5月10日(水)晴れ 忘却の児島さんその3
朝はまだ微妙な温かさが欲しいコットンの日。
週の折り返しということで、休み明けの身体も通常運行に戻ってきた。
そんな今日は特別何かあったわけじゃないけど、あの人についてまた気になることが増えた。
(あれ……?)
それは3時間目終わりの休み時間に入った直後のことだ。
何の気なしに後ろを向くと、児島さんの席が目に入った。
しかし、そこには児島さんの姿がなかった。
「大山さん。児島さんって今日休みだっけ?」
「休みじゃないよ。さっきの時間はちょっと体調悪くて保健室に行ったみたい。でも、いきなりどしたの?」
「あっ、いや……朝には見かけたような気がして」
僕が唐突に聞いてしまったので、大山さんは少し驚いていた。
まぁ、あまり絡みがないはずの女子の出席をいきなり気にしだしたら驚かれても仕方ない。
「そゆことか」
「児島さんって結構体調崩しがちだったりする?」
「…………」
「い、いや、ちょっと気になっただけで……」
「うぶクン。あんまりそういうのは探らない方がいいよ。特に女子は」
「す、すみません……」
珍しく大山さんから注意されて、僕は少し反省する。
この前の一件で児島さんの謎が深まったからつい聞いてしまったけど、あくまでこれは僕が勝手に感じていることだ。
少し休んだくらいで怪しむのは良くなかった。
「わかればよろしい。でも、うぶクンってそんなにこじぃのことを知らなかったっけ?」
「う、うん。正直、研修旅行で一緒になった時も話したか怪しい」
「へー、そうだったんだ。瑞姫とは普通に話してたからこじぃとも絡みあると思ってた」
「それが全くないんだ……だから、その。これは失礼な質問ではないと思って聞くんだけど」
「なに?」
「大山さんから見て児島さんってどんな感じの人?」
「…………」
「も、もちろん、無理に答えなくてもいいよ」
少し遠慮するようなことを言いつつも、結局また聞いてしまった。
それに対して大山さんは暫く黙ってしまったけど、怒っているわけではなく、何かを考えているようだった。
そして、考えた末に発したのは――
「わかんない……」
「ええっ?」
「いや、改めてうぶクンからそう聞かれると、こじぃのことをどう表現したらいいかわからなくて。アタシも基本は学校でしか会わないし、一緒に遊んだわけじゃないから」
「そ、そうだったんだ」
「普通に話してるはずなんだケド、なんかつかみどころがないカンジで……べ、別に仲が悪いとかじゃないんだよ?」
「わ、わかってる」
「うーん……まぁ、ミステリアスってことかな!」
強引にまとめてきた大山さんだけど、自分で言いながら少し納得していないようにも見えた。
それから4時間目の授業の時には出席していたけど、大山さんとそれ以上児島さんの会話をすることはなかった。
仲良くしていそうな大山さんがミステリアスと言うのなら、僕の抱く謎がすっきりするのはそう簡単にはいかなさそうだ。
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