3月5日(日)晴れ 挑戦する清水夢愛その5
全体的に温かさを感じた日曜日。
この日の昼食を終えた頃、清水先輩からメッセージが送られて来る。
最初に「テスト期間中にすまない」と始まったので、僕は食休み中でちょうどいいタイミングだったと返した。
――それなら良かった。
――ちょっと暇な時間になっててな
――なんというか
――そう
――明日が合格発表なんだ
清水先輩は少しだけ遠回りをしながらそれを伝える。
その文面や打ち方から察するに……落ち着かないのだろうか。
ちょっと乱暴な言い方をすると、明日合否を知らせればいいのだから、このタイミングの連絡はそういうことなのだろう。
僕は少し考えてから「そうなんですか」とシンプルに返した。
というか、他に付け足す言葉が思い付かなった。
――そうなんだ
――それと
――金曜は卒業式で
――いや、知ってるか
――ともかく
――何となく連絡したくなった
そこでメッセージが止まったので、清水先輩は返信待ちをしているのだろう。
これまた想像にはなってしまうけど……要するに清水先輩は高校生活が終わることに対して何となく不安や寂しさを覚えているのだと思う。
それでメッセージを送る相手が、桜庭先輩ではなく僕なのは、お互いの受験結果がわかっていないとか、卒業生同士で共有する話題ではないとか、そんなところだろう。
僕は「もう少しくらいなら話せますし、テストが終わればいつ連絡して貰っても大丈夫です」と送る。
――ありがとう
――テストが終わったら
――先に高校受験があるから
――そのタイミングでまた話そう
――その前に明日の結果は連絡する
――きっと大丈夫だと思う
――合格祝いとかは考えなくていいぞ
そう送り返してきた清水先輩は自信があるようにも見えるけど、やっぱり少しだけ心配はあるようだった。
それはそれとして、テスト後の話すというのは……直接会ってという意味だろう。
僕は……注意書きを付けつつも前向きな返答を返す。
――そうか
――確かに許可は取っておいた方がいいだろうな
――岸本さんとはあまり話せなかったから
――卒業式で少し話せるといいな
――すまん、時間を取った
――残りのテストもがんばってくれ
――やっぱり明日は連絡しない方がいいか?
――ここまで言われた気になるか
――わかった。今日と同じ昼過ぎに連絡する
それからやり取りの終わりを確認して、僕はテスト勉強を再開した。
あまり意識しないようにしていたけど、本人が寂しさを感じていると知ったら、僕も途端に寂しくなってきてしまう。
少なくとも清水先輩と気軽に話せるのは……この3月が終わるまでな気がするから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます