3月3日(金)晴れ 松永浩太との真面目な話

 学期末テスト2日目の金曜日。

 桃の節句及びひな祭りについては毎年のように関係ないと思いつつも、この日付の始まりにはつい書いてしまう。


 そんな今日もテストは何とか終えて、部活のない松永と一緒に昼前の帰宅を始めていた。


「はぁ……」


 しかし、その松永がいつになく元気がない。

 教室で合流した時点ではそうでもなかったのに、学校から離れるにつれてどんどんテンションが落ちていった。


「どうしたんだ? 今日のテストはあんまりできなかったのか?」


「いやまぁ、ぼちぼちだとは思ってるんだけど……」


「じゃあ、別のこと?」


「丸っきり別とは言えないんだけど……」


 僕の質問に歯切れの悪い反応をする松永だけど、少し考えた後、真剣な表情で喋り出す。


「俺さぁ。このまま大学行くべきなのかなぁってちょっと考えちゃって」


「進路の悩み、か」


「正直、大学で具体的にやりたいこと、全然見つかったりしていないし、それよりは早めに働いた方がいいのかもって考えるようになって」


「まぁ、うちは一応進学校だけど、就職する道もなしではないから……いや、それよりもどうして急に?」


「こう見えても色々考えてるの。このまま茉奈ちゃんと一緒に過ごすにはどうするのが一番いいかとか」


「……そっか。松永はそこまで考えてるのか」


「まぁね。いや、別にりょーちゃんにプレッシャーかけてるわけじゃないぜ?」


「わかってるよ」


 そう言いながらも僕はちょっとだけ自分の状況を考えてしまった。

 これから……路ちゃんとどうしていくかについて。


「でも、仮に働くとしたら、それこそ大学なり専門学校なり行った方がいいんじゃないか?」


「そこなんだよなぁ。うーん……すまんな、りょーちゃん。真面目な話するつもりだったけど、実際はまだ宙ぶらりんなんだよ、俺は」


「いや、全然真面目な話だよ。僕も……この段階だとまだふんわりしてる」


「でも、りょーちゃんは進学するんでしょ?」


「そのつもりだけど……なんというか、よくある話で大学に進学することを目標にしてる感じだから」


「なるほどねぇ。まぁ、1つ確実に言えるのは……りょーちゃんと同じ学校に通うのは来年度が最後だろうなぁ」


「確実は言い過ぎだろう。学科とか似通った分野だったら、同じ学校に通う可能性はある」


「それって……俺と離れたくないって言いたいヤツ?」


「そう言われても嬉しくないだろ」


「いやいや。結構嬉しいもんですよ? 少なくともりょーちゃんがいれば退屈しないから」


 そこから、話の内容は雑談寄りに変わっていったけど……あんまりこういう話をしてこなかったから、松永と情報共有できて僕は嬉しかった。

 まぁ、その結果は2人ともふんわりしているという状況だけど……まだ考える時間はある。

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