赤雷の騎士

ウーロン茶

《プロローグ》






 ―「幸せに暮らしたい」誰もがそう思うだろう。それなりに金を稼ぎ、愛する人と暮らす。手の届く範囲に、自分の感じられる距離に愛する人たちがいる。それが俺の幸せだった。

 愛する人と我が子に看取られて静かに生を終えたい。そう思っていた。

 だがそれももう叶わない。


失った。


俺は戦い続ける。それが正しいか間違っているかなんてどうでもいい―

 燃え盛る業火の中打ちひしがれたその人影はゆっくりと立ち上がり、赤黒い何かを纏った剣をとった。






 目が覚めたのはいつだったか。今まで何をしていたのか思い出せない。まだ焦点が定まらず、頭がボーっとしている。何かが思い出せない。何か忘れてはいけないことを忘れている気がする。

 ああ、そうだ。まだ途中だった。


ここから始まるのは光が待つ英雄譚じゃない。

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