第12話 Past - Break down start...
「違います先生!俺はコイツらが!」
「おいおい見苦しいぞ……」
「先生、そいつやばいっすよ」
「周りの人の迷惑考えてよ……」
リクの意見など
教師の矛先はリクに向けられた。
「後で話は聞こう。今は取り敢えず怪我を保健室で手当てしてもらえ」
「先生!」
「いいから早くしろ、周りの迷惑だろうが」
その言葉にリクはハッとして辺りを見渡した。
周りには喧嘩の影響で散乱した机が無造作に散らばっておりその周りを綺麗に避けるように他の同級生達が固まり、こちらを冷たい視線だ見つめていた。
「何だよ……全員」
リクの声色は微かな震えを含み、その声色からは悲しみが感じ取れる様な気がした。
リクと喧嘩した同級生は周りの生徒達から大丈夫?などと声をかけられている始末だ。
────あんまりだろ……
リクはその場を走り出して学校ごと抜け出した。
そしてその喧嘩から二日後。リクは学校に来なくなった。
時は喧嘩から一日後────
「いいか、お前がやった事は最悪な事だと理解しなさい」
目の前の教師が仏頂面をしながらリクに説教をしていた。
最もそれがリクの心の中に響いているかと言われればノーな訳なのだが。
「俺は!何もしてないっすよ……寧ろやられてた側ですよ!」
「周りの大多数の証言がお前がおかしいと言っているのだ。お前の味方をする奴が一人もいなければ信用に足らない」
「それはあいつらが協力して俺を
リクが勢いよく身体を教師に近付けながら言葉を放っていた瞬間、教師がそれを遮るように言葉を重ねた。
「いいか、今この状況において俺はお前を信用する事はできない。しかしそれはあいつらの意見もだ。俺は実際に見ていないからな」
淡々と放たれる言葉に自身と殴り合った奴の信用について言及されていた事もあってかリクは一度言葉を飲み込み、耳を傾ける事にした。
「でもな、この世界はうまく出来ていないんだ。俺がお前を信用しようとしても周りがそれを許さないだろう。数の暴力って奴だ。誰がどう聞いてもお前が悪に染められてしまうんだ。あいつらの正義がお前の正義を塗りつぶしてしまうんだ。俺の言いたい事はわかるか?」
リクは理不尽な事だと思いながらもその言葉に自然に頷いていた。確かに今この状況で自分が優位に立つことなどできないとリクは察していたからである。
「だから……俺も不甲斐ないと思う。けどな、今回はお前が謝る以外にこの事を収める方法はないと考え方がいい。クラスの奴らはお前を腫れ物の様に扱うのは目に見えている。悔しいが俺一人ではそれを注意したところで治らないと思うし諫める事も出来ない。お前に任せる以外どうしようも出来ないんだ」
冷酷に、しかし確かに教師の悔しさを感じる言葉を前にしてリクはまるで何にも期待せず、ただ呆れたような、絶望したかの様な表情を浮かべながら教師に今の自身の言葉を吐いた。
「少し、考えます」
そうしてリクはそのまま話をしていた教室を後にし家に帰ったのだった。
────俺が謝罪を述べる?いい加減にしろ。
────こうなりゃ、意地の張り合いもいい所だ。
リクは拳を再び握りなおし、家の中で窓の外を睨みつけながらある決意を固めた。
────学校辞めてやる前にもう一回ぶん殴ってやる。
その行動が吉と出るか凶と出るかはまだわからないままである。
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