第61話 宴会Ⅲ
宴会が開始するとワイバーンのビガーポークの丸焼きショーが始まった。
ほんの数十秒のショーではあったが、大いに盛り上がった。焼かれた肉は獣人と
俺はミクちゃんの隣の席に着き、待っていたノア、アリシア、ベルゾーグ、アリスさん、タツノオトシゴさんと一緒に食べることになる。ランベリオン、ベリト、ミーシャも座るのだが、懸命に働いている。まあ食べていたら来るだろ。
「始めましてナリユキ・タテワキ殿。そして、お見苦しいところ見せてしまい申し訳ございません。ワシはタツオと申します」
「タツオさんですか。宜しくお願いします。気になっていたんですけど、水に浸かっていなくても平気なのですか?」
「ええ。ただこんなナリなので歩くときはぴょんぴょん跳ねるしか無くて、できれば水のなかにいたいのが本音です」
「まあ、ベルゾーグは連行してきた感じですもんね」
「気絶していただけなので――あのままだとワシは
「すみません。色々巻き込んでしまって」
「いえいえ構いませんよ。建国祝いというおめでたい場に呼んで下って光栄です」
タツオさんはそう言いながら目の前のトマトとアボカドのサラダに手を付けた。一方、ツインテールで可愛らしい顔のアリスさんは、ワインの匂いを嗅いで顔が少しほんのり紅くなっていた。
「アリスちゃん、もしかしてお酒苦手だった?」
「苦手というかほかほかしますね。お酒というのは実は生まれて初めて見たので――でも、不思議とお食事が進みます」
そう言って魚やら肉やらをがつがつ食べている。
「ナリユキ殿。法律とかはどうする? 国にしてしまったのであれば必要だろう」
「そうだな。法律もそうだし皆も何か意見があれば言ってほしいから、匿名で書ける目安箱を設置しようと思っている」
「目安箱? なんだそれは?」
俺は手から白い無機質な箱を取り出す。
「なあに。こういう箱の中に、意見を書いて箱に入れるだけさ」
「成程。それはなかなか良い案だな」
「まあ俺達の世界で先人が考えたアイデアだから何とも言えないさ。これをすることよって当然できることとできないことがあるから、投函したのに検討してくれないから不安が募るってこともあるんだけどな」
「やることが多くなるな」
「俺はしばらく引き込まりだよ。ただ、皆には何かあったときの為に訓練してもらうベルゾーグにそれをしてほしい」
「成程。してその内容は?」
「まあMPの使い方とかだな。因みに剣術はどうなんだ?」
「剣はランベリオンと同じくらいの実力じゃないか? 絶対にミク殿のほうが上だ。胴体ばっさり斬られて、剣術は勝てないと確信した。というか、総合的に見たらミク殿が一番オールラウンダーではないか?」
「確かに。強力な遠距離攻撃もできるし、剣術も長けているし、回復もできるし、
俺がそう言うとミクちゃんはワインを飲んでいる最中なので無言のサムズアップをした。
「ボクは近距離だしね。というか一番の利点は死なないことだけど」
ノアのその発言に、俺とミクちゃん以外は驚いて興味津々だった。
「そう言えばノア様のスキルを視ることができませんね」
「ボクは鑑定士を持っていないから皆のスキル分からないんだけどね。でもナリユキ以外には勝てる自信あるよ」
「私も勝てないですからね」
と、照れ笑いするミクちゃんにベルゾーグは鯉のように口をパクパクさせていた。アリシアさんに関しては少年のように目を輝かせている。
「まあスキルが多いからって強いとは限らんからな」
「それ、パッシブスキルがやたら多いナリユキさんが言う事じゃないですよ。しかもナリユキさんの場合身体がバラバラになっても元通りになりますし」
「確かに」
「とりあえず皆鑑定士のスキルは取らせておいたほうがいいな。持っていないとどうしてもロスが生まれる」
「どうだ? 我が焼いたビガーポークは?」
そう入ってきたのはランベリオンだった。白ワインを片手に自慢気に笑っている。まあ自身満々でもおかしくはない。肉を切った瞬間に芳醇な脂が出てくる。そして程よくしつこくない脂だ。肉は非常にジューシーな味をしつつも、皮はカリッと焼けている。まとめると、唐揚げ嫌いな人いる? ってよく例えられるけど、こっちの世界ではビガーポークがまさにそれだ。誰でも食べることができる美味しいお肉NO1だろう。
「まあ、前と一緒で美味しいぞ」
そう言うと、ランベリオンは満足気にえっへんと威張っている。勿論他のみんなからの評判はいいので、気軽に談笑しながら思う存分楽しんだ。
ミクちゃんも結構お酒が進んでおり、ワインを飲むペースがめちゃくちゃ早かったので、以前のように酔わないかがとても心配だったりする。
そして、夜の20時を迎えると、片づけを初めて撤収作業を開始し、建国祝いも特に何事も無く終えることができた。
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