5月25日(水)晴れ 野島実香との日常その2
中間テスト終わりの水曜日。テスト終えた達成感を覚える暇もなく、早くやった教科ではテスト返却が行われて、クラスの面々は自分の点数に一喜一憂していく。
そんな日の授業終わりのHR。場合によってはテスト結果よりも一喜一憂する行事が予想通り行われた。
「みんながテスト終わったら席替えしたいと言ってたので今日やろうと思います~」
担任の豊田先生はちょっと他人事のように言う。もしもクラスの面々が言っていなかったらスルーされていたのだろうか。
それから豊田先生が手作りしたあみだくじを使って席替えは進められていき、僕はクラスの半分が書き終わった辺りで自分の名前を書いた。
そして、黒板に紙が張り出されて、隠されていたあみだくじの行き先が開示される。
「おお、良さんもこっちかぁ。ぼくら前の席が後ろ寄りやったから今回は前引かされたんかもなぁ」
横山くんはそう言いながら僕の後ろに席の移動させる。結果として、僕は廊下側の1番前の席になっていた。
正直なところ、黒板が微妙に見づらい位置なのであまり良い席とは言えないかもしれない。それでも1番前の席の中ではマシな位置だとは思う。
「おお、産賀くん」
そんなことを考えていると、僕の隣に野島さんが席を移動させてくる。
「まさか1番前とは……産賀くん、今からでも遅くないからお菓子3つで私と席替わってくれない?」
「そんなに変わらないのでは?」
「いやいや、壁がある分全然違うよ! もたれられるし、色々こそこそできそうだし」
「1番前の席じゃ無理だと思うけど……というか、何こそこそするつもりなの」
「えっ? それ聞いちゃう? 産賀くんってば最近大胆になったよね……」
「何の話!? 横山くん、真に受けないでね」
「ほえー 二人が時々話してるのは見てたけど、結構仲いいんやねー」
横山くんの面白がっている顔は早速この空間での僕の立ち位置を決めてしまいそうな気がした。それを回避するには横山くんの隣次第になるけど……
「のじぃ、やっほ。窓側から遥々来ました……って、うぶクンも来てるじゃん! 今回も短いお別れだったね!」
そう言った大山さんを見た時、僕は運命めいたものを感じる……のではなく、何となくそうなるだろうなと思っていた。今回は隣の席でないけれど、1年生からずっと近い席になるのはそういう定めだったのだと思うしかない。
そして、大山さんがここに混じった場合は、間違いなく僕の立ち位置は先ほど考えていたところに収まる。
「亜里沙たちがいるなら退屈はしないだろうし、良しとしますか」
でも、野島さんも言っているように周りが話せる人ばかりだから最終的には悪くない席替えだったと僕も思えた。
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