5月7日(日)曇り時々雨 岸本路子と産賀良助その3

GW最終日の博士の日。

 期間としては結構長かったはずだけど、塾に行く時間が多かったせいか、それほど休んだ感じがしない。

 それでも明日からは学校が始まるので、5月病にならない程度にやっていこうと思う。


 そんな今日は天気的に出かけられないので、路ちゃんと通話繋いでみることになった。

 普段から通話しなかったわけじゃないけど、その時は要件を少し確認する程度で、長時間の通話にはならなかった。

 たぶん、通話しなくても会う機会が多かったから、必要がなかったのもあると思う。


『も、もしもし。き、聞こえていますか?』


「うん。大丈夫」


『こ、声とか周りの音とか変じゃないよね?』


「問題ないよ」


 僕は大倉くんと通話するから慣れているけど、路ちゃんは少し緊張気味だった。

 電話越しの声は肉声と少し違って聞こえるというけど、そういう部分の恥ずかしさはもうなくなっている。

 ……いや、たぶんそういう話じゃないか。

 彼女と話すのだから適度にドキドキした方が正解な気がする。


『良助くんはさっきまで何してたの?』


「動画見てた。路ちゃんは何してた?」


『わたしは……本読んでた』


「そっか。僕も読む時間作らないとなー まとまった時間ができたら読んでるけど、合間の時間だとつい動画見ちゃって……」


『……ご、ごめんなさい。嘘ついた』


「えっ?」


『……本当は何も手を付けられなかったの。通話するのにちょっと緊張しちゃって……』


「…………」


 ……なるほど。これは大倉くんの時とは違う感覚だ。

 画面を映している通話じゃないけど、照れている表情が瞼に浮かぶ。


「路ちゃんは花園さんと通話で話したりしないの?」


『ほとんどないわ。これといって理由はないのだけれど、電話は苦手に感じてしまって……』


「そうなんだ。勝手なイメージだけど、女子は電話好きだと思ってた」


『う、うん。わたしが変わっているだけだと思う……』


「いやいや! 路ちゃんが悪いわけじゃないから! それに実際話していくと楽しくなると思うよ。家でリラックスしながら話してると結構長話になっちゃうし」


『良助くんの通話相手は……』


「ほぼ大倉くん……いや、十割大倉くんだったよ」


『だいたい何時間くらい話してるの?』


「まぁ、ゲームしながらダラダラとやってるから3・4時間くらいかな」


『そうなんだ……そこまで話題が尽きずに話せるのは凄いね』


「途中からは思考停止で話してるから、実際にしっかり喋ってる時間はもっと少ないよ」


『ふーん……あっ。大倉くんと言えば……』


 そうやって話し始めてみると、路ちゃんの緊張も徐々に解けてきて、いつも通りの雑談になっていった。

 電話好き発言は失言だったけど、路ちゃんも打ち解けた後は結構喋るのが好きだったから、今まで長い通話していなかったのは意外だった。

 これを機に路ちゃんとの通話も増やしてもいいかもしれない。

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