3月14日(火)晴れ 花園華凛との日常その23
ホワイトデーの火曜日。
去年はなぜか気合を入れてげんこつドーナツを作っていたけど、今年は日曜の体調不良のせいで手作りする時間も元気もなかった。
それに加えて、今日の文芸部ではある意味ホワイトデー以上に重要なイベントが行われる。
「華凛センパイの歓迎会兼お誕生日会兼卒業式の冊子の完成記念前夜祭を始めまーす」
日葵さんは色々言っていたけど、実際は花園さんの誕生日を祝う会だった。
テストや卒業式が挟まって二週間後のお祝いとかなり遅れてしまったけど、当日は1年生からも連絡は貰っていたようで、だからこそ花園さんはかなり驚いていた。
「華凛の誕生日は2月28日ですが……」
「す、すみません。どうしても当日に開けないのに日葵が絶対にやりたいって言うから……」
「茉奈は何でそう悪いように言うかなー お誕生日以外も祝ってるのに」
「悪くは言ってないけど、花園先輩が困惑してるから」
「唖然とした顔撮っていいですか」
「こら、青蘭も変な絡み方しないで」
「いえ……わかりました。皆さんが祝ってくれる気持ちは十分伝わってきます」
伊月さんが必死にフォローする中で、花園さんもようやく事態を飲み込めたようだった。
「路ちゃん、助け舟出さなくて良かったの?」
「うん。今回は1年生が主体でやりたいって話だったから。それよりも……やっと開催できたから、もう華凛ちゃんに変な態度見せなくて済むのが良かった」
「そんなに疑われてたの?」
「疑われるというよりは、わたしが自爆してる感じかな。別にやましいことじゃないのにね」
「でも、おかげでサプライズは成功したんだし」
「うん。もちろん、それも良かったわ」
「主役を差し置いてイチャイチャですか」
花園さんは少し不服そうな顔で僕と路ちゃんの間に生えてくる。
「いやいや。そんなつもりは」
「わかっています。今日はホワイトデーですから積もる話もあるのでしょう。華凛はこちらで祝って貰うので」
「ま、待って。当日には用意できてなかったプレゼントがあるから」
「ほう。良助もマメですね。さぞお財布事情は困っている時期でしょうに」
「まぁ、その通りなんだけど、お祝いしたい気持ちはあるから」
「では、ありがたく頂きます」
そう言って僕のプレゼントを受け取ると、花園さんは満足そうにして1年生のところへ戻って行った。
「何をプレゼントしたの?」
「置物としても使える動物のペン立てだよ。何となくアザラシにしてみた」
僕はそう言いながら路ちゃんに商品ページを見せる。
「へー……うん。この中の動物だとアザラシな気がする。犬や猫でも喜ぶとは思うのだけれど、何となく華凛ちゃんに合ってる」
「路ちゃんがそう言うなら良かった」
「産賀センパイに路センパイ~ こっち来て写真とりましょー」
その後は持ち寄ったお菓子とホワイトデーのお返しが机の上に並んでパーティーらしく楽しい時間を過ごした。
今年度の文芸部としては主要なイベントは終わったので、この日くらいは遊びに消費してもいいタイミングだった。
それはそれとして……マジで暫く何も買えない。まだお見送り会やもう一回分明莉へのおごりが残っているというのに。
去年のドーナツ手作りはなんだかんだコスパが良かったのかもなぁと思った。
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