5月17日(水)晴れ 真治と瑞姫の日常その2
先行して夏がやって来たお茶漬けの日。
この気温ならそのお茶漬けは絶対に冷製の方がいいと思うほど暑かったので、ニュース番組では熱中症に注意するようにと何度も言われていた。
そんな真夏日な今日だけど、僕の周りで暑さを感じていなさそうな人が1人いた。
「どしたの、ぽんちゃん? なんか元気ないけど……まさか熱中症!?」
「いや、そうではなく……」
松永の言葉を否定した本田くんだけど、明らかに元気が無さそうに見えた。
僕らは敢えて追及せずに本田くんの言葉を待つと、数分悩んだ末に本田くんは口を開いた。
「実は……栗原と喧嘩をしてしまったんだ」
「あー……なるほどねぇ」
「原因は大したことじゃなかったんだが、どうにも謝るタイミングを逃してしまって、テストが始まるから余計に連絡しづらくなってしまって……」
「それはタイミング悪かったなぁ」
「……良ちゃんと松永はこういう時はどうしてるんだ?」
弱った様子で本田くんはそう聞いてくる。
松永は目配せして先に言うようにしたので、僕から喋り出した。
「えっと……非常に申し訳ないんだけど、僕は喧嘩らしい喧嘩したことなくて」
「マジで!?」
「いや、なんで松永が驚くんだよ」
「つい反応しちゃった。でも、りょーちゃんと岸本さんならあり得るか。お互いに穏やかな感じだろうし」
「どっちかというとお互いにネガティブになる感じかな。謝るのも早いし」
「そう言われるとイメージできるな。ちなみに俺も茉奈ちゃんと喧嘩したことないけど」
「嘘だぁ!?」
「なんでりょーちゃんが驚くんよ」
「ごめん。でも、本当に?」
「考えてみてよ。俺が茉奈ちゃんに逆らえるわけないじゃん」
「そう言われると……そうかも」
言う事をきかない時はあるような気がするけど、松永の方が伊月さんに怒るイメージは全くなかった。
しかし、そうなると……
「そうか……2人は上手くやってるんだな」
「あっ……ま、まぁ、ぽんちゃん。こういうのは時間が解決するパターンもあるし」
「そのまま終わるパターンもあるが」
「ね、ネガティブに考えるのは良くないよ」
「そう言われても……」
「こ、こうなったら……クラさん! 何か天の一言を!」
松永はその場に居合わせた大倉くんに無茶ぶりすると……意外にも大倉くんは冷静な表情のまま口を開く。
「そんなの……自分から謝ればいいんじゃないかな」
「えっ……」
「い、いや……逆に何で謝ろうかどうか悩んでるのかわかんないし、別に今からでも会えるんだから駆け付ければいいし、そもそもボクにはまるで関係ない話題だし――」
「く、倉さん! オレ、間違ってたよ!」
「だいたい3人は……あれ?」
「行ってくる!」
途中から呪詛に変わっていた大倉くんの言葉だけど、本田くんには前半の言葉が響いたらしく、そのままの勢いで栗原さんの元に向かった。
「あ、あの……」
「さすがクラさんだぜ!」
「僕達にできないことをやってのけた!」
「あ、ありがとう……?」
その後、本田くんは栗原さんにひとしきり文句を言われた後、お互いに謝って和解したらしい。
杞憂していた展開にならなくて良かったけど、大倉くんは何とも言えない表情だった。
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