第19話 わりぃ
何を思ったのか、俺に対し突然牙を剥いてくる
今までならば、この手の輩なんぞスパッと斬り殺しちまうところだが……。
「………………」
よしっ! ここはひとつ、俺も兄ちゃんを見習ってあくまでも毅然とした大人の対応ってヤツでもって、相手の間違いを正していくべく話し合いってヤツをしていくとしますかねぇ~♪
そう決めた俺の第一声がこうだ――。
「あ? ざけんな、ボケッ! テメーらの方こそ、人が飯食ってる横であーでもねーこーでもねーと喚き散らしやがって……。うるせーったらありゃしねーんだよ、んなもん、外でやれってんだっ、バーカッ‼」
「な、何だとっ⁉ こ、ここは僕の屋敷だぞ? ど、どこで話そうが僕の勝手ではないか、そ、それこそ、き、貴様なんぞに指図される謂れはないっ‼ も、文句があるのならさっさと出ていけばいいではないかっ‼」
どうだと言わんばかりに喚きたてる
「ケッ、俺だって何も好き好んでこんな場所にいるんじゃねーやいっ! テメーらの方が是が非でもお礼がしたいだなんだいってさんざ引き留めてくるから――。本当は急を要する大事な約束事(大嘘)があったにもかかわらず、それすら反故にしてきてやったってーのによ……」
そういうと割と近くに待機していた、俺をこの屋敷へと招き入れたじーさんへ視線を向けていく。
「……うぅっ」
そんな俺の視線に耐え兼ね、気まずそうに俯くじーさんを余所に、
「それがどーよ? 実際やってきてみりゃあ、くっだらねー兄弟喧嘩を見せつけられた挙句、飯にしたって
なぁ~んてな♪ 本音をいやあ、飯はうめーし、ウェェルも飲み放題だし、寝床も最高♪ ってな具合に三拍子揃ってて、いっそこのままここに住み着いちまいて―ってくらいだが……。こういう時はあえてこれでもかってくらいくそみそに相手をこき下ろしてやるのが口喧嘩に勝つ常套手段ってヤツなのさ♪
「ぐ、ぐぬぬぬ……‼」
その証拠に、
へへ、思った通り
が、だからといってここで手心を加えるようなこともなければ、更にココからトドメとばかりに一気に畳みかけていく。
「そもそもだなぁ~、次期当主候補だか何だか知らねーが、こんな
止まることを知らない俺の口撃の前に、いつしか本人だけでなく周りにも影響を及ぼしていって――。
「――ぷっ……!」
「ぷ、くくく……!」
「くっ、バ、バカ……。わ、笑うな、ぷっ、……お、お前たちぃっ……!」
そんな俺の発言を受け、使用人たちからも笑いが漏れ出ていて。
どうやら脳内でその姿を思い描いてしまったのか、どいつもこいつも必死に笑いをこらえてやがらぁ。
きっと奴らの頭の中では、さぞかしこんがり焼けた
そんなこんなで、俺はもとより、この場にいる使用人たちをも含めた全てに対し、ついに
「き、ききき、貴様ぁああああっ‼ 黙って聞いておれば言いたい放題……! も、もう勘弁できんっ‼ い、今すぐにでもその口、黙らせてやるっ‼」
それこそ頭から湯気が出そうな勢いでもってドスドスと、大理石で出来た床を踏み鳴らしながらも
ガシッ!
「ぬ、ぬおっ!?」
文字通り、目にもとまらぬ早業ってヤツでもって逆に
スチャ――。
「おぉ~っと、死にたくなかったら、動かねー方がいいぜ?」
「ぶ――ブヒィッ!?」
おそらく、
奇しくも、あの大草原で襲われていた
と、
「「「へ――ヘドニス坊ちゃまぁっ⁉」」」
「あ、兄上っ⁉」
「に、兄さまっ⁉」
「が、ガーネットさんっ⁉ い、一体、何をっ⁉」
そんな俺の行動を受け、さっきまで笑いをこらえていた使用人たちはもちろん、豚くんの兄弟たち、ひいては兄ちゃんまでもがすっかり慌てふためいた様子でもって俺に声をかけてくる中、
「ぶ――ブヒィイッ!? よ、よせ、や、止めろっ‼ き、貴様、し、正気かっ⁉ ぼ、ぼぼぼ、僕にこんな真似をして、た、タダで済むと思っているのかっ⁉ あ、後で、た、大変なことになるぞっ‼」
この状況でまだそんな脅しを噛ましてくる
「おいおい、そんな怖いこと言わないでくれよぉ~? 俺、こう見えても小心者なんだからよぉ~。そんなこと言われちまったら恐ろしさのあまり、うっかり手元が狂っちまって首が胴体からオサラバしちまう、なんてことにもなりかねんぜ?」
「ぶ、ブヒィイイッ!?」
――ぷっ、くくく、ギャハハハハ♪ あー、おもしれ―♪ ブヒィッ!? だってよぉ♪ ホント、
そんな風に
「あ、あの、が、ガーネットさんっ? と、とりあえず、お、落ち着いて……」
なるたけ俺を刺激しないようにと兄ちゃんが俺を宥めようとしてくるも、
「……ケッ、こんくらいで大袈裟に騒いでんじゃねーよっ! 何も殺しゃあしねーよ……。ただ、そのお
そこまで言いかけた時だった。
ムッワァ~~~~~ッ……。
「あん? な、何だ? な、何の臭いだ、こりゃあ……?」
不意に漂ってきた不快な臭いに鼻をひくつかせること数秒――。
「――‼」
ついにその出所か知れることに――。
「プハァ~~ッ、プハァ~~~ッ……」
恐怖によって若干過呼吸気味になっている
「――うぶぅっ!? く、ぐっぜぇ~~~っ、な、何だ、ごりゃあっ……⁉ うぐぐっ、ぐ、ぐむぅっ、……だ、駄目だ、こ、こりゃあ我慢ならんっ!」
さっきまでは
こうしてすぐ側で対峙するや、その鼻が曲がるほどの悪臭の前に流石の俺も耐え兼ね、堪らず野郎の身体を引き離しにかかるも、その際、
ザシュッ――。
「あ……」
「ブヘ!?」
二人ともに何とも間の抜けた声を漏らす一方で、気付いた時にはもう手遅れってヤツで……。
ゴトッ……。
丁度空になっていた皿の上に
「え~~~っと、わりぃわりぃ……。余りにも耐えがたい臭さに、つい……」
素直にもそう謝るついでに、残された胴体部分から噴水さながら溢れ出る返り血で汚されては敵わんとばかりに、とりあえず胴体部分に蹴りをぶち込んだところ、
ドスンという音を響かせながら豚くんの胴体が床へと倒れ込んでいき……。
そして、ドクドクと、溢れ出る血で白い大理石の床が真っ赤に染め上がっていく最中、
「「「き――キャァアアアアアアアアアアアアアアッ!?」」」
そんな使用人たちの絶叫にも似た悲鳴を皮切りに、本来であるならば
いや、ホント……。
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