第83話 転生者同士の対談Ⅱ

「な――なんや」


「変わったスキルを持っているな。まあ俺達が言えたことじゃないが個性派揃いだな。ネオンさんのスキルは実に興味深い。音のスキルで回復ヒールもできるし、強化バフもできるし、広範囲の攻撃もできる優秀なサポーターだね」


「何や。ギルマスが言うてたんはホンマやったんか。俺達全員 、究極の阻害者アルティメット・ジャマーあるのに分かるんか?」


「勿論。ノーディルスさんは遠距離攻撃と、アンデッドを召喚するスキルを持っているし、アズサさんは防衛に特化したタンクのような役割で、レンさんは近距離と中距離の超オフェンス型だな。なかなかいい感じに揃っているじゃないか」


「マジか。ホンマに凄いな。ネオン、あの2人の強さどれくらいなんや?」


「ナリユキ様が5,200で、ミク様が4,900です。2人共私が尊敬しているアリシア様とは別格の強さです」


「5,200って聞いたことない数値やねんけど。で? ナリユキさん。俺達はどうですか?」


 するとナリユキさんはべりーちゃんの方を見て――。


「ミクちゃんはどう思う?」


「私は問題無いと思いますよ。正直ここまでバランスが良くて強い冒険者が来るとは思って無かったので」


「だな。俺も同意見だ。じゃあまずは依頼内容はしっかり確認してくれたか?」


「勿論です。でも、調査報告は文章で送ればいいんですか?」


「いや、コレを持っておいてくれ」


 そう言ってナリユキさんは4つのボールペンを出してきた。この世界でボールペンって結構珍しいな――。


「レン。これカメラとちゃうん!?」


「ホンマやな」


 見たら驚き桃の木山椒の木。俺達の世界であったがこっちの世界無いモノ。ボールペン型の隠しカメラや。カメラみたいな機能はスキルでしかあれへんはずや。


「こんなんどこで手に入れたんですか?」


「俺のユニークスキルは手から何でも出せるスキルなんだ。て言っても、水や肉、塩とか諸々は出すことができない」


「そんなチート能力。死んだときに何を願ったら入手できるねん」


「え? 死んだとき? 確か手から何でも出せる能力があったら、生産性が上がって世の中の人をもっと豊かにできるのになって――」


「賢者か! 賢者か何かになりたかったか! はっ! まさか意識高い系か!」


「いや、実際俺はレンさんみたいな陽キャじゃないし、モテなかったからな」


「モテへん? 鍛えてるんか知らんけど、体つきもええしシュッとしてるから男前やから絶対そんな事ないやろ」


「死ぬ半年くらいから変わり始めたからだよ。自分を変えてもいきなり周囲の環境が変わるわけじゃないからな」


「ナリユキさん、難波のクラブとか行ったら、ついていく女の子めちゃいそうやわ。うちもイケメンや思てたもん」


「そらどうも」


 まあアズサはついていきそうやわな。「え? どこ連れてってくれるんですか? あ、めちゃ行きたいです!」とか言うてついていく。ハイトーンのベージュの髪色したショートカットって大体そんなもんやろ――。いや、至極当然の反応か。例えば、べりーちゃんから声かけられて一緒に飲みに行かん男なんて全国どこ探してもおらんやろ。


「で、このペンはどうやって使うんですか?」


 ネオンちゃんの質問に話が脱線したことを自覚した。


「レンさんとアズサさんなら使い方分かるだろ?」


「分かる。これで記録しておけばいいんか? 電池は持つんか?」


 そう言うと、ナリユキさんは同じカメラ付きボールペンを手からジャラジャラとマジシャンのように出してきた。合計40本――。


「いや、流石にこんないらんやろ」


「まあ別に自由に使ってくれれば全然いいさ。これだけあれば十分だろ」


「多分十分すぎるわ。でもまあ全部使ってええんでしょ?」


「勿論。それで1ヶ月で帰ってきてくれてもいいし、3ヶ月やってくれてもいい。但し、どれだけ長くいても報酬はそのカメラに収まった情報の重要性による。例えばアードルハイム皇帝の弱点とかな」


「いや、流石にそれは無理やろ。それにしても何で情報を欲しがるんですか?」


「それは言えない。ただ、アードルハイム帝国の良く話を散々聞くものだから、少し自分の目で確かめたくてね。俺が直接行ってもいいが立場上難しい。うちの部下を派遣することもできなくなったし、ルイゼンバーンさんに頼んで依頼をかけたんだ」


「ルイゼンバーンさんってギルマスのことですか?」


「そうだ」


「成程ね。とりあえずは、今のアードルハイム帝国がどないなってるんかとか、街並みはどんな感じなんやとかを、さりげなく聞いたり、酒場行って酒飲むふりしながら、市民の声に耳を傾けとったらええんやな?」


「そうだ。でも関西弁で喋るのは極力控えろよ? 今はアードルハイム帝国に観光する奴なんて少ないって聞くからな。その方言はあまりにも目立つ」


「分かりました」


「大丈夫ですよ」


 ――。俺とアズサでそう返事したけど、なんやめちゃ違和感あるわ。俺あんまり尊敬語使わへんから、イントネーションとか諸々可笑しくなって、気持ち悪い喋り方なるねんな。


「最悪、私とノーディルスさんだけが喋ります」


「それは無理!」


 俺と、アズサが被って言うと、ナリユキさんは何かめちゃ爽やかスマイルしてて、べりーちゃんはクスっと笑ってた。


「御二人共、息ピッタリで仲がいいですね。付き合ってるんですか?」


「付き合ってへんわ!」


 と、また被ったもんやからもうしばらく喋らんとこ。


「頼んだぞ。これが前払いの金貨だ」


 そう言って渡された巾着袋の中には金貨がパーティー分の4枚入っていた。そして渡された40本のボールペンを、各々つけやすところに引っ掛けて、残りはナリユキさんからもらった巾着袋に詰めて持つことにした。


「あと俺から忠告しておくと無理はするなよ。依頼しているけど自分の命を最優先にしてくれ。無事に帰ってきたときの為にいいお酒用意しておくからさ」


「ありがとうございます! さあ! 皆気合入れていくで!」


 俺がそう立ち上がると――。


「おー!」


 俺の掛け声で、アズサ、ノーディルス、ネオンちゃんは椅子から立ち上がって、拳を突き上げて気合を注入した。


 優しいナリユキさんと、天使のべりーちゃんからの依頼や! 気合いが入らん訳ないやろうが。同じ転生者として誇りを持って成し遂げる!

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