第22話
翌朝。
アイリは元気になった。
「お兄ちゃん、おはよ!」
「今日、学校、一緒に行こ...!」
「え」
「と、思ったけど、多分、新しい彼女と一緒に行くよね?」
「あ、いや、今日は、別に約束してないからな...」
矯正、もしかして失敗したのか!?
と、危惧したが、杞憂だった。
「じゃあ、今日を最後に一緒に登校しよ!
心配しなくていいよ!本当は腕を組んで歩きたいけど、頑張って我慢するから...!」
大丈夫だった。
マヒロによるブラコンの矯正は成功を収めたと言えるな。
俺とアイリは一緒に登校した。
兄妹の、程よい距離感を保ちつつ。
さて。
俺はアイリと校舎内で別れて、
自分の教室に入ろうとした時だ。
マヒロの声が聞こえてきた。
「おっはよ!シンジ!」
ドキドキしながら、振り返ると。
昨日見た絶世の美少女じゃなくて、イケメンに近いいつものマヒロがいた。
「なんだよ。やっぱり元に戻ってんじゃねぇか...」
「俺は、あの、昨日のマヒロが滅茶苦茶俺のタイプで大好きなのに...」
自然とそんな言葉が口から飛び出したので、
俺は慌てた。
なんか、告白みたいになってたから。
マヒロは顔を赤くしない。
何しろクールなやつだから。
でも、とかくニヤニヤしてた。
「え、待って待って!私のこと好きになっちゃったとか!!」
「でかい声を出すな...!」
「ちょっとお前、こっち来い...」
俺はマヒロの腕を引っ張り、
廊下の隅に誘導した。
周りに誰もいない場所。
ここなら、まぁ、大事な話を心置きなくできるってもんだろ。
「それよかさ、ありがとな。
アイリのやつ、諦めてくれたよ...」
「ほんと!?それはよかったね!
私、頑張った甲斐があったわね!」
「お、おう!本当にありがとな!」
「で、さっきのあの、昨日のおまえ、滅茶苦茶タイプなんだけど、の話の続きなんだけどな...」
「うんうん?」
「俺の本当の恋人になってほしいんだけど...」
「偽の恋人じゃなくて、その...」
「いいよ」
即答だった。
「え、いいの?」
「うん。私、小さい頃からシンジのことは
大好きだったしね」
「シンジのダメなとことか、いいところとか、
他の女より、知ってるつもり」
マヒロは顔色ひとつ変えない。
それなのに、俺ときたら、酷く狼狽していた。
「そ、そうなのか..」
「大体ね、偽の恋人役に任命されたとき
にシンジのこと、好きじゃなきゃ、エッチもするでしょ?
なんて好きじゃなきゃ言えなくない??」
「う.....ん....」
マヒロの裸を想像してしまい。
俺は更に顔を赤くすることに
なるのだが。
マヒロはそんな俺を揶揄った。
「あ、顔、滅茶苦茶赤くなった!
なんか、エロいこと考えたでしょ、今!」
「んんもー!」
なんて言いながら、はしゃいでいた。
「せ、正解...」
俺はマヒロから視線をそらせ、
逃げるように教室に入った。
そんな俺にマヒロが言った。
「取り敢えず、今日、一緒に帰ろ!」
俺は恥ずかしいので、
うん!とだけ、
大きな声で言っといた。
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