11月24日(木)曇り時々雨 花園華凛との日常その21
にわか雨が降ってまた気温が上がらなかった木曜日。
昨日は休みだったけど、塾は通常通りあったので、あまり休み明けという気分ではなかった。
「じーっ……」
そんな中、今日の僕は花園さんから視線を向けられていた。
先週は大山さんが色々気にしていたことからそうなっていたけど、花園さんも何か思うことがあるのだろうか。
もう少し隠密にやってくれたら声をかける必要もないんだけど、露骨な視線を感じるので、僕から行くしかなかった。
「花園さん、何か用事?」
「単刀直入に聞きます」
「えっ。いきなりだね」
「ミチちゃんと何かありましたか……?」
「いや、特には……」
……無かったというと嘘になる。
だけど、今回の花園さんは心配して聞いてきた感じではなく、妙にそわそわした様子だった。
「リョウスケは嘘を付いています」
「な、なんで?」
「……ミチちゃんが何かあったっぽいのに何も教えてくれないからです」
「それは僕が関係ない可能性もあるんじゃないかな?」
「いいえ。先週、2人で話をしてから変わっているから、リョウスケが原因で間違いありません」
花園さんは力強く宣言する。
ただ、僕からすればあの日以降の路ちゃんにそれほど違和感を覚えるようなことはなかった。
だから、これは花園さんがまた何かしら誘導しようと企んでいる可能性がある。
「……本当は干渉しない方がいいのはわかっているんです。ですが、華凛にとってミチちゃんがあんな状態になるのは、どうしても気になってしまうのです」
「あんな状態って?」
「何というか……ぽわっとしています」
「ぽわっと」
「いえ、冗談で言っているわけではなく。ふと会話が途切れた時に、地に足が付いていないような状態になっています」
確かにそんな路ちゃんは見たことないような気がする。
つまりは、今の路ちゃんは浮き足立っているということで、それに思い当たることがあるとすれば……
「……リョウスケ。今、心当たりがある顔をしましたね」
「し、してない。今週も部活や塾でも会ってるけど、全然そんな風じゃなかった」
「……本当ですか」
「もちろん。本当だよ」
「……わかりました。でしたら、華凛も時を待つことにしましょう。それが解決するまでは……文芸部に入部できませんし」
「おお。入部する方向で考えてくれてるんだ」
「だから、リョウスケが何とかしてください。下手をしたら卒業まで入部できない可能性もあるんですから」
そう言い残して花園さんは僕を追い払うように手を仰いだ。
花園さんが文芸部に入部したいと思っているのは、非常に喜ばしいことだ。
そして、その気持ちを邪魔していたのは……やっぱり僕と路ちゃんのそれだったのか。
ただ、僕が何とかすべきなのはその通りなんだろうけど、もう少しだけ時間をかけさせて欲しい。
僕だって……2回も同じような失敗をするのは怖いから。
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