8月14日(日)曇り もう一人のばあちゃんとの夏休み
夏休み25日目。京都から帰宅したばかりの今日は我が家に父方の祖母がやって来て墓参りへ行った。こちらのばあちゃんは結構自由なので、お盆中も一人で墓参りを済ませてしまうこともあるけど、今年は珍しく一緒だ。
「いやぁ、台風は来るわ、暑いわで今年はあんまり出かける気がしなかったんだよ。あっ、でも、少し前に行って買い溜めしたのはあるからこれは貰っといてね」
いつも通りに大量のお土産を我が家に置いて行ってから車で移動する。こちらのじいちゃんを含めてご先祖様が眠るお墓は、我が家から15分ほどで到着するお寺の隣にある。
お堂の方は滅多に行かないけど、集合墓地の方はお盆などで小さい頃から訪れているので、何となくノスタルジックな気分になる。
「迎えに来たよ。まぁ、まずは水浴びでもしなさいな」
墓参りにやって来たらまずはお寺のバケツを借りて水を汲み、墓前まで来るとそれを使って軽い掃除と花の水やりを行う。周りのお墓に備えられた花は連日の暑さから干からびていることから、今年が例年より暑いことがよくわかった。
「おばあちゃん、このお線香ちょっと香り違うね? もしかして……チョコ?」
「正解だよ、明莉。珍しいから買ってみたんだ。じいさんも甘党だったから喜ぶだろうと思って。まぁ、煙草も吸ってたこともあるから煙たかったら何でもいいかもしれないけどね」
「あかり、線香の匂いはわりと嫌いじゃないけど、これなら匂いが残ってもちょっと嬉しいかも」
そんなチョコの香りの線香を備えて手を合わせる。僕の記憶にある限りでは本当に小さい頃、じいちゃんがタバコを吸いに外へ出ていくのを見た気がする。
それ以降はチョコのように甘いモノとお酒が好きで……決して太っていたわけではないけど、今考えればあまり健康的とは言えなかったかもしれない。
「さ、終わったらとっと撤収だよ。帰りは店に寄って涼みながらご飯だ」
「わーい! おばあちゃんはどこに行きたい?」
「そうだねぇ……デザートに美味しいかき氷が食べられるとことか?」
墓参りの一連の流れは10分程度で終わって、あっという間に普段の日常に戻る。一応お盆はご先祖様を家に連れ帰るという目的があるけど、最近のばあちゃんはその辺りを簡略化していた。我が身が帰ればご先祖様も勝手について来てくれるだろうと。
小さい頃は一旦家に帰るとか、結構決まりに沿っていたような気がするけど、この辺りは時代が変化して、ばあちゃんはそういう流れを受け入れるタイプだった。
「うわぁ~ かき氷結構大きい!」
「凄いね、これが映えってやつかい。じいさんも食べたいだろうけど、これはさすがに備えられないね。溶けちゃうから」
「じゃあ、今食べさせてあげればいいんじゃない?」
「明莉は優しいね。しょうがない、じいさんも食べていいよ。一口だけ」
ただ、こういう姿を見ていると、ばあちゃんはお盆に限らず旅行する時とかもじいちゃんを一緒に連れて行ってそうだと、僕は勝手に思う。こういう法事がないと、あまり話題に出さないけど、ばあちゃんはじいちゃんをとても大切に思っているのだ。
「良助、なにをボーっとしているんだい? まさか……明莉に先を越されたのがそんなにショックだったの?」
「いや、そんなことはひと言も……」
「大丈夫、最近の子はゆっくりだって言うから。良助にもいつかいい人が見つかるさ」
相変わらず会話の押しに僕はたじろぎながらも、ばあちゃんとのお盆らしい時間が過ぎていく。
そんなわけで今年はこちらのばあちゃんのことを書きつつ、少しだけじいちゃんのことも書いてみた。
もしも僕の家に寄り道して日記を覗き見するようなことがあれば、チョコ線香と一口貰ったかき氷の感想を残していって欲しい……このページ以外を見られるのはだいぶ恥ずかしいから遠慮して貰いたいけど、お盆のお土産話になるなら恥ずかしさは我慢する。
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