2月6日(月)晴れのち曇り 重森美里の介入その10
2月最初の月曜日。
今週は水曜から修学旅行に行くので、塾は月曜だけになる。
たぶん、帰ってきた後は疲れて何もできなさそうなので、がっつり勉強するのは今日と明日だけかもしれない。
「産賀くんは二日目の班はどういうメンツになってるの?」
その日の休み時間、修学旅行の話の流れで重森さんはそう聞いてくる。
「松永と本田くんと大倉くん……って、名前だけ言ってわかるかな」
「本田くんは瑞姫の彼氏で、松永くんはテニス部の元気な子。大倉くんは知らない」
「1年から同じクラスなんだ。大山さんも最初の研修旅行で同じ班だった」
「へー、亜里沙は絡みあるの?」
「大倉くんは……ごめん、最近はあんまりないかも」
大山さんは申し訳なさそうに言う。
言われてみると、2年生になってから大山さんが大倉くんと話している姿はほとんど見ていない。
まぁ、そもそも大倉くんから話しかけることがなかったのだけど……いや、こう言うと大倉くんが少し可哀想だ。
「うん? 亜里沙は産賀くんとは1年生で同じクラスで、その研修旅行でも同じだったんだよね?」
「そうだケド?」
「……じゃあ、なんでその大倉くんと産賀くんで格差が生じたの?」
「そ、それは……うぶクンとはその後も席が近くなることが多くて、話す回数が多かったというか……」
「ほー……とのことですよ、みーちゃん」
「えっ!? な、なんでわたしに振るの?」
「いや、亜里沙との産賀くんの関係ってなんか不思議だと思って」
重森さんはそう言い奈良が僕と大山さんを交互に見てくる。
気持ちはわからないでもないけど、その件で路ちゃんを困惑させるのはやめて欲しい。
そう言おうと思っていたら――
「里美、前から言いたかったんだケド……」
「なに?」
「……なんでミチの呼び方、みーちゃんなの? 美里も頭文字的にみーちゃんになるじゃん」
「いや、それは単に私がみーちゃんをみーちゃん呼びしたかっただけだから。私は圧倒的に美里呼びが多いし」
「なる。それじゃあ、アタシもミチのことミーちゃんに変えようかな?」
「わ、わたしは構わないけれど……」
「でも、アタシはアタシでミチって響きが好きだから……代わりに美里をミーちゃんにするか」
「いや、なんでややこしいことするの。今更亜里沙からそう呼ばれるのめっちゃ違和感あるし」
「だよねー」
大山さんが急に話題をすり替えたことで、直前の話は曖昧なままになった。
僕と大倉くんとの絡みやすさに差が出たのは、大山さんも言っていた通り、話す機会が多かったからだと思うけど……そう考えた僕自身もほんの少しだけ疑問が残った。
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