4月19日(水)雨 野島実香との日常・再
午前中は雷が鳴るほど荒れた飼育の日。
「おお、産賀くんじゃない」
そんな今日は昼休みに野島さんと絡む時間があった。
「ど、どうも……」
しかし、野島さんと話すのが久しぶり過ぎて、知り合いケージは初期値に戻っていた。
昨年度も1年間同じクラスだったはずだけど、後半で席が離れた後は話す機会が無くなってしまったのだ。
まぁ、夏休み終わりから絡みづらくなったのは別の理由だけど……
「あらら? 産賀くん、もしかして……」
「な、なに?」
「私のニューヘアスタイルに惚れ惚れしちゃった?」
そう言いながら野島さんは髪をサラッとするような仕草を見せる。
最後に見た髪型が思い出せなかったから、僕は愛想笑いを返すしかなかった。
「いや、それはないか。今は岸元さんとコレだもんね」
「小指を立てないで」
「でも、私は少し残念な気持ちもあるよ。産賀くんは清水先輩といい感じだと思っていたから……」
「ま、まぁ、友達としては今も仲良くさせて貰ってるよ」
「へー……今も?」
「うん。春休みやこの前の休みも会ったから」
僕が何の気なしにそう言うと、野島さんはひどく驚いた表情になる。
「ど、どうしたの?」
「いやいや、茶道部後輩の私がお別れ会でしか会ってないのに、産賀くんが個人的に会っているのは予想外だったから。地元を離れないとは聞いてたけど。まさか産賀くんのハーレム路線がまだ残ってたとは」
「何の話!?」
「なんか私が想像してた以上に清水先輩のお気に入りだったんだなー」
「それはどうかわからないけど……ちょうど話題に出て良かった。清水先輩、機会があったら茶道部にも訪問してみたいって言ってたよ」
「そうなの?」
「うん。茶道部の新入部員が来てるか心配もしてた」
「ほえー 清水先輩もOGの風格が出てきたってことかぁ。こっちとしては大歓迎だから、ちょっと声かけてみる」
「そうして貰えると助かるよ。ちなみに茶道部の新入部員はどんな感じ?」
「今のところ、2人が仮入部してるよ。文芸部は?」
「……絶賛募集中です」
自分で聞いておきながらちょっと凹んでしまった。
うちも仮入部で様子見してくれていいから聞いて欲しいところだけど……
「あれ? うちの結香は昨日説明会行ったって聞いたけど?」
「うちの……?」
「私の妹の結香」
「妹さんいたんだ」
「話したことなかったっけ? 産賀くんの妹の話は時々聞かされてたから、言ったつもりになってたのかな」
「そうかも……って、入部してくれるの!?」
野島さんの妹の存在に驚いて肝心な部分にようやく気付く。
「たぶんそうなんじゃない。本読むの好きみたいだし……私と同じ茶道部は絶対嫌って言ってたし」
「まぁ、兄弟姉妹だとそうなるよね」
「というか、産賀妹も入学したんだっけ? その辺の話も聞かせてよ」
もう少し野島さんの妹の詳細を聞きたかったけど、そこからは僕の方が話す番になってしまった。
でも、久しぶりで緊張していたところを野島さんが積極的に喋ってくれたおかげで、だいぶ元の感じを思い出せた。
友人というには少し遠いかもしれないけど、顔見知りとして今年度も程よく話せていけたらと思う。
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