第101話 始動Ⅰ
なりゆき君。昨日はなんで色気あったんだろう――。まさか見られただけで下着が洪水になるとは思わなった。バレないようにしようと思っていたのに、まさかのタイミングで触れられて確認されたし――。
そう頭のなかで悶々と昨日のなりゆき君の行動を思い出していると、私は見事にベーコンエッグのベーコンを数枚焦がしてしまった。
自分でもびっくりのミスだから、起きて様子を見に来たアリスちゃんが――。
「ミク様がお料理失敗するの珍しいですね」
「か――考え事していたらこんな事に。お恥ずかしい」
この焦げたベーコンは私にしよう。
「ナリユキさんの事呼んできてもらっていい?」
「分かりました」
アリスちゃんになりゆき君を呼んでもらい、一緒に他愛の無い会話をいつものように交わしながら、朝食を摂った。
食べ終わって身支度を済ませると、私とアリスちゃんは昨日なりゆき君に渡されたバックパックを担いで海岸に出た。
すると、ノア君もアリシアさんと一緒に待っていた。
「おはようございます。ナリユキ様、ミク様、アリス様」
「おはよ~」
2人はそう言って挨拶をしてきた。ノア君は欠伸をしながら言っていたので、まだ眠たいらしい。
「悪いな。待たせていたか?」
「いえ。今来たところなので大丈夫ですよ」
「本当にノア君?」
「本当だよ。タイミングばっちりだね。じゃあそろそろ行こうよ」
ノア君はそう言って
「2人共乗るよ」
ノア君がそう号令をかけてきたので、私とアリスちゃんは足を進めた。
「3人共気を付けてな。やばいと思ったらすぐに引き返してこい」
「ありがとうございます」
私とアリスちゃんはそう言ってなりゆき君に頭を下げた。けど、行こうとしてもこのまま行くのはちょっと寂しいなと思い、なりゆき君の事をじっと見ると――。
なりゆき君は近付いてきてくれて、ぎゅっとしてくれた。
その後は抱きしめてくれながら、右手でいつものように頭を優しく撫でてくれた。
「ありがとう」
「いえいえ」
「ふふ――。いっぱい充電できた」
「みたいだな」
なりゆき君はそう言って微笑んでくれた。そのときの表情が私にとっては堪らなく尊い。カメラの連射機能で撮ってスマホに保存しておきたいくらいだ。
「じゃあ行ってきます」
私のその声と共に
後ろを振り返ると、なりゆき君とアリシアさんが手を振ってくれていたので私とアリスちゃんは振り返す。
「ミク頼むよ」
「了解」
結界の地点に来たので、私はその結界を一瞬だけ解除し、そのまま私たちが乗っている
しばらく海が続いているけど、本当ならワイバーンや怪鳥に乗ってこの海を渡るのだろうな~。とか考えながら、澄み切った広大な海を満喫していた。
「ここの海綺麗ですね」
「そうだね。潮風も気持ちいいよね」
「ですね~」
そう2人で話していると、先頭で座っているノア君が話し始めた。
「いつもの舟は割と大きめだからMP結構使うけど、今日のは小さくて楽だよ」
「そうだよね? あの大きさって大体どれくらいのMP消費しているの?」
「普通に半分くらいは使っているよ」
て、ことは約5,000,000のMPを使っているわけだ。そのうえで戦闘していると考えると、毎日結構なMP消費しているのか。
「なかなか大変だね」
「お陰で毎日疲れているから、充実した日を過ごせている気がして満足しているけどね。ボクはミク達にダンジョンに一緒に出れて本当に良かったと思うよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいね」
「得るものがたくさんあるから、毎日がワクワクのドキドキなんだよね」
ノア君はそう無邪気に笑っていたので、私とアリスちゃんは顔を合わせるなり、自然に笑みが零れていた。
30分ほど進むと巨大な島が見えてきた。島といっても国なので、海面に突如現れた地平線だ。
「念の為にもうこれを付けておこうか」
「そうですね」
「何それ?」
ノア君があそう言ってきたので「はい」と渡すと。
「仮面か」
ノア君が取ったのは白に緑の模様が入った和風の狐の仮面。そして私が着けるのは、白に黄色の模様が入った仮面。アリスちゃんは白に水色の模様が入った仮面と、なりゆき君が思っている私達のイメージカラーを模様として入れて差別化を行ったらしい。
私に関しては多分、光属性と聖属性を使うからこの色にしたんだと思う。前、なりゆき君が私のイメージカラーは白って言っていたしね。
そして私はバックパックからローブを取り出してノア君にもそれを着るように促す。
本当は顔を変えることができればいいんだけどな。とか考えていると、気付いたらもうアードルハイム帝国の陸地まで来ていた。辺りは木と陸しかないことから、この辺りは魔物しかいないんだろう。
最後にノア君が下船すると
大きく深呼吸して気合いを注入。
「よし。行こう!」
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