬ等が成し遂げることができなかった未来を、我の国の主であるマーズベル共和国のナリユキ・タテワキ閣下が果たそうとしてくれている! 本来であればこの問題はうぬ等が処理すべき問題である! なのに、他国の人間に、避難しろと言われて悔しいとは思わないのか! 恥ずべきことだとは思わないのか! 何の為に作戦を立ててきたとは思わないのか! うぬ等は兵士だ! 自分の信念の為に反乱軍に入隊したのだろう? この国を変えなければならないと思ったのだから立ち上がったのだろう? なら、今この場でもその力は存分に発揮できるのでは無いのか!? 兵力の差など関係ない! 1,000年以上人間に味方をしてきた
その我の号令に兵士がザワザワとし始めた。確か昔の書物で読んだことがあるが、この国ならではの面白い言葉があったな。確か――。
「恐れるな! うぬ等の胸にはこう刻まれているはずだ!
どうやら合っていたらしい。兵士の士気は一気に高まった。ラングドールはポカンとして「凄い」と声を漏らしていた。
「凄いじゃんランベリオン」
ノアからそう褒めてもらったのは、我にとっても大変喜ばしい事だった。
「行くぞ。皆」
我の言葉に、ノーディルス、ネオン、クリンコフが頷いてくれた。久々の大暴れだ。
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